同じ敷地内に離れを増築する場合は、設備・面積・高さ・建ぺい率といった条件を満たす必要があります。地域によっては法規制が設けられている場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
本記事では、離れを増築する際の条件や費用相場を詳しく解説します。知っておきたい法規制や増築手順なども解説するので、離れの増築リフォームを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
そもそも「離れ」とは
離れとは、一定の敷地内において母屋から独立して建てられた別棟の建物を指します。母屋とは物理的に離れているので、家族それぞれのプライベート空間として使えるのが魅力です。
近年ではライフスタイルの変化によって離れを増築するケースも増えており、書斎や子供部屋など多用途に活用できます。母屋と異なる雰囲気や設計を取り入れれば、住宅全体に変化を与えられるでしょう。
しかし離れの増築には、注意すべき法的規制があります。同じ敷地に住宅を2つ建てることはできないため、増築を検討する際は法規制や建築基準を十分に理解しておくことが大切です。
離れを増築できる5つの条件
離れを増築する際は、建築基準法や都市計画法といった法規制を守る必要があります。住居のスペースや面積によっては離れを増築できない可能性もあるので注意が必要です。
ここでは離れを増築できる5つの条件を解説します。トラブルを防ぐためにも、自治体のルールを守って増築計画を立てましょう。
住居用の離れではないこと(風呂・キッチン・トイレの水回り設備が全て揃っていないこと)
大前提として、増築する離れは住居としての機能が欠けていなければなりません。建築基準法では、ひとつの敷地にはひとつの建築物しか建てられないと定められています。
そのため、離れの増築は「住宅としての機能が不十分で、母屋がなければ生活が成り立たない建物」であることが必須条件です。
風呂・キッチン・トイレの「水回り3点セット」が揃っている場合は完全な独立住宅として判断されるので、住まいに離れを増築する際はどれかひとつが欠けた設計にしましょう。
ただし住宅と離れの線引きは明確に決められていないため、自治体によっては離れの定義に違いがある場合もあります。
キッチンとトイレが備わっているだけで住居と判断されてしまうケースもあるので、事前にお住まいの地域の条件をチェックしておくことが大切です。
建ぺい率と容積率の基準を満たしていること
建築物を建てる敷地には、建ぺい率と容積率という制限値が定められています。建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合のことで、容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合のことです。
それぞれ地域の都市計画に基づいて定められており、離れを増築する際は建ぺい率・容積率が基準値以内かどうか確認する必要があります。
以下の計算式で求められるので、母屋と離れの建築面積・延べ床面積を合計してチェックしてみましょう。
- 建ぺい率=建築面積÷敷地面積×100
- 容積率=延床面積÷敷地面積×100
たとえば、建ぺい率が60%の地域で敷地面積が200平方メートルの場合、建築可能な建物の水平投影面積は最大で120平方メートルとなります。
離れを増築する際は、既存の建物と合わせてこの制限を超えないようにしなければなりません。
数値を超えている場合は増築できないため、設計や工事の前に必ずチェックしておきましょう。
住宅の面積の制限を超えないこと
各敷地には建てられる住宅の面積に制限が設けられているため、離れを増築する際は面積の上限を超えないよう注意しましょう。
面積制限は地域や用途地域によって異なりますが、法律によると最低限度の上限は200平方メートルとなっています。
離れを増築するとその分面積が増えることになるので、母屋が制限ギリギリの場合は増築できない可能性が高いです。特に第一種または第二種低層住居専用地域では面積の制限が厳しいため、事前の確認が欠かせません。
また、制限を超えると建築確認申請が通らない恐れもあるため、慎重に計画するようにしてください。
建物の高さなど斜線制限を守ること
建物の建築には、建物の高さや道路からの距離にも制限が設けられています。斜線制限と呼ばれており、道路斜線・隣地斜線・北側斜線の3つの規制をクリアしているかの確認が必要です。
- 道路斜線制限:前面道路の反対側の境界線から一定距離以下にする規制
- 隣地斜線制限:隣の敷地に建つ建物の通風・採光の確保を目的とした規制
- 北側斜線制限:陽当たりの確保を目的に、建造物の高さを制限する規制
たとえば道路斜線制限では、幅員12メートル未満の道路に面する場合、道路境界線から1.25の勾配で引かれる斜線を超えてはいけません。
また隣地斜線制限では、隣地境界線から20メートルまでの範囲で、1.25の勾配で引かれる斜線を超えないようにする必要があります。
斜線の角度は用途地域や自治体によって異なるため、住まいのある自治体の都市計画課などに確認しておくのがポイントです。
離れを平屋にする場合は問題ないケースが多いですが、2階建てにする場合は特に入念にチェックしておきましょう。
防火地域・準防火地域の規制を守ること
火災の危険性が高い都市部には防火地域・準防火地域があり、延焼防止を目的に建築物の構造や材料に関する規制が設けられています。離れを増築する際は、これらの地域指定を確認し、適切な防火対策を講じるようにしましょう。
たとえば防火地域では、原則として全ての建築物を耐火建築物にすることが求められます。一方準防火地域では、建築物の規模や用途に応じて、耐火建築物または準耐火建築物にしなければいけません。
また木造の離れを増築する場合は、外壁や軒裏を防火構造とし、屋根を不燃材料で葺く必要があります。
開口部に防火設備の設置が必要な可能性もあるので、建物の安全性を高めるためにも必ず自治体の建築指導課に指導を仰ぐようにしてください。
離れを増築する際の注意点
離れの増築は、間取りを変更せずに居住スペースを増やせるのがメリットですが、いくつか注意したいポイントがあります。
- 建築確認申請を行う
- 工事完了後に建物表題変更登記を行う
- 固定資産税がかかる
法的手続きが複雑なので、事前に以下で確認しておきましょう。
建築確認申請を行う
離れの増築には、建築確認申請が必要な場合があります。具体的に確認申請が必要となるのは、以下の項目に該当している離れです。
- 10㎡以上の増築建造物
- 所在地が防火地域・準防火地域に指定されている
申請には、増築する離れの敷地図などの設計図面が必要になるため、施工業者や建築士に依頼するのが一般的です。建築士は法律や手続きに精通しているので、申請もスムーズに進められるでしょう。
提出後は建築基準法に基づく審査が行われ、承認が下りたら工事を開始できます。
また、確認申請書の提出先や手数料は自治体によって異なるので注意が必要です。審査には約1ヶ月程度の時間がかかるため、余裕をもったスケジュールを組みましょう。
工事完了後に建物表題変更登記を行う
敷地内に離れを増築することで登記の記載事項に変更がある場合、規模に関わらず建物表題変更登記の申請が必要です。離れの増築工事が完了したら、1ヵ月以内に増築登記を行いましょう。
登記申請は自分でも可能ですが、必要書類を揃えるのには手間がかかります。また、法務局に出向かなければならないのも負担になるでしょう。
そのため、増築登記申請は土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。依頼する場合は10万円程度の費用がかかるため、予算に含めておくことをおすすめします。
固定資産税がかかる
離れを増築すると延べ床面積が増えるため、新たに固定資産税が課税されます。固定資産税とは、土地や建物など固定資産の所有者に対して課される地方税です。
固定資産税の税率は1.4%で、課税標準額に税率を乗ずることで納税額を計算できます。たとえば増築した離れの床面積が10平米で、課税標準額が70万円と仮定すると、年間の固定資産税は9,800円(70万円×1.4%)です。
固定資産税は毎年課税され、増築後最初の固定資産税は工事完了の翌年から課税されます。
自治体によっては、バリアフリー改修や省エネ改修を行った場合に一定期間固定資産税が減額される特例措置もあるので、税金を節約したい場合は事前に問い合わせてみましょう。
渡り廊下をつくる場合も法規制に注意
離れと母屋をつなぐ渡り廊下を設置する場合も、法規制に注意が必要です。屋根や壁で囲んだ渡り廊下は建築基準法上、増築として扱われるため、建ぺい率や容積率の計算に含まれます。
面積の制限を受けることになるので、母屋と離れの合計面積を計算しておきましょう。
また地域によっては、渡り廊下の構造や防火性能についても規制が設けられている場合があります。離れの増築と同様に、建築材や防火設備にも気を配ることが大切です。
基本的に、壁や屋根がない簡易的な渡り廊下をつくる場合は、ウッドデッキやテラスと同様の扱いになるため法的な規制を過度に心配する必要はありません。
施工内容によっては「渡り廊下によって既存の建物が増築された」という認識になる場合もあります。
離れ増築の手順
離れの増築は、以下のような手順で進めるのがおすすめです。
- 増築の可否を自治体に確認する:敷地内に要望通りの離れを施工できるのか、自治体へ確認する
- 信頼できる業者を探す:施工経験が豊富な優良業者を絞り込み、無料見積もりを依頼する。金額や施工内容など複数の業者の見積もりを比較検討するのがポイント
- 建築確認申請を提出する:業者に建築確認申請をお願いする
- 契約・着工:業者と契約したのち、離れの工事に着工する。施工期間はおよそ1〜2ヶ月が目安
- 増築登記をする:施工が完了したら、1ヵ月以内に増築登記を行う
トラブルを防ぐためにも、まずは離れを敷地に建てられるか確認するところからはじめましょう。書類の申請や条件の確認など事前準備がかかるので、業者と相談しながら進めるのがおすすめです。
なお離れは、従来の生活空間を壊さずに増築できます。普段の暮らしへの影響は少ないですが、近隣の住民への挨拶は済ませておくようにしてください。
離れ増築で住宅を建てる場合は?
離れの増築で住宅を建てる場合は、土地を分割または分筆で分ける必要があります。土地を分けて各敷地にそれぞれ住宅を建てることになるので、法規制上の問題も回避できるでしょう。
ここでは離れの増築で住宅を建てる方法のほか、分割と分筆それぞれのメリット・デメリットを解説します。
土地を分割または分筆で分ける
離れの増築によって住宅を建てるなら、土地を分ける手続きが必要です。土地の分け方には「分割」と「分筆」という方法があり、それぞれ以下のような特徴があります。
- 分割:建築基準法に基づき、図面上で敷地を分ける
- 分筆:登記上でも敷地を分け、各敷地に所有者を登記する
「土地を分ける」という意味ではどちらも同じですが、登記簿上の変更を行うか否かが大きな違いになります。
土地を分ければ、水回り設備をそろえた住宅を追加して建てられるのが魅力です。それぞれ分けた敷地が法的条件を満たす必要はありますが、二世帯住宅をつくりたいときにもぴったりでしょう。
分割と分筆のメリット・デメリット
土地を分ける方法には「分割」と「分筆」がありますが、それぞれメリット・デメリットが異なります。以下の表にまとめたので、事前に確認してみましょう。
分割 | 分筆 | |
メリット | ・手軽に敷地を分けられる ・登記費用がかからない | ・住宅以外の建設も可能になる ・分筆した土地も売却できる |
デメリット | ・分割した土地は売却できない ・住宅ローンを借りる際の担保は、分割前の土地全体になる | ・登記手続きが不要で費用もかからない ・境界確定に時間がかかる場合がある |
敷地分割ではひとつの土地を机上で分けることになるので、比較的手軽に分けられるのがメリットです。登記費用や登録免許税も不要なため、コストを抑えて住宅を建てられます。
ただし登記上はひとつの土地として扱われるので、分割した土地の売却はできません。
将来的に長く住み続ける場合は良いですが、生活環境が変化したら引っ越しを検討したいという場合は最初から分筆で敷地を分けるのがおすすめです。
一方で敷地分筆は登記上で土地を分けるので、各土地に所有者を登録することになります。分けた土地には商店や社務所といった住居以外も建設でき、建物は売却が可能です。
しかし分筆には登記手続きが必要になり、登記は土地家屋調査士に依頼しなければいけません。費用がかかるだけでなく、隣地との境界確認に時間がかかるのもデメリットでしょう。
都市計画によっては土地の分け方が決められている場合もあるので、事前に自治体に確認しておくことが大切です。
離れ増築にかかる費用相場
離れの増築にかかる費用は、建築工法や施工面積によって異なります。施工面積が狭いほど1坪当たりの単価が高くなるので注意が必要です。
木造・鉄骨(鉄筋)・プレハブ造の3つの建築工法別に費用相場をまとめたので、以下で確認してみましょう。
木造 | 鉄骨(鉄筋) | プレハブ造 | |
坪単価 | 約70万円~ | 約100万円~ | 約50万円~ |
6畳(約3.3坪) | 約200万円~300万円 | 約300万円~500万円 | 約150万円~250万円 |
10畳(約5.5坪) | 約270万円~500万円 | 約450万円~650万円 | 約250万円~330万円 |
15畳(約8.3坪) | 約450万円~700万円 | 約600万円~900万円 | 約300万円~500万円 |
20畳(約11坪) | 約600万円~900万円 | 約800万円~1,100万円 | 約450万円~660万円 |
もっとも安価なのは工事工程が少ないプレハブ造で、鉄骨は丈夫な分材料費が高いため総額も高くなります。建築材料やグレードによっても費用が高額になるので注意しましょう。
なお、屋根や壁を設けた渡り廊下をつくる費用も、離れと同じ坪単価の場合が多いです。費用を安くしたいなら、複数の業者からさまざまな施工パターンで見積もりをとっておくことをおすすめします。
またキッチン・洗面所・トイレ・浴室といった水回り設備も揃えて住宅にする場合は、以下の費用相場が目安です。
水回り設備 | 費用相場 |
キッチン | 約50万円~100万円 |
洗面所 | 約10万円~50万円 |
トイレ | 約15万円~70万円 |
浴室 | 約50万円~150万円 |
離れにつくる水回り設備をミニサイズにすれば、費用を安く抑えられます。ただし建築確認申請や登記などの法的手続きに費用がかかることもあるので、予算と採算がとれているか確認しましょう。
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今回の記事では、離れを増築する際の条件や手順、知っておきたい法規制について紹介しました。離れの増築には住宅の面積や高さなどさまざまな条件があるので、事前に調べておくことが大切です。
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