初心者でも気軽に始められるスポーツとして、ボルダリングの人気が高まっています。最近ではスポーツジムや専用の施設など、全国でボルダリングを楽しめる場所も増えてきました。 今回はボルダリング初心者の方に向けて、基本のルールやうまく登るためのコツ、服装、注意点などを詳しく紹介していきます。
目次
ボルダリングとは?
ボルダリングとは、岩を登っていく「ロッククライミング」の一種。一言で説明すると、天然の岩場や人口の出っ張った岩(ホールド)を駆使し、スタートからゴールまで登っていくスポーツです。
東京オリンピックの新競技としてボルダリングが追加されることも関係し、近年注目を集めるようになりました。 ボルダリングは一見、筋力がある人でないとできないと思われがち。しかし、実際のところ、ハシゴを上る程度の筋力があれば老若男女問わず楽しむことができます。
ボルダリング初心者が覚えるべきルール
ここからは、初心者の方がボルダリングを始める前に覚えておきたいルールについて紹介していきます。
グレードを知る
はじめに、グレードの存在について知っておきましょう。グレードとは、ボルダリングにおいて課題(コース)の難易度を表すもの。色や級によって分かれており、目安として4級までが初心者向けとされています。そのため、初心者にとっての最初の目標は「4級のゴール」となるでしょう。
初心者がいきなり高難易度の課題に挑戦しても、登れずに終わるだけとなりかねません。まずは初心者向けのグレードの存在を知って、そこから登っていくことがポイントになります。
同じ色のホールドや文字のテープを追っていく
自分が昇る課題は、ホールドの周りに貼ってあるテープの色や形によって変わります。基本的に、同じ色や同じ形をしたテープを辿って登らなければいけません。スタートは「S」と書かれたテープから始まり、最後は「G」と書かれたテープを両手で掴んでゴールになります。
なお、中級者以上向けの課題だと、足を置くホールドが指定されていることも。初心者向けの課題であれば、足の置き場は自由である場合がほとんどです。課題の表示方法は施設によって異なる場合もあるため、わからなければスタッフに尋ねるようにしましょう。
他の人がいる場所の近くを登らない
他の人が登っている場所の近くでは、登らないようにしましょう。課題の中には、縦方向にまっすぐ登るものだけでなく、横や斜めに移動していくものも。ホールドの位置によっては身体が接触する恐れがあったり、落下場所が一緒になったりする可能性があるため大変危険です。
同じ壁を同時に登るのは、避けた方が良いでしょう。 もし登りたい壁を既に他の人が登っている場合、その人が登り終えるまで待つのがマナーです。また、登る前に自分の課題を目で追ってみて、他の人と近づきすぎないか確認しておきましょう。
登らない時はマットの外で待機
壁を登らない時は、マットの上で待機せず、降りて離れた場所で待つようにしましょう。マットの上に座って休憩をとったり、登っている人の下にいたりするのは危険です。マットが敷かれている場所は、いつ上から人が落下してもおかしくありません。もし接触してしまうと、お互い大怪我をしてしまう可能性があります。絶対にマットから離れるようにしましょう。
壁の隅を掴むのはNGな課題もある
壁の隅のことを、ボルダリング用語で「カンテ」と呼びます。このカンテは課題によって使って良い場合と禁止の場合があるため、注意しましょう。課題におけるスタートテープの部分に「カンテ有り・OK」「カンテなし・NG」など、カンテの使用について注意事項が記載されています。そのため、課題にチャレンジする前にチェックするようにしましょう。
ボルダリングのコツとは?
ここからは、ボルダリングにおいてうまく登るためのコツを紹介します。初心者でも実践できるものばかりのため、ぜひコツを押さえてボルダリングに挑戦してみてください。
基本のムーブを身につける
ボルダリングにおいて、課題を登り切るための身体の動かし方を「ムーブ」と呼びます。まずは基本のムーブとして、「右手右足の法則」を身につけましょう。右手右足の法則とは、右上にあるホールドを掴むときはまず右足をホールドに乗せ、次に右手でホールドを掴むというもの。反対側も同様に、左上にあるホールドを掴みたいときは最初に左足をホールドに乗せて、それから左手でホールドを掴みます。
足の力で登っていく、というのが「右手右足の法則」の特徴。 このムーブでは重心がぶれにくくなり、バランスが崩れてしまうのを防ぐことができます。ハシゴを登る姿をイメージするとわかりやすいでしょう。バランスが不安定になってしまう初心者におすすめのムーブです。
脱力姿勢を身につける
脱力姿勢を身につけることで、楽に壁を登れるようになります。脱力姿勢とは、腕を伸ばして腰は落とし、膝を曲げている状態のこと。腕の筋力よりも数倍強い足の筋肉で支えることで、身体の負荷を抑え、腕を休めることができるのです。
また、身体が緊張したままでは精神的にも緊張してしまい、パフォーマンスが低下してしまうことも。この脱力姿勢では身体の緊張がほぐれるため、精神的にもリラックスすることができます。脱力姿勢で身体を休めている間に次のホールドを確認し、スムーズに登り始められるようにしましょう。
三点支持を意識する
今掴んでいるホールドから移動するときは、両手・両足の四点のうち一点のみを外す「三点支持」の状態を意識しましょう。両手・両足のうち三点を壁にかけておくことで、バランスをキープしやすくなります。
しかしながら、三点支持の状態を保てていても、手足を置くバランスが悪いと重心がぶれてしまうことも。特にバランスが崩れやすいのは、片手を離したタイミング。片手を離したときに、もう片手が両足の間に収まっている形だと、バランスは崩れにくくなります。片手と両足で、三角形を作るようイメージするとわかりやすいでしょう。
基本の掴み方を身につける
初心者にありがちなのは、ボルダリングを行なった後の筋肉痛。特に二の腕や前腕において、筋肉痛となりやすいでしょう。筋肉痛を抑えるための鍵は、ホールドの掴み方。ホールドの形に応じた掴み方を身につけることで、筋肉痛を未然に防ぐだけでなく、スムーズに壁を登れるようになります。まずは、以下で紹介する5種類のホールドの掴み方をマスターしてみましょう。
ガバ
ガバとは名前の通り、ガバッと手全体で持てるホールドのこと。掴みやすいホールドであるため、初心者向けの課題でよく見られます。
ガバを握るコツとしては、力を入れず軽く手のひら全体で握りこむこと。それによって指先にかかる負担を減らすことができます。なるべく肘を伸ばし、腕の力を抜いて持つようにしましょう。
カチ
カチは、小さいながらも手に掛けやすいホールドを指します。カチを掴むときは、「カチ持ち」というテクニックがおすすめ。カチ持ちでは人差し指から小指を密着させ、第1関節を内側に反らせるようにしてホールドを掴みます。指先を押し付けるようにして掴むのがポイント。最後に親指を人差し指に添えることで、支持力が高まります。なお、カチ持ちを多用しすぎると指にかなりの負担がかかってしまうため、注意しましょう。
スローパー
スローパーとは、指を引っ掛けることができない球体のホールドのこと。バスケットボールくらいの大きさから1m程度あるものなど、そのサイズは様々で、初心者にとって掴みにくいホールドです。このスローパーを攻略するには、「パーミング」というテクニックが最適。手のひら全体でホールドを包み込むように握り、指を曲げられない分、肩や背中などの広背筋も意識しましょう。また、身体の重心を真下にすることでバランスが安定し、登りやすくなります。
ピンチ
ピンチは比較的サイズが小さく、親指と他の4つの指で挟んで掴むようなホールドです。指の筋肉が必要となるため、初心者にとっては掴みにくいでしょう。ピンチを掴む時のポイントは、親指でねじるようにして掴むこと。右手で掴むときは時計回りに回すように、反対に左手で掴むときは半時計回りに回すようにして掴むと、強力な親指のパワーをうまく利用することができます。
ポケット
ポケットとは、指が1〜2本入るくらいの穴が開いているホールドのこと。数本の指を穴に入れ、関節を伸ばすようにして掴みます。穴に入りきらない指は、グーの形をするように握りしめるのがポイント。1本のみ指を入れるときは中指を、2本指を入れられるときは中指と人差し指、または中指と薬指という組み合わせがおすすめです。
足は直角になるように乗せる
足をホールドに乗せるときは、壁に対して直角に乗せるようにしましょう。ボルダリング初心者に多いのが、壁に対して水平に足を置いてしまうこと。しかし、その体勢だと脱力姿勢が取れなかったり、動きが制限されてしまったりと不便です。
ポイントは、つま先のみホールドに乗せること。つま先のみの状態だと不安定に思うかもしれませんが、足裏全体で乗るよりも体重移動がしやすく、バランスも取りやすくなります。足の指をぎゅっと縮めて乗せることで、指先への負担は最小限に抑えられるでしょう。バランスが取れることで次のホールドへ移動しやすくなるため、ぜひ足の置き方も意識してみてください。
登る前にルートを考える
課題を登る前に、まずは壁をよく観察し、スタートからゴールまでのルートを考えてから登るようにしましょう。この行為はボルダリング用語で「オブザベーション」とも呼ばれ、スムーズに課題を登るために欠かせません。
オブザベーションなしで課題を登ろうとすると、次に進むべきホールドを見失ってしまったり、途中でルートに悩んだりしてスタミナを消耗してしまいます。必ず実践するようにしましょう。
取り組む課題が決まったら、最初に壁を観察し、登っていくルートをイメージします。途中で難しそうなホールドを見つけた場合、身体の使い方や手足の動かし方をイメージすると、実際に登るときもスムーズに登ることができるでしょう。なかなか課題がクリアできないときは、同じ課題に挑戦する他のクライマーを見て、動きを真似してみるのも有効です。
ボルダリングの服装
ここからは、ボルダリングにおける服装のポイントについて紹介していきます。
ウェア
ウェアは、基本的には動きやすければ何でもOKです。ボルダリング用のシャツやパンツもありますが、スポーツ向きの服装であれば問題ありません。よりボルダリングに適したウェアを選びたいのであれば、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
・腕が動かしやすいノースリーブ
・綿100%ではなく、吸汗速乾で伸縮性がある素材
・足元が見えやすい、裾が絞られたデザインのパンツ
また、ボルダリングでは「チョーク」と呼ばれる粉を手につけて登っていくため、粉がウェアにつく可能性も。汚れてもいいウェアを選びましょう。
クライミングシューズ
クライミングシューズとは、ボルダリングで履くシューズのこと。レースアップやベルクロ、スリップオンなどのスタイルがあり、ソールも様々なものがあります。
クライミングシューズは300〜500円でレンタルできることも多く、最初のうちはレンタルでも問題ないでしょう。ボルダリングを続けていくうちに、こだわりが出てきたらマイシューズを購入するのがおすすめです。
ボルダリング用の靴下
ボルダリング用の靴下として、薄めの靴下を用意しておきましょう。クライミングシューズは登りやすさを考慮して、きつめの作りになっています。そのため、分厚い靴下よりも薄めの方がおすすめ。特に靴下がないとクライミングシューズのレンタルができないため、必ず持参するようにしてください。
ボルダリングに必要な持ち物
ここからは、ボルダリングに必要な持ち物を「ジムでレンタルできるもの」「持参すると便利なもの」に分類して紹介していきます。
ジムでレンタルできるもの
・チョーク
・チョークバッグ
チョークとは、手の汗や皮脂を抑え、ホールドを掴むときに滑りにくくなるもの。粉末タイプのチョークがほとんどですが、中にはリキッドタイプや固形タイプのチョークもあります。このチョークとチョークを入れるチョークバッグは、現地でレンタルできることがほとんど。クライミングシューズと同様に、ボルダリングに慣れてきたら自身で買い揃えてみるのがおすすめです。
持参すると便利なもの
・タオル
・飲み物
・絆創膏
・羽織りもの
・ホールドを掃除するためのブラシ
スポーツをする上で最低限必要なものとして、タオルや飲み物は持参しましょう。他にも指先や膝などを負傷した際に使う絆創膏や、休憩中に冷えないための羽織りものもあると便利です。なお、意外と役立つのがボルダリング用のブラシ。ホールドに多量のチョークや前に登った人の手汗・皮脂などが残っていると、掴む時に滑りやすくなってしまいます。現地で用意されていることが多いものの、中にはない場合も。用意がない場合、課題を登る前後でホールドを掃除できるよう、ボルダリング用のブラシを持って行くと良いでしょう。
ボルダリング初心者の注意点
最後に、ボルダリング初心者が陥りがちな注意点について説明していきます。
落ちるときは安全に
ゴールしたあとやスタミナが限界なとき、高い場所から飛び降りるのは危険です。落ちるときは、ある程度の高さまで降りてからマットに着地しましょう。
また、ホールドに届かなかったり手を滑らせたりして、意図せず落ちてしまうこともあるかもしれません。そんなときは、足裏全体で大きく着地するのではなく、軽く足をついたあとに後ろへ転がるようにして落ちましょう。足裏だけで衝撃を受け止めてしまうと、膝や腰への負担が大きくなってしまうことに。背中から倒れこむように転がることで、身体全体に衝撃を分散させられます。
爪は短く切っておく
爪を割ってしまわないよう、あらかじめ短めに切っておきましょう。ボルダリングは、基本的に素手でホールドを掴みながら登るスポーツです。そのため、爪が長いままだと、ホールドを掴んだ拍子に爪が割れてしまう可能性が。爪割れ防止として、トップコートを塗っておくのもおすすめです。
また、手の爪だけでなく足の爪も切っておいたほうが良いでしょう。クライミングシューズはサイズ感がきついこともあり、足の爪が長いと足先が痛くなってしまいます。そのため、手の爪と一緒に足の爪も切っておくのがおすすめでしょう。
長い髪はヘアゴムでまとめる
特に女性の場合、長い髪はヘアゴムでまとめるようにしましょう。髪をまとめていないと視界が遮られ、スムーズにルートを辿れず無駄なスタミナを消費してしまいます。男性も髪が長いようであれば、ヘアゴムでまとめるのがおすすめでしょう。
アクセサリーは外しておく
時計やネックレス、指輪などのアクセサリーは、ボルダリングの前に必ず外しましょう。時計や指輪といった腕につけるものは、ホールドにぶつかり傷つけてしまうかもしれません。ネックレスもホールドに引っかかる可能性があり、大変危険です。
また、万が一登っている最中にアクセサリーを落としてしまった場合、下にいる人に危険が及んでしまうでしょう。そのため、他の私物と一緒にアクセサリーを置いておくのが基本です。
まとめ
今回の記事では、ボルダリングのルールや初心者でも実践できるコツ、ボルダリングに必要な服装と持ち物、注意点について紹介してきました。いかがでしたか? ボルダリングはアスリートやスポーツ経験者のみならず、趣味やダイエットの一貫として、どなたにでもおすすめのスポーツです。課題をクリアするごとに、大きな達成感もあるでしょう。新たな趣味を探しているという方は、ぜひボルダリングにチャレンジしてみてください。