オーケストラとは、弦楽器・管楽器・打楽器・鍵盤楽器など複数の楽器で構成される楽団のことです。管弦楽団・交響楽団・フィルハーモニーと呼ばれることもあり、楽器ごとのセクションがハーモニーを作り上げるように音楽を演奏します。
本記事では、オーケストラの歴史や演奏される楽器の種類などを詳しく解説します。日本で有名なオーケストラ(管弦楽団)も紹介するので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
オーケストラ(管弦楽団)とは?
オーケストラとは、弦楽器・管楽器・打楽器・鍵盤楽器など複数の楽器で構成される楽団のことです。指揮者(コンダクター)が全体の演奏を統率し、楽器ごとのセクションが一体となって管弦楽曲を演奏します。
オーケストラの規模は約60人から100人前後までさまざまですが、楽器ごとに分かれたパートがハーモニーを作り上げるように演奏するのが特徴です。弦楽器が旋律を奏でる一方で、管楽器が伴奏を担うなど、各楽器の特性を活かした編曲によって壮大なサウンドを生み出します。
オーケストラの歴史
オーケストラは、18世紀半ばにヨーロッパで誕生しました。ギリシャ語で古代ギリシャの演劇場を意味する「オルケーストラ(ορχηστρα)」が由来と言われており、当時は音楽隊や合唱隊が舞台と観客席の間で劇を上演していたといいます。
やがてオーケストラは演者そのものを指すようになり、1600年代〜1750年代のバロック時代に現在のオーケストラの基礎が形成されました。バロック時代に登場した有名な作曲家としては、バッハやヴィヴァルディ、ヘンデルなどが挙げられます。
当時彼らの作品は弦楽器を中心に演奏されることが多く、弦楽合奏の補強を目的に木管楽器が加えられたそうです。その後金管楽器や打楽器も加え、現在の規模や楽器編成にオーケストラを拡大していきました。
オーケストラで演奏する曲
オーケストラで演奏される曲は多岐にわたりますが、クラシック音楽の代表的なジャンルである交響曲や協奏曲が多い傾向にあります。交響曲は複数の楽章から構成され、オーケストラ全体が一体となって演奏する大規模な楽曲です。
一方、協奏曲はソリスト(独奏者)とオーケストラが共演する形式の楽曲のことを指します。ピアノやヴァイオリンといった楽器がソロパートを担当し、オーケストラがソロパートをサポートするのが特徴です。
音楽を聴くだけで違いを把握するのは難しいですが、オーケストラらしい力強い演奏を楽しめるのが交響曲、チェロやヴァイオリンなど独奏楽器の魅力を存分に感じられるのが協奏曲と考えておくと良いでしょう。
オーケストラの編成
オーケストラは、主に弦楽器・木管楽器・金管楽器・打楽器・鍵盤楽器で構成されます。
- 弦楽器:ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスなど
- 木管楽器:フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットなど
- 金管楽器:ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバなど
- 打楽器:ティンパニ、シンバルなど
- 鍵盤楽器:ピアノ、チェンバロ、オルガンなど
主要な管楽器の本数によって各楽器の本数が決まり、主要な管楽器が2本ずつなら2菅編成、4本ずつなら4管編成となるのが特徴です。5管編成以上になると巨大編成と呼ばれ、壮大で迫力のある演奏を楽しめます。
オーケストラの編成は作曲家や楽曲によって異なるため、演奏を聴きに行く場合は編成にも着目してみるのがおすすめです。
オーケストラと吹奏楽の違い
オーケストラと吹奏楽の最大の違いは、使用される楽器の種類にあります。オーケストラは弦楽器・管楽器・打楽器・鍵盤楽器がバランスよく配置されるのに対し、吹奏楽は主に管楽器と打楽器で編成されており、コントラバス以外の弦楽器はほとんど使われません。吹奏楽の中心は木管楽器と金管楽器で、ここに打楽器を加えることで力強い音響を奏でるのが特徴です。
また、オーケストラと吹奏楽は演奏する楽曲にも違いがあります。オーケストラは主にクラシック音楽や交響曲など大規模な楽曲が多いですが、吹奏楽ではマーチやポップス、映画音楽、ジャズなど多様なジャンルの楽曲を演奏するのがポイントです。
なお吹奏楽は学校のクラブなどでも演奏されることが多いですが、オーケストラはプロフェッショナルな音楽団体による演奏がメインとなります。
オーケストラの楽器を紹介!17 + 1選
オーケストラで演奏される楽器にはさまざまな種類があり、それぞれが異なる音色を持っています。ここでは、楽器としてカウントされることがある指揮者(コンダクター)を含め、オーケストラで使われる代表的な楽器を17種類紹介します。
1.ヴァイオリン(violin)
ヴァイオリンは、オーケストラで最も多く使用される弦楽器です。旋律を担当することが多く、オーケストラでは第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンに分かれ、それぞれ異なるパートを演奏します。
ヴァイオリンは高音域を得意とする楽器で明るく伸びやかな音を出すため、音楽のメロディラインを引き立てるのが特徴です。ソリストとして活躍するケースが多く、協奏曲やソナタでは主役を担うこともあります。
ちなみにヴァイオリンの本体にはマツやカエデ、弦は羊の腸・スチール・ナイロンなどが使われており、弓は白馬の尾が最上質と言われています。
2.ヴィオラ(viola)
ヴィオラは、ヴァイオリンよりも約10cm大きく、音が五度程度低い楽器です。音域はヴァイオリンとチェロの中間に位置し、オーケストラの中では主に中音域を担当します。
ヴィオラの音色はヴァイオリンよりも温かく深みがありますが、旋律を担当することは少ないのが特徴です。伴奏や内声としての役割が多く、他の楽器とのハーモニーを豊かにする役割があります。
またヴィオラは楽器が大きいため、体が成長しないと演奏できません。ヴァイオリン奏者と同じく、顎で楽器を挟むため演奏を続けるとあごにあざができます。
3.チェロ(cello)
チェロは、オーケストラの低音域を支える弦楽器で、弦楽器セクションの中でも大きな音量と豊かな音色を持っています。低音域から中音域まで幅広い音域をカバーし、感情的で歌うような旋律を奏でるのが特徴です。
オーケストラでは演奏に深みを与える役割を担い、ときにはソリストとして協奏曲などで主役を務めることもあります。チェロ奏者はチェリストと呼ばれ、世界的に有名な奏者もいるほど人気のある楽器です。
4.コントラバス(double bass)
コントラバスは、オーケストラの最も低い音域を担当する弦楽器です。4本の弦が張られており、深く重厚なメロディーを奏でます。
音楽全体に深みと安定感を与える役割があり、オーケストラのリズムやハーモニーの基盤を作るのに欠かせない楽器です。ソロとしての演奏機会もあり、独特の響きと力強い表現が評価されています。
コントラバスは2m近くもある大きな楽器ですが、男性だけでなく女性の奏者も多いです。低価格なコントラバスも多く、初心者でも始めやすいと言えるでしょう。
5.ハープ(harp)
ハープは弦を指で弾いて演奏する楽器で、オーケストラの中では珍しい弦楽器のひとつです。独特の響きと透明感のある音色で、美しく繊細なパートを担当します。
一般的なオーケストラ用ハープには弦が47本あり、音域が非常に広いのが特徴です。和音やアルペジオを奏でる際にその特性を発揮し、ふわりと美しい雰囲気を演出します。
6.フルート(flute)
木管楽器の一種であるフルートは、軽やかで明るい高音域をもつのが特徴です。オーケストラでは旋律を担当することが多く、クリアで透き通った音色が曲に華やかさを加えます。
柔らかく明るい音色が印象的で、特に速いパッセージや軽快な部分で目立つことが多いです。デュエットやソロパートとしても頻繁に使用され、オーケストラ全体に色彩を添えてくれます。
ちなみにフルートはプラチナや金、ニッケルシルバーなどの素材で作られており、500万円以上の高級なものもあります。
7.オーボエ(oboe)
オーボエは音程が高く、豊かで少し鼻にかかった音色が特徴です。オーケストラでは旋律や中音域の役割を担い、感情豊かな演奏を行います。
オーボエは、楽器の発音体(リード)が2枚あるダブルリードで、細い管に息を吹き込んで吹くのが特徴です。力加減や口の位置調整にコツが必要なため、最も難しい木管楽器と言われています。
哀愁帯びた音色を奏でるのが得意で、ソロパートや対話的なパートに使用されることも多いです。
8.クラリネット(clarinet)
クラリネットは、オーボエと同じく黒い見た目をした木製の縦笛です。木管楽器の中で最も音域が広い楽器で、低音から高音までの幅広い音域をカバーします。
オーケストラでは旋律を担当することもあれば、ハーモニーやリズムの補助を行うこともあり、柔らかさ・暖かさ・力強さなど音楽にさまざまなニュアンスを加えることが可能です。ソロを担当することもあり、クラリネットから派生したアルトクラリネットやバスクラリネットなどの楽器もあります。
9.ファゴット(basson)
ファゴットは、オーボエと同じくダブルリードの楽器です。木管楽器の中で最も低い音域を担当し、低音部のサポートやハーモニーの中で重要な役割を果たします。
ファゴットの音色は、重厚で少し鼻にかかった響きがあるのが特徴です。重さも長さもある楽器ですが肩にかけるベルトで支えるので、立ったり歩いたりしながら演奏できます。
10.サックス(saxophone)
サックスは、金管楽器と木管楽器の中間に位置する楽器です。ジャズで演奏されることが多いですが、オーケストラで使用されることもあります。
サックスは、他の木管楽器と異なる独自の響きを持っているため、吹奏楽やポップスオーケストラでの使用が一般的です。なおサックスの中には、アルトサクソフォーン・テノールサクソフォーン・バリトンサクソフォーンなどもあります。
11.ホルン(horn)
ホルンは金管楽器の中でも特に柔らかく、豊かな音色を持つ楽器です。特徴的な円形の形状と長い管を持ち、音域は中低音にわたります。
ホルンはメインではない旋律を奏でることの多い楽器ですが、オーケストラにも吹奏楽にも欠かせない楽器です。オーケストラでは和音のハーモニーを作り出す役割を担い、メロディーラインの補完を行います。
またホルンは、全長約4mもの管に息を吹き込んで演奏するため音色の調整が難しく、高度な技術を要するのも特徴です。
12.トランペット(trumpet)
トランペットは、金管楽器の中で最も高い音域を担当する楽器で、明るく力強い音色が特徴です。リズミカルなパートやメロディーの主役を務めることが多く、シャープな音色が曲に華やかさを加えます。
トランペットの音は遠くまで響き渡り、マーチングにも欠かせない楽器のひとつです。さまざまな音楽ジャンルで使用され、演奏力はもちろん豊かな表現力が求められます。
13.トロンボーン(trombone)
トロンボーンは、スライドを用いて音程を変えることができる金管楽器です。滑らかな音の移り変わりが特徴で、オーケストラでは主に低音部のサポートやハーモニーを担当します。
楽曲によってはソロとしての見せ場があり、オーケストラの縁の下の力持ちとして欠かせない楽器です。トロンボーンの音色は力強くしっかりとした響きがあり、曲に安定感と深みを与えてくれます。
14.ユーフォ(euphonium)
ユーフォニウムはチューバに似た音色を持つ金管楽器で、主に低音域を担当します。音色には深みと温かみがあり、まろやかで角が取れた響きが特徴です。
ソロパートではその甘美でリッチな音色が評価されることが多く、中音域の金管楽器として抜群の存在感を放ちます。ブラスセクションの中で柔らかい響きを提供してくれるので、豊かなハーモニーを作り出すには欠かせないと言えるでしょう。
15.チューバ(tuba)
大きな見た目通り、全体の演奏に包み込むような柔らかな低音を効かせる金管楽器です。演奏するには肺活量
チューバは、オーケストラの中で最も低い音域を担当する金管楽器です。大きな体と太い音色が特徴で、オーケストラにおける低音部の基盤を作る重要な役割を担います。
チューバの音は非常に力強く重厚感があり、低音域を支えて全体のサウンドに深みを与えます。なお演奏するには肺活量が必要なので、がっしりした体格のほうがいい音を出しやすいです。
16.打楽器
打楽器は、オーケストラの中でリズムとアクセントを提供する楽器群です。打楽器には、ティンパニ・スネアドラム・バスドラムなどの大きな楽器から、シンバル・マラカス・木琴・鉄琴などの小さな楽器までさまざまな種類があります。
打楽器は、メロディーに特定のリズムや音色を生み出し、音楽のダイナミクスを強調したいときに効果的な楽器です。
17.鍵盤楽器
鍵盤楽器は、ピアノ・チェンバロ・シンセサイザーなど鍵盤を使って演奏する楽器です。オーケストラではピアノやチェンバロが使用されることが多く、ピアノはその豊かな音域と表現力でメロディーや和音を担当し、チェンバロは主にバロック音楽において独特の響きを提供します。
またパイプオルガンは教会で使用されることが多く、それぞれの鍵盤楽器が主役になる名曲が多数の名作曲家によって作曲されています。
18.コンダクター
コンダクター(指揮者)は、オーケストラの演奏を指揮し、全体の音楽のバランスとダイナミクスを調整する重要な役割を担います。指揮棒を用いて演奏のテンポや表現を指示し、各楽器セクションが一体となって演奏できるように導きます。
オーケストラ全体のパフォーマンスの質は指揮者の意図や指導力によって大きく左右されるため、コンダクターと奏者は音楽に対する解釈を合致させることが大切です。
日本のオーケストラ・関連組織5つ
1.公益財団法人 日本オーケストラ連盟
日本のオーケストラ団体が加盟し、加盟団体のコンサート情報などを配信する団体です。この団体自体が演奏を行うわけではありません。
2.NHK交響楽団
N響(えぬきょう)と略して呼ばれます。終戦の年である1945年よりも古い、1926年に結成されたオーケストラです。定期演奏会だけでなく、世界各国での演奏も行っています。
3.日本フィルハーモニー交響楽団
日本フィルと呼ばれる、1956年6月創立のオーケストラです。現在はコンサート・音楽を通じた子供達への働きかけ・地域活動の3本の柱で活動を行なっています。
4.読売日本交響楽団
名前の通り、読売グループが設立したオーケストラです。1962年創立と若い楽団ながら、世界各国での演奏会も行なっています。定期演奏会はサントリーホールで行なっています。
5.新日本フィルハーモニー交響楽団
JR錦糸町駅からすぐの、すみだトリニティホールを拠点にしたオーケストラです。作曲家の久石譲さんを監督に迎えたプロジェクトを推進し、コンサートなども行なっています。
オーケストラの生演奏を聴きに行こう
弦楽器・管楽器・打楽器など多彩な楽器で構成されるオーケストラ。各楽器の特性を活かした壮大なサウンドで、迫力ある演奏を楽しめるのが魅力です。
CDで聴いたりテレビで見たりと楽しみ方はさまざまですが、興味がある方はコンサートホールの生演奏に足を運んでみてはいかがでしょうか。演奏家の配列や配置も興味深く、音響効果の良いホールで聴く生演奏はライブならではの臨場感があります。
ゼヒトモで音楽レッスンのプロを探す
またオーケストラの演奏を聴いて「自分も管楽器に挑戦したい!」と感じた方は、レッスン教室に通うのもおすすめです。ゼヒトモではいくつかの質問に答えるだけで、あなたにピッタリなプロの講師を見つけられます。気になる方は、ぜひ以下のボタンから管楽器のレッスン教室を探してみてください。