福祉ネイリスト / 出張ネイリストの義原 瞳さんは、ネイリストとして仕事をしながら、ネイルを教える仕事にも関わっています。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で仕事がキャンセルされた際には新しいことにチャレンジ。今後は、エステティシャンとしての仕事も増やす予定です。
積極的に新しいことを学び、活躍する義原さんの仕事との出会いや考え方を紹介します。
周囲から反対され「どうして今?」と言われた、新しい夢
「今、ネイリストになって6年目ほどです。」ネイリストになる前は事務関連の仕事をしていて、理美容関係ではなかったと言う義原さん。
「ネイリストを目指したきっかけは、母が入院していたときに病室に来てくれていたネイリストさんです。母はとても喜んでいました。『ネイルサロンは、若いネイリストが施術してくれるようなイメージ』を持っていましたが、病院に来ていたネイリストさんは私がイメージしていた派手な若いネイリストさんではなく、穏やかで、患者さんの話も『ウンウン』と優しく聞きながら施術してくれるような人で。それを見て、興味がわきました。」
決めてすぐに、スクールに入学。2年ほど通ったと言います。「その当時の仕事をしながら、ネイルのスクールに通学しました。その頃は子供もまだ小さかったです。」
試験を受ける、合格するのを待つ、そしてネイリストになる、というステップではなく「勉強しながら、試験を受けながらも次々に(ネイルの施術を)実践したほうが早いなと考えて、3級に合格した後は試験にこだわらずに友人や知り合いに声をかけて、施術させてもらいました。
最初のうちからかなりの人数をこなしました。」しかしそれも、当時の仕事の合間に、お子さんもまだ小さい頃だったと言います。
「ネイルサロンでの勤務経験はありません。福祉ネイリストや自分の活動範囲やお客様の輪を広めていきたいとは思っていましたが、当時の年齢的にも、ネイルサロンに入ろうと考えませんでした。」
「年齢が気になっていました。『こんな仕事を(自分が)してもいいのかな?』という気持ちがありました。この仕事は、綺麗になるお手伝いです。私の年齢でこの仕事をしてもいいのかな、って考えている自分もいました。
実際に友達にも『どうして今更そんなことをするの?』みたいなことも言われましたよ。私が『母の姿を見て、この仕事を志したんだよ』と経緯を話しても『遅いよ』と言われたこともあります。」
「でも私は『やっとやりたいことが見つかった』と感じていました。母のことがなかったらネイリストになることは絶対にありませんでした。」
義原さんの仕事に対する、息子さんのリアクション
仕事を始めたばかりの頃、「友人にも知り合いにも迷惑をかけたことも、色んなコメントをいただいたこともある」と話してくれた義原さん。
「今はだいぶ、文句も言われないようになりましたよ(笑)出張と自宅サロンからスタートして、『人数こなしてなんとかやろう』と行動しました。
自分なりに反省や改善を繰り返して。『今日はここがダメだったな』と思うことがあった日は、その夜にたくさん練習をしたり工夫をしたりしました。」
「私は、1回やると決めたら曲げない性格です。やるって言ったからにはやらなきゃ、と。家族にも『ネイリストになります、ネイルの仕事をします』と言った手前、やっぱりできませんと言いたくありませんでした。頑張っているところを家族にも見せたかったんです。」
「仕事を始める頃の息子は小さかったので、なんの仕事をしているのかわかっていなかったようでした。仕事だと思っていなかったと思います。
最近は仕事だとわかっていて、家にお客さんが来たり友達が来たりすることにも慣れて『俺も塗りたくなってきたなぁ』なんて言い始めることもあります(笑)気遣ってくれるようなことも言ってくれます、『ママ細かい仕事だけど、頑張っているね』って。」
優しい息子さんですね。
ネイリストとして仕事を広げて、集客をするための方法
「まずは出張だけでしたが、お客様数を増やすためにサロンを開くことを考え、マンションを借りたこともあります。今は自宅の一部をサロンにしています。」
「資格を取ってネイリストになっても、黙っていてはお客様も来ません。広告にお金をかければたくさんの方に来ていただけるのかもしれませんが、個人ネイリストが広告費をたくさん使うのは現実的な手段ではないなと思いました。
そのため、自分の顔を広めるために異業種交流会に参加して、『私は福祉ネイリスト』ですよ、と仕事の宣伝をしました。こんな仕事があることが広まってほしい、もっと知ってほしいと思っていました。ほとんどの人が『なにそのお仕事?』というリアクションですが、介護の仕事をしている人はご存知です。」
「大手情報掲載サイト/アプリも、使ったことはありますが、今は課金はしていません。費用対効果がありませんでした。
夏は問い合わせが入るのですが、ネイルの需要期ではない冬はなかなかお客様の動き自体鈍いです。Zehitomoを利用するようなお客様は常にネイルケアに興味を持っているので、自分からアピールをしてお客様に採用していただき、出張するのが一番ベストだと思いました。」
新型コロナウイルス感染症の影響〜自宅サロンのお話
「自宅サロンは新型コロナウイルス感染症のことを考えて休みをいただき、2020年の6月に再オープンしました。今日(取材の日)も、午前中は赤ちゃん連れのお客さんがお車でいらっしゃっていました。
駅近のネイルサロンでも『子連れで行くのは大変』とお考えのお客様は多いです。子連れだと車が楽ですが、車で駅近まで行くと駐車料金もかかってしまいます。そうお考えの方に来ていただいています。」
「お客様には、『赤ちゃんやお子さんが泣いても何してもOKですよ』とお伝えしています。私の息子も赤ちゃんの時はかなりの泣き虫だったので、お子さんを理由に『おしゃれしたいけどできない』と諦めてほしくなくて。途中であやしていただいたり、ミルクを飲んだりしても全く問題ないです。さっき来た赤ちゃんはずっと泣いていましたよ(笑)
お母さんも私とお喋りすることによって短い時間ですがストレス発散になって、なにより綺麗になることによって気持ちも高まり、その後も『美しさを保とう』とモチベーションも上がると思います。こちらで施術の時間を長めに見積もるようにしているので、途中であやしていただいたりしても全く問題ないです。」
「最近は託児付きのネイルサロンも増えていますよね。ただしお母さんによっては、託児付きで誰かにあやしてもらっていたり、他の赤ちゃんと一緒に過ごしたりしていると、子供が泣き始めた時に、他のお客さんや他のお子さんのことも気になってしまいます。そうするとネイルの施術に集中できません。
そんなお客様たちに『一軒家の自宅サロンの方が気が楽です』と言っていただくことが多くて、リピーターになってくださる方も多いです。ありがたいですね。」
「出張ネイルも、90%ほどのご家庭が子連れです。都心にお住まいで駅近にネイルサロンがあるようなお客様でも『子供がいると家を空けづらい、でもおしゃれはしたい』とお考えになるようで、ご利用いただいています。
でも子連れではなくても気軽に呼んでいただきたいです。『ネイルサロンに行きたかったのに忙しくて行けなかった』だと悲しいじゃないですか。ほんの少し時間が空いたらその隙間にお伺いできるよう私も常に準備しておきたいと思っていますので、もっと気軽におしゃれを楽しんでほしいです。」
新型コロナウイルス感染症の影響〜高齢者介護施設のお話
「6月に入って、改めてお仕事のお問い合わせをいただくことが増えました。先日3ヶ月ぶりに高齢者施設に行きましたが、外出自粛の期間中、おばあちゃん達はみんな、暇すぎたそうです(笑)
おばあちゃん達には、『あなた、もう来なくなっちゃったのかと思ってたわよ!』『私、死ぬまでお願いしてあるから!死ぬまでおしゃれしたいから!』なんて言われて。わたしも『絶対辞めないから、来るから!』なんて返事をしました。」
「おばあちゃんたちはみんな元気ですが、若い頃と同じようにいかない方や、体の不調を訴える方やいらっしゃいます。高齢になると皆さんどこかそういうところがあります、仕方がないですよね。」
「ある方は、施設に毎月(毎回)行く度に『初めまして』と言われていたのですが、今回3ヶ月ぶりに行ったら『あなた、顔は見たことあるわ』と言われました。『初めまして』じゃなかったことも嬉しかったですが、私のことを細く覚えていてもらわなくても、『見たことあるわ』だけでもいいんです。
名前は覚えなくてもいいから、顔だけでも覚えてくれていたらいいです。私にとってはそのおばあちゃんとの感動の再会でした。」義原さんの訪問と存在は、高齢のおばあちゃんたちの刺激になっています。
「施設に行くとよく『会えなくて寂しかったわ』と言っていただくこともあるけれど、私もおばあちゃんたちに会えないと、元気にしているか心配してしまいます。
いつも『おばあちゃん大丈夫かな?』と考えますし、『元気だった?病気してなかった?風邪引いてなかった?』とおばあちゃん達に質問してホッとしている自分がいます。」
「私は医師ではありませんが、毎月行っているとおばあちゃんたちの様子がわかります。手の動きが悪いなとか、体調が良さそうだ(よくなさそうだ)とか。
それを伝えると『あんたお医者さんみたいね!私のことなんでも知ってるわね!』と言われることも(笑)」
「高齢の方にはハンドトリートメントとマニキュアをします。ある施設でいつも1人だけ参加してくれるおじいちゃんがいるのですが、おじいちゃんはハンドマッサージだけ。喋れないおじいちゃんなのですが、喋れないながらも表情で表してくれます。『私が来なくて寂しかったでしょ?』と話しかけると、ニヤニヤしてくれますよ(笑)」
医師ではないけど、お話しをして、変化に気づいてあげられられる存在でありたい、と話す義原さん。また、義原さんは、毎回施設を訪問した後には報告書を作成しています。各ご家族に今日のおじいちゃんおばあちゃんの様子をレポートして、手と全身の写真も掲載する。写真で衣服の乱れやボタンのかけ違いなどがないか確認してもらい、元気かどうかの判断材料にしてもらうのだそうです。
「報告書は施設を経由してご家族に渡してもらっています。報告書の作成は施設によっては必要がないところもありますが、提出すると喜んでいただけて嬉しいので私はいつも作っています。」
この報告書が、ご家族がネイルに興味を持ってくれるきっかけにもなっている。祖母の報告書を読んだ娘さんやお孫さんに「私も今度行ってみたい、ネイルをしてもらいたい」と言われることもあるのだそう。そこからまた人と人の縁が繋がります。
「施設に行くと、1回の訪問で朝から夕方まで滞在して、約10人前後のハンドケアなどをしてあげます。」
「1日で最高33人の施術をしたこともあります。シニアクラブという、高齢の皆さんがお茶を飲みながらおしゃべりをするような場です。予定以上に人が集まりすぎてしまいました(笑)計画では、来る人全員に『ハンドマッサージとマニキュアを塗る』という二本立ての予定でしたが、人が集まりすぎてどちらかを選んでもらうことになりました。」
「おばあちゃんたちは恥ずかしいから自分ひとりでは踏み出せないけど、誰かがやってもらっている『いいわね』と続いてくれます。」
「やはりいくつになっても、特に女性はおしゃれが大好きなんですよね。『今日は綺麗になったから、お父さん褒めてくれるかしら』と前向きな言葉がたくさん出てきます。以前、町田市の、認知症Dサミットという催しで、福祉ネイリストとして『お出かけ』をテーマに講演をさせていただきました。
その時には、一人のおばあちゃんから『手が綺麗になったら、やっぱり普段塗らないけど口紅も塗りたくなるし、お出かけしたくなるわ』というお声もいただきました。まさにネイルの力を感じた時でした。」
新型コロナウイルス感染症の影響〜講師業と、新しい学び
「今ではネイルを教える仕事もしています。新型コロナウイルス感染症の影響で4月と5月は全ての仕事がキャンセルになりましたが、以前からたくさんご要望いただいていたエステの勉強に時間を使いました。ネイルの仕事と並行して、お客様を増やしていきたいです。」
「そろそろ夏が近づいてきたので、ネイルの仕事も増える見込みです。夏の方がお客様は多いです。また、福祉ネイリストなので高齢の女性のお客様も多いですが、最近ではお子さんが『わたしもネイルをしてみたい』と言うシーンも増えましたよ。小さい子ほど親や大人のすることをよく見ています。夏休みシーズンなどはお母さんのついでに、お子さんにもネイルをしてあげたいです。」
仕事が「大好き」
「Zehitomoは、最初は使い方がよくわからないながらに使っていました。お客様を獲得して、出張ネイルで訪問した時に、お客様からZehitomoの使い方や評判を聞かれたこともあります。今はなんとなく、使うことができています。都心部のお客様も、東京都以外のお客様もいらっしゃいます。」
「私はこの仕事が大好きで、お客様と仲良くなりたいという気持ちもあります。ネイリストは、お客様と手を取り合ってする仕事。お客様から安心してもらい、『この人にだったら喋りやすい』と思ってもらいたいです。」
自然とプライベートの話を始めるお客様もいらっしゃるのだそう。「私は話の聞き役になりながら、『このネイルの時間、楽しかったな』と思ってもらいたいです。1時間〜長くて数時間かかる、この時間を楽しく過ごしてもらえるような振る舞いができるように心がけています。」
「友人や同僚には話せないけれど、ネイリストや美容師さんには話せるみたいなこと、ありませんか?すごい話をするお客様もたくさんいらっしゃいますよ。詳しくはご想像にお任せしますが、恋愛の話などです。
『会って何分後かに、こんな話を聞いてもいいの!?』と思うような話をされることもあります。対面で手を取り合うこの仕事。あっという間に距離が近くなります。大好きな彼氏の話や旦那様のお話し等、『ネイルやエステを受けて、綺麗になりたい』と考える気持ちの根っこには理由があるんです(笑)
お客様から聞く色々な話にはいつもこちらも楽しませていただいていますが、話が盛り上がるほどリピーターになってくださることが多いです。」
「自宅サロンで施術をするときも、お客様と話しながらいつもキャッキャするので、息子からよく『今日は何の話してたの?』『すごい盛り上がってたじゃん』と言われます(笑)」
「いつも私は、仕事の後に『あー、今日も楽しかった』と思います。いつもその気持ちで仕事を終えることができています。この仕事に出会えてよかったといつも思っています。」
最後に
義原さんは明るく元気で、こちらの話を面白がりながら聞いてくださり、彼女の話も面白い、すごく「素敵なネイリストさん」と思わされる女性です。そのため、ネイリストを志した時に周囲から反対されたというエピソードが非常に対照的で、不思議でした。
しかし最近では、「周囲が反対することにこそ、成功する」というようなことも言われます。人は、相手が大切な人であるほど、自分の馴染みのないことや「無謀かもしれない挑戦」に慎重な意見をくれることがあります。義原さんは周りの人から反対をされても、技術を身につけて現在ではネイリスト / 福祉ネイリストとして活躍しています。これからはエステティシャンとしても活躍なさるご予定です。
義原さん、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
ellanail 義原 瞳さま
ellanail 主宰。福祉ネイリスト。企業での出張オフィスネイルや、福祉ネイル、イベントネイル、出張スクールを提供している。福祉ネイリスト・ネイリスト検定・ジェルネイル検定・ネイルサロン衛生管理士・ミスミラージュエデュケーター・バリニーズエステホットストーンの資格を保有。
個人サロンならではの価格はわかりやすい案内を心がけ、一律料金にて案内。大手サロンのように「ストーン代追加など」の細かな料金設定も行わない。”ネイルは行く時代から来てもらう時代へ”と掲げ、「ネイルサロンに行くのが心配、人混みを避けたい」という理由から出張ネイルの問い合わせが急増中。