小上がり和室をつくることで、さまざまなメリットが得られます。リビングにアクセントを加えられたり、リラックスできる休憩スペースとして使えたりと、使い方は自在です。
そのようにメリットが多い小上がり和室ですが、つくる際には意識しておかなければならない注意点があります。また、つくった後の活用方法を明確にしておくために、実例を知っておく事も重要です。
この記事では、小上がり和室をつくるために必要な費用相場もご紹介します。
リフォーム やまけん
高さのある空間を作る「小上がり」とは
小上がりとは、床より一段高くなった空間の事です。一般的にはリビングなどの広い空間に作ることが多く、本来、和室でも洋室でも問題ありませんが、畳を敷いて和室に使われます。
高さの違いは数十㎝で、数段上がったところに畳が敷かれています。部屋の中に高さが生まれるため、和室であれば寝転がる事ができるだけでなく、家族でくつろぐ場所や子どもの遊び場や来客用のスペースとしても活用できる空間です。
「小上がり和室」が人気の理由
昔から、日本家屋において床の間や縁側などは床の高さが上げられてきました。これは空間を仕切るという役割もありますが、寒さ対策も理由のひとつとして挙げられます。
小上がり和室はこの伝統を受け継いでおり、空間に高さを生み出すために作られるスペースです。部屋に特別感を生み出せるため、おしゃれなインテリアにこだわりがある人にも人気があります。リビングの一角に作れば、和洋折衷を取り入れたい時にも役立つと言えるでしょう。
また、和室であれば寝転がる事ができるので、家族でくつろぐ場所や子供の遊び場としても活用できます。他にも、来客用スペースとして使う事も可能です。
「小上がり和室」を作るメリット
小上がりを作るなら、小上がり和室が人気です。小上がり和室には、次の特徴があります。
- 段差を利用し収納スペースとして活用できる
- 高さがあるので椅子代わりとして使える
- 立体感が出て空間をうまく活用できる
- 床から一段高いのでリビングのゴミが入りにくい
- 畳ベッドとして使える場合もある
- 寝転んだ時に地べたのような不快感がない
それぞれの特徴について見ていきましょう。
段差を利用し収納スペースとして活用できる
小上がり和室を設置すると、段差部分を収納スペースとして便利に活用できます。小上がりの高さが高ければ高いほど収納力が増え、収納は主に3種類に分けられるのでそれぞれ用途に併せて選びましょう。
①引き出しタイプ
段差の部分に引き出しの取っ手を設置すれば、大容量の収納スペースとして便利に活用できます。畳の上に人がいたり家具を設置したりしていても出し入れできるので、本やおもちゃなどの小上がりの空間で使う物を入れられる収納タイプです。
ただし、奥行き全部を引き出しとすると、奥にある物が取り出しにくくなります。引き出しを開く時に必要なスペースがないと、手前に引き出す余裕がなくなってしまう点にも気を付けなければなりません。手前の数十cmだけを引き出しにして、必要な収納スペースだけ確保する使い方を検討するとよいでしょう。
②天面開口タイプ・跳ね上げタイプ
小上がりの床の部分を跳ね上げて収納するタイプもあります。小上がりの空間全体を収納スペースとして活用できるので、収納力が高い点が特徴です。
天面開口タイプは畳部分が蓋のように取り外せます。蓋が大きいので収納物を見やすく、何を入れたか一目でわかるのがメリットです。
客用布団や季節の衣服などのかさばるものも、跳ね上げタイプの収納なら問題なく片付ける事ができます。ただし、収納の蓋が畳になるため、小上がりに人がいる時や家具を置いている時は開け閉めしづらくなる点に注意しましょう。
③引き出し&天面開口・跳ね上げタイプ
リビングに面した小上がりの入口部分は引き出しタイプの収納、小上がりの奥部分は跳ね上げタイプの収納と、それぞれを組み合わせる方法もあります。
手前には本やおもちゃなどのすぐに取り出したい物を入れ、奥には客用布団などの利用頻度が低い物を入れると、収納力の高さと利便性を両立できますよ。
【収納の使用例】どんなものを入れるか
小上がりの収納は、さまざまなものに活用できます。小上がりで子供を遊ばせたりおむつ交換をしたりするのであれば、おもちゃやベビー用品を引き出しタイプの収納スペースに入れると便利です。
また、衣替え以外に出し入れしないシーズン物の衣類を天面開口タイプ・跳ね上げタイプの小上がりに収納するのであれば、出し入れしやすいように上に大きな家具を置かないようにしましょう。
小上がりを来客用のスペースとして使うのも人気です。その場合は、天面開口タイプ・跳ね上げタイプの小上がりに布団を収納しておくとよいでしょう。かさばりがちな布団を収納できるうえ、すぐに取り出せるので非常に便利です。
収納したいものに合わせてタイプを選び、必要なスペースを確保しましょう。
リビングのアクセントで休憩スペースとして使える
小上がりの段差を、椅子代わりとして休憩のために活用する事もできます。しかし、そのまま椅子代わりとして利用する場合は、段差が低すぎると使いづらい事もあるでしょう。座りやすい高さに調整してリビングやキッチンの椅子代わりになるようにしてください。
また、椅子代わりとして利用する場合は、人気の畳にこだわる必要はありません。フローリングで仕上げて小さなクッションを置いてもおしゃれに仕上がります。休憩スペースとして使用できるのも小上がりのよいところです。
和室に利便性を求めるために作るのはもちろんの事、リビングのように洋室の間にアクセントのスペースとして使うのもよいでしょう。
立体感が出て空間をうまく活用できる
LDKが広いと開放感のあるおしゃれな雰囲気になりますが、空間全体を無駄なく活かすことが難しくなります。しかし、小上がり和室を設置すれば、空間に立体感が生まれ、見た目だけでなく使い方の幅が広がるのがメリットのひとつです。
家族団らんのスペースや子供の遊び場、勉強やテレワークの部屋としても活用できます。また、ふすまも取り付ければ、プライベートを守りつつ客間としても使えるスペースになるのは便利な点です。
小上がりに上質な畳を使い間接照明を置けば、就寝前にリラックスできる空間として活用する事もできます。
また、小上がり和室の空間に布団を敷けば、高さを活かして畳ベッドとしても活用できます。段差があるので足元に寝ているような感覚にはならないので、通常の和室よりも落ち着いて眠れるでしょう
床から一段高いのでリビングのゴミが入りにくい
リビングの一角に段差を作らず和室スペースを作る事もありますが、段差がないとゴミが入りやすくなってしまいます。ゴミがある状態だと思い立った時に気軽に寝転がることができません。
しかし、小上がり和室であれば床から一段高くなっているので、リビングのゴミが簡単に入り込まず、清潔さを維持しやすくなります。
畳ベッドとして使える場合もある
小上がり和室の空間に布団を敷けば、高さを活かして畳ベッドとしても活用できます。段差があるので足元に寝ているような感覚にはならないので、通常の和室よりも落ち着いて眠れるでしょう。
また、和室がリビングと段差なしにつながっていると、足元に寝転がっているような不快感を覚えるかもしれません。しかし、小上がり和室であれば段差があるので、リビングとは切り離された雰囲気の中で寝転がる事ができます。
デザインのバリエーションが豊富
畳を使ったスペースというと、よく見かける和室のイメージが思い浮かぶかもしれません。しかし、小上がりの場合は洋室でも違和感がないデザインのものが多く設けられるというメリットがあります。
リビングの中に存在してもおしゃれなモダンデザインの物は、緑ではなくブラックとグレーの組み合わせであったり、薄いグレージュであったりと、色の組み合わせが自由です。もちろんクッションや観葉植物を置いても違和感がありません。
広さによってアクセントとして使うか、リラックススペースとして使うかといった点によってデザイン・広さを変えられるという点も魅力的です。
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小上がり和室を作るデメリット
メリットの多い小上がり和室ですが、デメリットもあります。活用する際の注意点について見ていきましょう。
バリアフリーに向かない
小上がり和室を作ると段差が生まれるので、バリアフリーの概念とは逆行します。また、脚に痛みがある方や高齢の方にとっては、小上がり和室の高さは負担と感じられる要素のひとつです。
もしバリアフリー対策を行う必要がある場合は、段差を極力減らしたり、カーペットを敷くなどの対策を講じましょう。
赤ちゃんや小さい子供の利用には注意
小上がり和室は、子供の遊び場や赤ちゃんのおむつ交換の場所としても適しています。しかし、赤ちゃんや小さい子供が段差でケガをする事もあるので注意が必要です。
目を離した時に段差につまずいたり、床に転げ落ちてしまったりといった事故に繋がりかねません。まだ一人で歩くのが難しい年齢の子供がいる場合は、危険がないように柵を作る・クッションを敷くなどの対策が必要です。
リビングが狭くみえる場合がある
リビングに小上がり和室があると、空間に変化が生まれ、おしゃれなイメージになります。しかし、小上がり和室の高さによってリビングが狭く見える事もあるので注意しましょう。
小上がり和室は空間に奥行きを作り出しますが、デザインや間取りによってはリビングに圧迫感を与えかねません。リビングにある家具と、スペースとの兼ね合いを考慮しましょう。
リビング全体の広さとそぐわない場合は、小上がりの広さを見直さなければなりません。
ロボット掃除機が対応できない
小上がり和室には段差があるため、ロボット掃除機では対応できない点に注意が必要です。そのため、小上がり部分は人の手で別途掃除するか、ロボット掃除機を小上がりに持ち上げて掃除するか、どちらかの方法で掃除をしましょう。
手間がかかるという人は小上がり専用のロボット掃除機を用意するのも手段のひとつですが、あまり経済的ではありません。
小上がり和室を設置する際の注意点
空間をおしゃれに演出し、なおかつ使い勝手の良い小上がり和室を作るには、次の注意点を意識するとよいでしょう。
- 適切な広さと高さの基準
- 仕切りの有無
- 設置する場所
- デザインとインテリアの工夫
注意点1:適切な広さと高さの基準
リビングのスペースや間取りも考えて、小上がり和室の広さを決めましょう。小上がり和室の広さは、3畳、4.5畳、6畳の3パターンが主です。
なお、人気の広さは4.5畳です。設置スペースに余裕がない時は3畳サイズも検討しましょう。
リビングの半分程度を占める広さの小上がり和室を設置してしまうと、リビング部分が手狭になって暮らしにくくなります。リビングスペースがそれほど広くない場合は、無理に広い小上がり和室を設置しないようにしましょう。
一方、リビングが広い場合は小上がり和室のスペースにもある程度融通がききます。どのような用途で使うかを想定しておくと理想的な空間づくりができるでしょう。
また、小上がり和室は高すぎると唐突感のある印象になるので、20~35cmほどの適度な高さに調整しましょう。
しかし、この高さにとらわれず、家族が使いやすい高さに段差を設置するべきです。バリアフリー対策や、子どもの安全を確保するなどの観点から家庭内に段差をあまり作りたくない場合には、安全性を重視して低めに設定してください。
注意点2:仕切りの有無
小上がり和室にふすまなどの仕切りがあると、リビングやキッチンの空間から独立したスペースを確保することができます。
特に朝や夕方のように家族が忙しく活動している時に、リラックスした時間を過ごしたい年齢の人は仕切りを利用するのがよいでしょう。
居住スペースとしてだけではなく、短時間のみ荷物を保管しておく時にも役立ちます。生活感をなくしてすっきりと見せられますし、急な来客時もプライバシーを確保できて便利です。
しかし、仕切りがあると空間が狭く見えるというデメリットもあります。圧迫感があるかもしれないため、仕切りがないタイプの小上がり和室を作る事も検討しましょう。
注意点3:設置する場所
設置する場所も重要なポイントです。リビングの中央に作ると空間が途切れてしまい、リビングのイメージが大きく変わり、狭く見える可能性があります。
子供の安全面を考えると、キッチンの横であれば小上がり和室のスペースで遊んでいる時も目が届くので安心です。
また、見た目を重視してリビング以外の場所に設置すると、用途が限られてしまうためあまりおすすめできません。リラックスできるスペースとして設けたとしても、部屋によっては座って使うよりも、ベッドのように寝転んで使う事しかできなくなる事が多くなってしまうからです。
小上がり和室は家族団らんや収納スペースとしての活用を第一に考え、リビングに設置するのが最も適しています。
注意点4:デザインとインテリアの工夫
畳の種類も小上がり和室のイメージを左右する重要な要素です。例えば、縁なしの琉球畳なら小上がり部分が広く見える効果があります。また、洋風やアジア風のインテリアにも合うので空間がおしゃれに見せられるでしょう。
また、リビングやキッチンの全体的なイメージに統一感が生まれるようにするのも重要です。
あえて障子をつけず、リビングとの一体感を演出する方法もあります。リビングやキッチンのインテリアがモダンであれば、落ちついた色合いの小上がり和室に仕上げて空間が浮かないようにするとよいでしょう。
照明器具も和風ではなくダウンライトを埋め込んで洋風にし、調和が取れたスペースを作るとより快適に過ごせます。
小上がり畳スペースの後付け・リフォーム費用相場
小上がり和室の取り付け費用は、主な広さ別にまとめると以下の通りです。なお、いずれもふすまの費用は含まれていません。
広さ | 設置価格相場 |
3畳 | 15万円~ |
4.5畳 | 20万円~ |
畳の種類ごとの価格の違い
畳の種類別の価格は以下の通りです。基本的には「縁付き」の畳が使われます。
「い草」は一般的な畳の素材で、リーズナブルに使えて和室であるイメージを強められるのがメリットです。
「和紙畳」は和紙をこより状に巻いてコーティングした畳の素材で、色褪せの少なさや耐久性の高さなど、高機能であるところが現代住宅に適しています。
「樹脂畳」はカラーバリエーションが豊富で、カビやダニが発生しにくい素材です。水拭きするだけで簡単に手入れできる簡単さもメリットだと言えます。
「琉球畳」は「七島イ(しちとうい)」を原料として利用した縁のない畳です。七島イは沖縄でよく栽培されていましたが、現在では主に大分県で栽培されています。一般的な畳よりも丈夫でデザイン性が高いという点がメリットの畳です。
素材・縁の有無 | 1畳あたりの価格目安 |
縁付きのい草畳 | 11,000円~ |
縁付きの和紙畳 | 13,500円~ |
縁付きの樹脂畳 | 13,500円~ |
縁なしの琉球畳 | 17,000円~(1枚が半畳のため2枚分) |
「小上がり和室」のよくある質問
「小上がり和室」を設置する際に、あらかじめ知っておきたい知識がいくつかあります。ここでは、それにまつわるよくある質問と回答をご紹介します。
Q1.小上がり和室の撤去費用は?
A1.戸建て住宅でリビングの小上がり和室を撤去する場合、撤去にかかる費用相場は、約90万円です。なお、工期には約1ヶ月かかると見ておきましょう。また、マンションの場合は障子や押入れの解体、クロスの張り替えなどを含めて小上がりを解体しフローリングにリフォームすると約70万円かかります。
Q2.小上がり和室でよくある失敗は?
A1.小上がりの場所をよく考えずに設置した結果、生活動線上に角が位置してしまい足や物などをぶつけてしまうという不便を感じるという失敗があります。この場合は角を尖らせず、隅切りにして危険を減らしましょう。また、段差が気になって使えないという失敗も少なくありません。バリアフリー対策であれば手すりを付けるのがひとつの方法です。子供の落下が気になるなら、ベビーサークルを作ると安全性が生まれます。
小上がり和室の実例と活用方法
小上がり和室の実例として、以下のような活用方法が挙げられます。
書斎として使う
小上がりにカウンターを付けて仕切りを設ければ、個室の書斎にできます。書斎としての部屋を確保できないマンションの場合でも、小上がり和室は他のスペースと兼用して使用可能です。好きな大きさの本棚や机を置けば、本格的な書斎としても使えます。
子供が遊ぶスペースとして使う
子供が遊ぶスペースとして、畳敷きになっている小上がり和室は適しています。フローリングで転ぶと怪我に繋がりますが、畳であればその危険性は減少するでしょう。ある程度の広さがあれば小さいうちはおもちゃを使って遊んだり、親子で触れ合える空間として活用できます。小学校に上がったら勉強ができる環境を整えれば、リビングやキッチンから子供の様子を見守りながら生活できますよ。
リビングでベッドのように使う
リビングの隅に小上がり和室を設置すれば、リラックスできる空間ができあがります。いつでも横になってくつろげる、お昼寝スペースとして活躍するでしょう。午後に過ごすのもよいですし、お風呂上りなど就寝前に一息つく時にも心地よく使えます。リビングで家族の様子を見ながらゆったりと過ごしたい時にぴったりの使い方だと言えるでしょう。
小上がり和室でリラックスできる時間をつくろう
小上がり和室はリラックスできるスペースとしても使う事ができます。もし小上がり和室で一息入れたいという場合は、ぜひ業者に設置を依頼してください。
業者選びの際に大切なのは、優良業者を選ぶ事です。優良業者選びのために有効な方法として、相見積もりをとるという方法が挙げられます。相見積もりとは、一度に複数社から見積もりをとる事です。
1社ずつ見積もりをとるのは手間も時間もかかりますが、相見積もりであればどちらも省く事ができます。
費用面はもちろん、アフターフォローや施工後の保証、サービスについてもわかりやすく比較できるのでおすすめの方法です。ぜひ相見積もりの活用を検討してください。
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小上がりを作ることで、空間に立体感が生まれ、よりオリジナリティの高い住宅が完成します。収納量を増やすこともできるので、価格やタイプを把握したうえで、業者に依頼しましょう。
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監修プロのコメント
空間に高さの変化をつけることは日常の生活にメリハリをつけることができます。
床が上がることによって天井が低くなりますが、それも他の部分とは違った籠る感覚で落ち着きを感じることができるでしょう。
また自動掃除機が使えないというデメリットを挙げましたが、この部分は畳の日本的な場所なのであえて箒を使うなど工夫をしてみてはいかがでしょう。
バリアフリーという言葉が段差のないという誤った解釈で広がってますが、小上がりといった段差は、高齢の方や体が不自由な方にとって座りやすかったり、立ち上がりやすかったりすることもあります。
大きなリビングがあるけどなんとなくしっくりきてない方は是非地元のプロに小上がりリフォームの相談をしてみてください。
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