今回のヨガインストラクター 菊池さんへのインタビューは、新型コロナウイルス感染症が流行する最中、オンラインヨガレッスン、菊池さんのこれまでの人生やヨガとの出会いについてお話を聞かせていただきました。
ヨガに興味がある方、習い事を始めてみたい方、ヨガインストラクターの方、オンラインレッスンの開催に興味のあるヨガ教室主宰の方に、ぜひ読んでいただけますと幸いです。
Zehitomo社員へのヨガレッスン
菊池先生には、2020年4月、緊急事態宣言が出され外出自粛要請が出ている中、オンラインヨガレッスンを開講していただきました。レッスンを受講したのは、自宅でのリモートワークが続き運動不足が重なっていた株式会社Zehitomoの社員です。
「大人数へ提供するオンラインヨガレッスンの指導は今回が初めてでした。もともと自分のスタジオの生徒さんや、友人へオンラインヨガレッスンを実施した経験はありました。
自分がクラスを持つスタジオではスタジオ主導のオンラインヨガレッスンは4月はありませんでした。スタジオは休業していました。オンラインレッスンを受講する生徒さんは〜10%ほどで、ほとんどの生徒さんはレッスンをお休みしていたようです。」
「オンラインヨガレッスンを受講できない理由には、『時間帯が合わない』、50代60代の生徒さんは『オンラインツールの使い方が分からない』というものもありました。スタジオで対面でヨガをすることは楽しいけれど、オンラインレッスンにはピンとこない人も多いようでした。」
「オンラインヨガレッスンは、ビデオ通話ツールのZoom(ズーム)を使っています。」
新型コロナウイルスによる影響
「自分がアシスタントをしていたスタジオは3月の2週目に一時的にクローズしました。自分のスタジオのクローズは、緊急事態宣言のタイミングです。それ以外のレギュラークラスを担当しているスタジオは緊急事態宣言のタイミングでクローズが決定しました。
3ヶ所ある指導先のスタジオの中にはギリギリまで開講していた教室もありましたが、3月に入って生徒さんの数がガクンと減りました。ヨガスタジオは換気できるとはいえ、スポーツ施設の密閉度などが話題にもなっていたので、気になる方も多かったのだと思います。」
ヨガと出会った時は、ヨガに関係のない別の仕事をしていた
「ヨガと出会ったのは2007年、身体を壊して体調が悪くなったことがきっかけです。設計事務所で働いていたのですが、事務所の上の階に大きなヨガスタジオがありました。当時はスタッフの方と挨拶をしたり会話をしたりする程度で、『私は体が硬いので無理です』なんて話をしていました。
「そこは結構大きなスタジオで、東京都中央区に今もあります。当時はよくわかっていませんでしたが、今思い返すと有名なヨガ講師が何人も指導に来ていました。有名なヨガインストラクターさんって印象的な方が多いのでなんとなく覚えています(笑)」
「そこのスタジオに通っている人たちはみんな健康そうなのに対して、私は不健康そのものでした。」
「毎日ヨガ教室を横目に通勤していた当時は、体が硬いからヨガなんて無理だと思っていました。ヨガがどんなものかよくわからなかったし、自分がやるということには結びつきませんでした。スタジオの入り口に並べられた雑誌を眺めながら『表紙の人きれいだなあ』『こんな綺麗な人がヨガをしているのか』『すごいなあ』と思う程度。当時は休みなく終電まで働いて、心身共に疲れきって何かを始める余裕なんてなかったのです。
仕事を辞める時には心身ともに参っていました。対人恐怖症みたいな症状が出て、人と話していても涙が出てきてしまうような状態でした。今思い返してもすごく追い詰められていましたね。」
運命のように、意外な場所でヨガと再会
仕事を辞めた後は、宮古島に行ったという菊池さん。美しい海と自然に癒されたかったそう。
「もちろん宮古島にも人はいましたが、自然の中で1人でゆっくりと過ごすことができました。3ヶ月滞在して東京に戻りました。」
「その1ヶ月後に、ふと通りかかった代々木上原のおしゃれな古本屋さんの入り口にBRUTUS(ブルータス / 雑誌)のヨガ特集が並んでいました。その古本屋さん、それまで入ったことはなかったのですが、BRUTUSを見て『そういえば私、ヨガをやってみたいと思っていたな』と思い出し、その雑誌を購入し、中に掲載されていたヨガスタジオに電話をして、その次の日に体験レッスンを受けに行きました。」
「当時の私は『このままじゃだめになる、何かしなきゃ』と不安な気持ちを抱えていました。しかしその体験レッスンで受講したヨガがとても気持ちよくて『これだ』と思いました。」
「仕事場が入っていたビルのヨガスタジオを見ていなかったら自分の中に『ヨガ』がインプットされていなかったと思います。
私はずっと自分が夢中になってやれることを探していましたが、ピンときていないまま設計の仕事を続けていました。自分がずっとこの仕事に関わっていくとやっていくと思えず退職を決めたものの、何をしたらいいかわからず焦りばかり抱えていました。」
「ヨガに出会って『私がやりたいのはこれだ』とわかりました。それからはずっとヨガを中心に生活してきました。」
「ヨガに出会った1年後にアシュタンガヨガに出会い、そして師匠となるタリックに出会い、タリックが主宰する渋谷のシャラ(ヨガ道場)に通うようになりました。」
「初めてインドに行ったのは30歳の時です。仕事を辞め、アシュタンガヨガの総本山であるKPJAYIで3ヶ月ヨガを学びました。その後も定期的にインドに通っています。
2015年から師匠タリックのアシスタントをスタートし、自分自身のヨガの学びを深めると同時に、ヨガを伝えることも学び始めました。その頃から少しずつアシュタンガヨガを教えるようになり、2019年にインドの総本山KPJAYIで指導に当たるアシュタンガヨガの正式継承者であるシャラ―ト先生から、アシュタンガヨガの正式指導者資格をいただき、現在活動を続けています。」
「最後にインドに行ったのは2019年です。今年2020年の夏に行く予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で渡航が中止になりました。」
「これだ」と思えたアシュタンガヨガ
ヨガに出会ってから「ヨガ中心の生活にはなったけれど、すぐにヨガ1本で生活したわけではなかった」と話す菊池さん。
「アシュタンガヨガは主に朝行うヨガなので、朝はヨガのために時間が使える、そんな仕事をしました。インテリアコーディネーターやアパレルの仕事などをしましたね。
「友人には学校の先生が多いです。先輩も後輩も同学年の友人も、教師になった人が多い。いわゆる『安定した仕事』ですよね。『ななえは異質だね』みたいな見られ方は多少されます(笑)。でもいくら周りに教師になる人が多くても、私自身は公務員として働く自分はピンときませんでした。」
「周囲には教師になることを勧められましたが気が進まない。かといって、私はこれがしたい、と思えるものも当時は見つかっていませんでした。」
しかしヨガに出会い、「これだ」と思ったと言う。「全てヨガを中心に決断をするようになりました。ヨガとの出会いは、自分の中で優先順位がはっきりした瞬間でした。アシュタンガヨガをするために仕事を選ぶ・変える、ヨガをするためにインドに行くなど、迷いなく選択できるようになりました。」
当時はやりたいことが見つからないまま生きているのが怖くて漠然ともがいていた。けれど今はヨガが軸にあると話す菊池さん。
「自分が、なぜそこにいるのかわからない、そういう思いでその場にいるのが苦しかったですね。ヨガは初めて、自分がやることはこれだ、と思えました。
初めてのインドからの帰国後、チフスになって3週間隔離されて命が危なくなったこともありました。母親にも心配をかけました。早くもっともっと安心させてあげたいです。」
指導の時に、気をつけていること
「生徒の皆さんに対しては、背伸びせず自然体で接するようにしています。また言葉や言い方にはできる限り心を配るようにしています。」
「目標にする先生や憧れの人もいますが、いきなり自分がすごい先生になれるわけではなく、自分の経験以上のことは伝えられません。私は先生を演じるキャラクターでもないので自然体でヨガや生徒さんと向き合うことができればと思っています。」
これからヨガを始めたい方にメッセージ
「アシュタンガヨガをみんながやってくれたらいいなと思っています。体にも心にも良いことしかない。1人でも多くの人に体験してもらいたい、素晴らしさを知ってほしいと心から思います。
なんでも、やってみないとわかりません。体が硬い、体型が、年齢が、忙しいからなど、人は『やめておく理由』を見つけるのは得意だけれど、それを『できる理由』に変えて思い切って踏み出すとそこには新しい景色が待っていると思います。」
気負わずに、やりたいという気持ちがあるならぜひやってみてほしい、と菊池さん。
「ヨガは体を使うけれど、ポーズをとることが目的ではなくて。ポーズをとることは『ツール』です。ポーズは自分の体と心を安定した状態に持っていくための準備。
自分の体と心を安定させて瞑想できる自分の状態に持っていくために、体を動かすポーズがあります。自分の身体を通して自分を体験していくためのツールがポーズです。
体と心が浄化されクリアになりますが、それが瞑想の土台になります。
『
ヨガ=いろんなポーズをとるもの』と思われ『体が硬いから無理』という声をよく聞きますが、上手にかっこよくポーズをとることが目的ではなく、ポーズと共に呼吸をし、その呼吸を安定させていくことで、自分の体とマインドが安定していく。集中と安定を養うことがポーズを行う上で大切なのです。百聞は一見に如かず、ぜひご自身で体験して頂きたいです。」
ヨガとはなにか
「『ヨガって何?』と友人にもよく聞かれますが、一言では言えません。ヨガのポーズ1つとっても恩恵がたくさんあり、その先に自分の心と体の安定があります。思考はシンプルになり、より深く自分を知ることができます。終わりなく続く人生を確実により豊かにしてくれるものだと思っています。
そうはいってもまずは体のポーズをとるところから始まります。だけどやっぱり、『体が硬い』は重要ではないのです。少しでもヨガが気になるのであれば、自分が、いいな、と思う先生を探して、実際にクラスを受けてみるといいと思います。」
しかし、「やりたくない」人に無理やり勧めたりはしない、と菊池さん。
「やりたくない人は、無理にやらなくていいと思います。ヨガじゃなくても、楽しくて夢中になれるものならなんでもいいと思います。
私はアシュタンガヨガの楽しさを100%知っています。だから『やったらいいよ!』と心から思います。でも最初の扉を開くかどうかは本人の意志でしかありません。友人にも、自分から無理に勧めることはしません。
『興味がある』と言ってくれた人には全力で良さをアピールして、『こうしたらいい、ああしたらいい』『ここに行くといい』とあらゆるアドバイスをします。でも、こちらからの押し付けはしません。」
「無理に押し付けられたり、やらされたことってあまり続かないですよね(笑)」。だけど、『やりたいな。やってみたいな。楽しそうだな。』という気持ちが心のどこかにあるのにやらないのは本当にもったいないので、自分の中の『やりたい』という気持ちをどうか大切にしてほしいですね。」
これからのヨガレッスン、オンラインヨガレッスン
「オンラインのヨガは新型コロナウイルスの影響で急速に利用者が増えていると思います。このような状況がいつまで続くのか、私には全くわかりませんが、コロナが落ち着いて、生活がスムーズになるときがまたやってきてもオンラインヨガは一つの選択肢として確立していく気がします。
スタジオで行うヨガとオンラインでのヨガ。その人のライフスタイルや志向に合わせて選ぶ時代になったのかなと。最初は探り探りだったオンラインヨガも、双方が慣れ、生徒さんも楽しそうに取り組んでいらっしゃいます。」
「コロナは早く収まってほしいけど、このきっかけがあったからこそ繋がれた生徒さんが画面の向こうにいるのは嬉しいですね。」
とはいえ、菊池さんは「同じ空間でヨガを教えることは何にも代えがたい」と言う。
「ヨガに限らず、何かを学ぶとき、先生が見てくれた方が集中できますよね?自主的に何かに集中して取り組むのは意外と難しかったりします。
特にヨガは自分と向き合う時間なので、画面越しであっても先生が見守り、言葉で伝えてくれる、その力は大きい。だからリアルタイムで繋げて行うオンラインヨガは、ポジティブな意味があると思います。
自分でも、こんな風にオンラインでヨガレッスンをすることになるとは思っていませんでした。やったらやれちゃうんだな、という気持ちですし、今ではオンラインだからこそ繋がれた生徒さんに画面越しに会うのがとても楽しみになっています。」
「インドにいるときに、友人にスカイプレッスンをしていた」と話す菊池さん。日本の友人とSkypeで繋ぎながら、ご自身はインドの青空の下でヨガレッスンをしたそう。数年前にすでに、オンラインヨガレッスンデビューを果たしていたんですね。
最後に
菊池さんはオンラインでも通る聞き取りやすい声で、しかしうるさくなく、わかりやすい指導でオンラインヨガレッスンを提供してくださいました。参加者は10名以上、ヨガ未経験者も上級者も混ざる中、「運動不足を解消できる、気持ちよく汗をかけるヨガ」を体験することができました。
Zehitomoでは、オンラインヨガレッスンを探したい人、素敵なヨガの先生を探したい人、オンラインヨガレッスンを提供したいヨガインストラクターの人が利用できるサービスを提供しています。ぜひとも、利用してみてくださいね。
菊池奈奈絵さん
辻堂のヨガスタジオ、udaya yoga studioや渋谷のTOKYOYOGAでアシュタンガヨガのレギュラークラスを担当。タリック・ターミ主催のマイソール東京にてメインアシスタントとして指導の経験を積んでいる。アシュタンガヨガは渡印5回を数え、正式継承者であるシャラート師の下で研鑽を積んでいます。
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