「部屋を広くしたい」「バリアフリーにしたい」など、さまざまな理由で室内ドアを引き戸にリフォームするケースが増えています。引き戸にはいろいろな種類があり、用途に合った引き戸を選ぶことが成功するポイントです。また、部屋の構造上、引き戸に交換できない場合もあるため注意しましょう。
本記事では引き戸の種類や特徴・選び方を説明するとともに、施工する際の注意点や費用相場を紹介します。引き戸へのリフォームを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
引き戸の種類とは
引き戸とは、左右にスライドさせて開閉する扉のことです。和室の障子やふすまで日本人にはなじみのある扉ですが、その種類はひとつではありません。設置する部屋や目的に応じて、さまざまな種類を選べます。
ここでは、室内ドアをリフォームする際の引き戸の種類と特徴について紹介します。
片引き戸
片引き戸とは、壁に扉をスライドさせて開閉するタイプです。最も一般的な引き戸で、住宅の玄関や居室・室内ドア・キッチン・トイレなど、あらゆる場所に適しています。
ただし、ドアをスライドさせるために壁の収納スペースが必要になり、広さに余裕のない場合は向いていません。既存のドアを利用して設置する場合は簡単な工事で済み、費用も安くおさえられます。
たとえば、下記のような引き戸が見つかりました。
ゆったりとした片引き戸の玄関ドアです。木目調で落ち着いた風格があり、横はガラス窓で採用性の高いデザインになっています。
引き分け戸
両引き戸とも呼ばれ、 2枚の扉を両側にスライドして開閉するタイプの扉です。溝やレールは1本で、その上を2枚の扉が左右に動きます。普段は開けたままで部屋の間仕切りとして使うことが多く、広い部屋をしっかりと分けたい場合におすすめです。また、人の出入りが多い玄関にも向いています。
片引戸よりも豪華なイメージで、開けたときに開放感があるのが特徴です。ただし、設置には左右2枚の戸が収まるスペースが必要になり、設置場所は限られるでしょう。
引き分け戸の一例です。両側の扉を全開すると出入り口が広くなり、開放的な空間になります。
引き違い戸
引き違い戸とは、扉を2枚設置して左右両方から開閉できるタイプの引き戸です。押入れのふすまをイメージするとわかりやすいでしょう。開口部を広めに取るので、住宅の玄関や居室の間仕切りに向いています。
左右のどちらからも出入りでき、動線を確保しやすくなるのがメリット。ただし、通行できるスペースは扉1枚分で、人が一度に多く通れるわけではありません。
落ち着いた色合いのおしゃれな引き違い戸です。ガラスの採光部が部屋を明るく見せています。
引き込み戸
戸を開けたときに扉が壁に収納されるタイプです。扉は、扉を収納する箱状の部分、通称「戸袋」に収納します。雨戸をイメージするとわかりやすいかもしれません。
スペースを有効活用できるため、狭い場所に引き戸を設置したい方におすすめです。玄関や居室、トイレの扉にも向いています。
ただし、戸袋にはほこりが溜まりやすく、掃除の手間がかかるのがデメリットです。また、引き込み戸を設置するには戸袋の工事が必要になります。壁の解体工事など大規模な工事により、費用も高額になりやすいことは把握しておきましょう。
建具を2枚にして間口を広くしたトイレの引き込み戸です。磁石で連動しているため開け閉めもそれほど面倒でなく、広い間口で出入りが楽になります。
折れ戸
開けたときに扉が中折れになるタイプの引き戸です。扉を開けた際のデッドスペースが少なくなり、開口を大きく活用できます。
トイレや浴室・クローゼットの扉など、比較的狭い場所におすすめです。上吊式で床面にレールがないため、掃除の手間がかかりません。
室内ドアに比べて開閉時のスペースはなくなりますが、折れた部分のスペース確保が必要です。
扉が折れ戸のシューズクロークです。両側に広く開くことができ、出し入れしやすい設計になっています。
引き戸の設置方法
引き戸の設置方法には、レールタイプと上吊りタイプの2種類があります。
一般的な設置方法はレールタイプで、床にレールを敷いて戸をスライドさせる方法です。レールと床の段差や掃除しにくいなどのデメリットがありますが、近年は段差が少なくフラットなタイプも販売されています。
上吊りタイプは天井や壁の上部にレールを設置し、戸を吊るしてスライドさせる設置方法です。床にレールがなく掃除しやすいのがメリットで、つまずく心配もありません。小さな子どもや車椅子の方がいる家庭でも、安心して利用できます。
引き戸の特徴
引き戸の特徴は、室内ドアのような開けるスペースが必要なく、開閉がスムーズに行えることです。玄関や部屋の出入りが楽になり、引き戸を開けておくことで開放感を出すこともできます。
ここでは、リフォームで引き戸を設置する特徴やメリットを紹介します。
部屋を広く使える
引き戸のリフォームは、開き戸のように開いた扉のスペースが必要なく、部屋を広く使えるという特徴があります。開閉のスペースを広く確保できる分、出入口の周辺に家具を置けるのがメリットです。これまでと違うレイアウトにして、部屋の模様替えを楽しみたいときにもぴったりでしょう。
引き戸には、開閉が簡単という特徴もあります。開き戸はノブを回しながら前後に扉を動かす必要がありますが、引き戸は横にスライドさせるだけで簡単に開閉可能。小さな子どもや高齢者の方でも楽に動かせ、扉の開閉位置を自由に調整できるため、車椅子移動もしやすいのがメリットです。
また、引き戸は前後に開かないため人にぶつかる心配がなく、人の出入りが頻繁な場所でも安心して開閉できます。
使用用途に合わせて柔軟に対応できる
引き戸は開閉の目的だけでなく、部屋の使用目的に合わせて柔軟に変更できるのもメリットです。子どもが小さく目が離せないうちは引き戸の扉を適度に開けておき、隣の部屋で子どもの様子を見守ることができるでしょう。年齢が高くなったら戸を閉め、子ども部屋にすることもできます。
また、引き戸は開閉の調節ができ、開き戸のように風で自然に閉まることがありません。玄関に設置する場合は網戸を貼れるタイプもあり、家全体の換気を良くすることもできます。
全開にして風通しを良くしたり、ペットが通れるように少し開けておいたりするなど、目的に応じて柔軟に対応できるでしょう。
開放感が出る
引き戸を全開することで、部屋に開放感が生まれます。部屋を広く使いたいときは全開して部屋と部屋をつなぎ、大きなスペースとして使えるのが特徴です。部屋を別々の使用目的で使いたいときは、戸を閉めるだけで仕切ることができます。
玄関を引き戸にすることで、玄関ポーチが広くなくなるのもメリットです。開き戸のようなドアのデッドスペースがないため、使いやすく開放感のある玄関ポーチになるでしょう。来客があった際にも良い印象を与えられるはずです。
引き戸リフォームする際の注意点
引き戸のリフォームをする際は、以下のような点に注意しましょう。
- ドアを引き込むスペースを確保
- バリアフリー
- 冷蔵庫の置き場所を確認する
- ショールームを見学する
- 見積もりをとる
引き戸にするデメリットについてもあらかじめ確認しておくことが大切です。
ドアを引き込むスペースを確保する
引き戸は、片引き戸や引き分け戸・引き込み戸など施工のタイプにより、ドアを引き込む収納スペースの確保が必要です。開き戸のようにどこでもつけられるわけではないため、引き戸をリフォームする際は引き込むスペースも考慮に入れて検討しましょう。
また、引き込むスペースには、コンセントやスイッチ・タオル掛けなど壁を利用する設備やインテリアは設置できません。これらの設備やインテリアをほかの場所に配置できるかの検討も必要です。
バリアフリーの場合は車椅子が通れる幅を確保
車椅子の方がいる家庭などでバリアフリーを検討している場合は、車椅子が通れる幅を確保しなければなりません。一般的な引き戸は、歩いて通ることを想定した幅になっています。車椅子の幅は約40〜約70cmとばらつきがあり、通行が難しい場合もあるでしょう。事前に通れるかの確認をおこない、狭い場合は開口幅の広い引き戸を選ぶ必要があります。
また、レールタイプの引き戸は段差があるため、車椅子でスムーズに移動するためには床面がフラットになる上吊り引戸がおすすめです。
引き戸には、閉まる際に引き戸の動きがゆっくりになる「ソフトクローズ機能」が付いているタイプもあります。車椅子でも安心して出入りできるのがメリットで、力強く戸を閉めた場合に衝撃音を抑えることも可能です。子どもが手を挟んで怪我をするリスクも軽減できるでしょう。
風や音が気になる場合は気密性の高い商品に
引き戸は、開き戸に比べて気密性や遮音性が低い傾向にあります。レールをスライドするという構造から、ドアと壁・床の隙間が大きくなるためです。冷暖房の効きが悪くなったり、風の音や人の声が気になったりする可能性があります。気密性・遮音性の高さを求める場合は開き戸が向いているでしょう。
ただし、近年は気密性が高い商品も多く販売されています。価格は高めになりますが、気密性・遮音性は気になるものの引き戸にこだわりたいという方におすすめです。
気密性が低いということは、通気性がいいということを意味します。そのため、引き戸は湿気が多い・こもりやすい浴室や脱衣所など、風通しを良くしたい部屋にも向いているでしょう。
掃除に手間がかかる場合がある
引き戸はタイプによって、掃除の手間がかかります。レールタイプの場合は引き戸をスライドさせるレールや溝にゴミがたまりやすく、こまめな掃除が必要です。掃除の手間を省きたい場合は、上から吊るすタイプを選ぶとよいでしょう。
また、戸袋に収納する引き込み戸の場合、壁の中にホコリやゴミがたまりやすく掃除もしにくいという問題があります。引き込み戸には、戸袋がある壁の下の巾木(はばき)を外せる「掃除用巾木」もあるため、施工前にリフォーム会社へ相談してみるとよいでしょう。
引き戸にリフォームできない場合もあるので確認
住宅により、引き戸を設置できないケースもあります。以下のタイプは扉を収納するスペースが必要であり、スペースがない場合はリフォームができません。
- 片引き戸
- 引き分け戸
- 引き込み戸
スペースがない場合でも、折れ戸なら設置できる可能性があります。施工できるかどうかの判断が難しい場合も多いので、まずは事前にリフォーム会社に相談するのがよいしょう。
引き戸リフォームの費用相場
室内ドアやクローゼットの扉を引き戸に交換する費用相場は、引き戸のタイプや商品により異なります。低価格の引き戸であれば数万円程度のものが多く、工事代金と合わせて10万円以内におさまる場合もあるでしょう。
一方、気密性やバリアフリーなどを考えた場合、20万円を超える場合もあります。
引き戸のタイプ別にリフォーム費用の相場を表にしているので、参考にしてください。
片引き戸(既存のドア枠を利用) | 8万~11万円 |
片引き戸(新規のドア枠を設置) | 20万~50万円 |
引き分け戸 | 30万~100万円 |
引き込み戸 | 35万~55万円 |
引き違い戸 | 30万~40万円 |
既存のドア枠を使う場合は、今あるドアの撤去と新しいドアの設置だけで済むため、リフォーム費用は安くおさまります。しかし、バリアフリーなどで出入り口を広くしたい場合は、壁の解体工事などが必要になるため費用も高くなるでしょう。室内ではなく玄関の施工はさらに金額が高くなります。間口を広げる工事は30〜50万円が相場で、玄関向けの引き戸も全体的に高めです。
引き分け戸へのリフォームは必要となる部材が多く、約30万円が相場となります。また、玄関の場合はさらに高めとなり、約60〜100万円の費用がかかる場合もあるでしょう。
引き込み戸は壁に戸袋を設置するため、リフォーム費用は高くなる傾向にあります。室内の工事でも約35万円前後が相場です。玄関はさらに高めになり、間口を大きくする工事も必要になる場合、55万円前後かかる場合もあります。引き違い戸の相場は約30万円で、ほかの引き戸と同じく玄関の場合は高額になる場合もあるでしょう。
また、部屋の構造によっては希望する引き戸にできない可能性もあります。十分なスペースがなければリフォームが難しくなるため、まずはリフォーム会社と相談しながら慎重に検討を進めましょう。
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