『大人の趣味』と検索窓に入れて、次にやる習い事を探す人も多いのだとか。
そんな中、秘かに人気なのが水墨画です。
水墨画は意外に簡単で手軽!楽しすぎる大人の趣味
水墨画は難しそうに見えて、実はとっても手軽なんです。材料は100均でそろうし、絵心がなくてもなんとなく描けます。
しかも、墨をする時間は『癒やしの時』だし、筆を握るとまるで『マインドフルネス』の世界! 無心でただ集中できるのです。
やってると無心になれる水墨画は、その昔『禅』の修行にも取り入れられていたそうです。
この不思議な魅力を持つ水墨画について、国内外の展覧会で数々の受賞歴があり、自由が丘のおしゃれなサロンで水墨画を教えてくださっている辻 鵬水先生に、水墨画の面白さについて取材してきました。
水墨画や絵画に興味がある人だけでなく、何かいい趣味ないかな〜と探している人や、将来お仕事につながる習い事を探している方、サロネーゼになりたい方もぜひご一読ください。
国内外の展覧会で賞を受賞。辻 鵬水さんに水墨画のこと聞いてみた!
Zehitomo
「辻 鵬水先生は、水墨画の部門で文部科学大臣賞、東京都知事賞、朝日新聞社賞を始め、国内外で沢山の賞を受賞されています。
また、三井不動産CM 「わたしのニホンバシ」編や、AbemaTV 全力部活E高 水墨画で年賀状指導といったメディア出演もされていて、ご活躍されています。まずは、辻先生ご自身について聞かせてください。
水墨画を始めたのはどんなきっかけですか?」
辻 鵬水さん
「水墨画を始める前、私は、こども新聞・知育関連の付録作成、手芸本の編集、挿し絵、販促物のデザインをしてきました。
主にデザイン関係の仕事をしてたんですが、ひとたび筆を持ったらたちまち水墨画の虜になりました!
マニアック好きで、人が注目していない事に目を向けがちな私は、こんな楽しい事は誰にもバレないようにひっそり続けたいと、ずーっと思っていました。」
こんな楽しい事(水墨画)はひっそりやり続けたかったんです
Zehitomo
「水墨画は、ひっそりと続けたかったんですか?(笑)」
辻 鵬水さん
「そうなんです(笑)
でも実際、水墨画団体は高齢化に伴い次々と消滅の危機に瀕しています。」
Zehitomo
「確かに、水墨画は若い人がやっているイメージがないですよね!」
辻 鵬水さん
「こんな面白いものがこのまま廃れて行くのは忍びないと思ったんです。
そこで師範資格を取得して、現在は子育ての傍ら水墨画の普及活動をしています。」
Zehitomo
「編集部もこちらの記事で体験した時に、水墨画の面白さ、奥深さ、ヨガや禅、マインドフルネスにも通じる『集中』に驚いたんです。」
辻 鵬水さん
「本当に、手軽なのに面白い『水墨画』というアートが下火になるのは時代の損失だと思うくらいです(笑)」
水墨画でサロネーゼに! 西洋画とは全く違う世界
Zehitomo
「サロネーゼ(お家でお教室をする)に憧れる人が多い中、師範資格には魅力を感じる人が多いと思います。辻先生は元々絵を描くのが好きだったんですか?」
辻 鵬水さん
「いえいえ(笑)元々絵を描く事が好きだったかと言われると、そこまで好きではありませんでした。
どちらかと言うと立体的な物を作り出す事が好きです。日頃から娘の洋服やちょっとした家具のDIYなど、0から素材選びをして、デザインにこだわって作ったりしてます。
その中でも、一番好きなのは陶芸でした。たまたま陶芸に携わるお仕事をさせて頂いた時期に、絵付けの先生が水墨画のお話をされたんです。その時は何も思わなかったんですが、そこから随分たったある日、水墨画の夢を見ました。」
夢を見たのが水墨画を始めるきっかけです
Zehitomo
「どんな『夢』ですか?」
辻 鵬水さん
「轟々と勢いよく流れる滝と、飛沫がかかるのではないかと言うくらいリアルな水墨画の夢です。
その墨で描かれた滝が衝撃的なかっこよさで、まわりのゴツゴツした岩の景色や背景も墨一色で、完全に静止画でしたが、そこに滝の絵だけが動いていました。
あまりに印象深い夢だったので、何かの啓示かと思い、起きてそのまま水墨画教室を探していました。」
国際水墨画会の講師資格を取得できるコースをみつけた
辻 鵬水さん
「私が門を叩いたのは渋谷にお教室がある国際墨画会と言う協会で、たまたまそちらで講師資格を取得できるコースがありましたので迷わず選択しました。
私は学生の頃の絵画の制作では、下書きまでは順調に行くのに、いつも色塗りで失敗するタイプだったのです。
だから逆にこの白黒の世界には向いていたのかもしれません。
墨の奥深さを味わい、墨を知れば知るほどその魅力に取り憑かれて行きました。
まだまだ学びたい学ばなくてはならない事がたくさんあります。」
水墨画は難しそうに見えますが初心者でも大丈夫ですか?
Zehitomo
「水墨画は難しそうに見えますが初心者でも大丈夫ですか?」
辻 鵬水さん
「描く画題によって難易度のレベルが違って来ますが、絵になじみがない、はっきり言って絵に自信がない方にこそチャレンジして頂きたいのが水墨画です!
水墨画は絵の基礎など何も持ち合わせていなくても初めてでも楽しく描く事が可能です。」
やってみたら、めちゃくちゃ楽しい水墨画
Zehitomo
「編集部員が水墨画体験でも感じたように、絵心がなくても水墨画を描くのが楽しすぎたので驚きました。」
辻 鵬水さん
そうなんです。小・中・高と私達が主に学んで来た洋画の知識はことごとく覆されてしまいますよね。
水墨画は老若男女、誰でも絵の知識ゼロからスタートできる芸術なんです!
水墨画の道具は4つだけ。手軽すぎるのだった
Zehitomo
水墨画の道具は高価なものが必要ですか?
辻 鵬水さん
いわゆる文房四宝と言われる「筆、墨、硯、紙」が水墨画に必要な道具になりますが、その4つだけあれば描ける非常に手軽なアートです。
Zehitomo
筆と墨と硯と紙は本当に身近で100均でも売ってますよね。
辻 鵬水さん
「そうなんです。
100均でも手に入るから、思い立ったらすぐ始められます。
とはいっても、安い道具でも充分水墨画らしい絵には仕上がりますが、やはり最初が肝心な部分もあります。
墨も筆も決して高価なものが良いとは限りませんが、100均の筆はに毛が抜けやすかったり弾力がなかったりするので、水墨画の良さを感じのには、やはり1,000円程度の筆を目安にするといいと思います。」
Zehitomo
100均ほどではなくても、筆の1000円だと、やはり普通のお稽古ごとの道具としては手軽なお値段だと思います。
辻 鵬水さん
初心者だからこそ道具に頼ってみると言う考えもあります。最初にお手本通りうまく描けると気持ちも上がるものです。
紙も練習用であればそれほど高い物は必要ありません。運筆の練習などはたくさんしますから、50枚〜100枚入りの画仙紙が最適です。
水墨画がうまくなるまでの期間はどのくらい?
Zehitomo
水墨画がお道具が手軽で、やってみると初心者でも楽しく奥深いのはわかりましたが、それなりに、うまくなるまでどのくらいの期間が必要ですか?
辻 鵬水さん
私の場合は月一回のお稽古、年1回の展覧会に出展し、人の目にふれる度に、3年目くらいから少しずつ上達している感覚が得られました。
うまくなったなと言う感覚ではなく、ようやく自分の表現したいように技術が追いついて来たのかなと言う感じです。
描きはじめの頃は頭の中ではものすごい想像で絵が仕上がっているのに、実際紙には頭の中で描いた絵が反映できていない、なかなか腕が追いつかずに中途半端な仕上がりのまま展覧会に出したりしていました。
Zehitomo
『自分の表現したいように技術が追いついてきた』という事象は、なんだか憧れます。カッコイイのでZehitomo編集部員も言ってみたいです!(笑)
辻 鵬水さん
「水墨画を始めた頃は、結構コテコテした絵を描いていたような気がします。でも、やはり本来の日本の水墨画は余白を意識したものなので、究極に無駄を省いた美を追求すると、描くものが少ない分、白と黒のバランスをどう表現するかは、それはそれで構図などに大変苦労するのです。」
うまく描こうと言う欲は、自分をよく見せようとすること
辻 鵬水さん
「うまく描こうと言う欲は、自分をよく見せようとすること。
描き足すことで自己表現しようとすると、結局は余白を塗り潰すだけでなく、人間性や品格を欠いてしまう事になりかねないんです。
余白がある事で墨が生きて来る、そう言った精神性のある部分もとても興味深く、実は今の私の課題はいかに上手く描かないかと言うところにあります。
上手く描こうとせず自分らしさ、個性を意識した方が洒脱な作品に仕上がります。」
江戸の有名な絵師たちもゆるカワ下手ウマをやってた
これまで有名な江戸の絵師達も「ゆるカワ、へたウマ」な動物を描いています。
こういう作品限定の展示が組まれたり、現代は水墨画=山水画的な表現だけでなく、若者達の目を惹くようなユニークな作品もたくさん描かれて来ました。
水墨画の魅力は余白。それは日本の文化です
Zehitomo
「水墨画は何が一番の魅力ですか?」
辻 鵬水さん
「なんと言っても「余白」ではないでしょうか。
「余白の美」などと言いますが、日本人独自の情感を織り込んだスタイルは立派な日本の文化です。
余白と言うのはただ単に何も描いていない部分ではなく、墨の点と線と面、濃淡にじみかすれで表現された絵に構成され、計算され尽くした構図の一部です。
水墨画は禅僧の間では修行の一貫として描かれていたそうです。
我欲や煩悩をどこまで払拭できるか、その自分の修行の状況をかたちにでき、目にする事ができた唯一のツールだったのではないでしょうか。
ストレス社会を生きる皆さんには水墨画で坐禅を組んでいるような、精神統一と感覚を研ぎ澄ませるための時間を是非味わってみて頂きたいです。」
Zehitomo
「以前こちらの記事で、水墨画レッスンの体験をさせていただきましたが、本当に筆を握っている時は、『集中と無』の不思議な感覚なんです。
マインドフルネスを自然にやってるというか、ヨガのレッスンの最後のお休みの時間に無意識に寝てしまったりとか、そういう無なんですが、感覚が研ぎ澄まされるという・・・。
本当に水墨画の世界は魅力的です。」
サロネーゼが人気ですが、 水墨画がうまくなると、人に教えることもできるのでしょうか?
辻 鵬水さん
「私も絵に関して専門的な知識があるわけでもないのに、資格を取って絵の先生になれるの?と疑問でした。
でも、筆の使い方、墨や水の含ませ方を一から習い、師匠の言う通りに筆を動かすと何となく初めてでもそのカタチになるし、水墨画が描けたのでたちまち面白くなってしまいました。
ただ人に教えるとなると、自分では描けても、それまでの経験で得た感覚を言葉でお伝えするのがなかなか難しく、微妙な筆の持ち方、運筆、調墨の仕方を感覚ではなく、わかりやすく教えられるよう日々おさらいしています。
お稽古では、講師資格を取得できるコースもありますので、何か資格をと考えていらっしゃる方は是非ご検討下さい。」
辻先生のプロフィール
国内外のコンクールで入賞歴がある水墨画のプロ。自由が丘に水墨画のサロンを開いている現在子育て中のママ。お嬢さんの洋服や、小さな家具のDIYなど、ものを作るのが好きという、日々の生活からアートなステキな先生です。
辻 鵬水先生経歴・資格・・・ 国際墨画会所属 師範資格取得 【受賞歴】 文部科学大臣賞 東京都知事賞 朝日新聞社賞 フジサンケイビジネスアイ賞 国際墨画会準大賞 【メディア出演】 三井不動産CM 「わたしのニホンバシ」編 AbemaTV 全力部活E高 水墨画で年賀状指導 【活動】 国際墨画会 渋谷直営教室 講師5年担当 自由が丘認定教室 講師7年目 カルチャー&フィットネス マナビバにて指導 高齢者施設にてレクリエーション 上野松坂屋、赤坂アークヒルズ、日本伝統文化会館などの和文化催事にてワークショップ開催 2009年〜国際墨画会展 毎年出品 2011年フランス パリ4区美術館 「紙と墨 多様性のアジア」出品 2013年エストニアタリン市 アダムソン・エリック「日本の墨絵展」出品 2017年 京都清水寺「古と優艶の書画展」出品 2021年 国立新美術館「雪舟展」出品
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