クラリネットは、ただ息を吹き込んでも音が出ません。クラリネットの吹き方で大切なのは、口の形と息の使い方を調節してリードを振動させることです。 今回はクラリネット初心者の方に向けて、基礎知識から基本の吹き方、練習方法などを詳しく説明していきます。
腹式呼吸を意識しながら息を入れてリードを振動させると、クラリネットの音が綺麗に鳴ります。さらに上達させるには、ロングトーンやタンギング、音階練習といった基礎練習を積み重ねていく必要があるでしょう。
目次
- クラリネットの基本的な吹き方
- 初心者がクラリネットを吹けるようになるためのコツと練習方法
- クラリネット初心者が注意すべきポイント
- クラリネット初心者におすすめの練習曲5選
- 初心者におすすめなクラリネットの上達法
- まとめ
クラリネットの基本情報
クラリネットとは、縦長の形をした木管楽器のこと。マウスピース、バレル、上管、下管、ベルで構成されており、「グラナディラ」という黒く堅い木を使用したものが広く使われています。
「リード」と呼ばれる葦でできた薄い板をマウスピースに装着し、息を吹き込んでリードを振動させると音が出る仕組みです。木材で作られているため、気温や湿度、直射日光などには気をつけて管理しなければいけません。
音域は4オクターブと広く、管楽器の中では最も幅広い音域だと言われています。木管楽器ならではの柔らかい音色で、メロディーラインや伴奏など、様々な役割を発揮してくれる楽器です。
クラリネットが使用される音楽
持ち前の音色と音域の広さを活かし、クラリネットは幅広い音楽ジャンルで使用されてきました。クラシックをはじめ、ポップス、ジャズなど、様々なジャンルの楽曲でクラリネットは活躍しています。
見せ所として、クラリネットのソロやアンサンブルパートがある楽曲も多いでしょう。多様な楽器が登場する中でも、唯一無二の存在感を放っています。
クラリネットの4つの種類
クラリネットは大きさと音域によって大きく4種類に分類することができ、それぞれ必要とする音域で使い分けられます。それぞれの特徴を確認し、自分が演奏したいクラリネットはどの種類なのか考えてみてください。
B♭クラリネット
通称「ベークラ」と呼ばれるクラリネットで、一般にクラリネットというとB♭クラリネットのことを示します。ソロやオーケストラ、吹奏楽、ジャズなど様々なジャンルのメロディーラインで使われており、明るく豊かな響きが特徴的。クラリネットを初めて演奏する方やソロで演奏する方、幅広い楽曲に挑戦したいという方におすすめです。
E♭クラリネット
通称「エスクラ」と呼ばれ、B♭クラリネットよりも音域が高くサイズが小さいクラリネットです。音色が鋭く甲高いため、難易度が高めな楽器。曲中の印象的なフレーズを演奏することも多く、演奏に華を添えてくれます。オーケストラやバンドの中で、目立つフレーズを演奏したい方におすすめです。
アルトクラリネット
B♭クラリネットよりも音域が低く、全長も長くなったクラリネットです。B♭クラリネットやE♭クラリネットのような華やかさは物足りないかもしれませんが、美しい和音を奏でる上では欠かせません。
安定感のある落ち着いた響きで、オーケストラやバンド、アンサンブルのサウンドをより豊かにします。目立つような演奏というよりも、他の楽器と調和しながら充実したハーモニーを奏でたいという方におすすめです。
バスクラリネット
アルトクラリネットよりも更に音域が低く、重厚感のある音色が特徴のクラリネットです。厳粛な中にもどこか温かみのある音色で、ハーモニーの低音域をしっかりと支えます。サウンドに厚みを加える存在として欠かせません。
また、時には曲中のソロを担当することもあり、厚みのある音色が豊かな表情を見せてくれます。オーケストラやバンドの低音担当として、深みのある演奏がしたい方におすすめです。
(参照限情報:YAMAHA、コーポレートサイト、2022年5月16日現在時点情報。)
初心者におすすめのクラリネット
ひとえにクラリネットと言っても、種類は様々。どのクラリネットを選べばよいか迷っている方も多いのではないでしょうか。そこで、初心者におすすめのクラリネットのポイントを紹介します。
1. B♭クラリネット
クラリネットの中で最もスタンダードなのが B♭クラリネット 。息の吹き方次第で様々な音色を表現でき、メロディを奏でるときにも、他の楽器と演奏するときにも幅広く活躍します。
2.目的に合った材質
クラリネットは、主に木材かプラスチックによって作られています。それぞれに特徴があるため、自分の目的に合った材質を選ぶようにしましょう。
・木材
クラシックを演奏したい方には、木製ものがおすすめ。柔らかくて高級感のある音色が楽しめます。また、プラスチック製のものと比べて良い音を鳴らすには時間がかかりますが、練習を重ねることで様々な音色を表現することができるでしょう。
一方、デメリットとしては 木製のものは価格が高め。 また、保存環境によっては割れたり変色してしまったりすることがあるため、メンテナンスが必要になります。
・プラスチック
クラリネットを続けるかどうか分からないという方には、プラスチック製のものがおすすめ。吹きやすさに加えて、価格も比較的安いため、手が出しやすくなっています。また、環境によるダメージをあまり受けないため、メンテナンス等の手間もほとんど必要ないでしょう。
一方、デメリットとしては音に厚みが欠けるため、クラシックには適しません。また、高度な表現に対応できないこともあるため、ある程度上達したら木製のものに変えることも考えておく必要があります。
3.信頼できるメーカーから選ぶ
クラリネットを製造しているメーカーは多くあります。メーカーによって品質に差があるため、口コミや評価の高いメーカーから選ぶのがおすすめ。
・YAMAHA
「YAMAHA(ヤマハ)」のクラリネットは、音がすぐに出るためのが特徴。そのため、初心者でも比較的簡単に演奏をすることができるでしょう。これから始める方に最もおすすめのメーカーです。
・MARCATO
「MARUCATO(マルカート)」のクラリネットは、コストパフォーマンスが良いのが特徴。日本の楽器店である「下倉楽器」によって創られたブランドです。安価ですが、正確な音程を鳴らしやすく、品質も優れたクラリネットです。
・Leblanc
「Leblanc(ルブラン)」のクラリネットは、その品質の高さが特徴。日本での知名度はあまり高くないですが、300年以上もクラリネットを製造しており、世界的に非常に有名なメーカーです。息が通りやすく、音が良く鳴るため、初心者でも演奏しやすくなっています。
クラリネットの基本的な吹き方
クラリネットの音を出すには、まず口の形と息の入れ方を覚える必要があります。楽器を吹くときの口の形は「アンブシュア」と呼ばれ、マスクピースをくわえて息を入れるときは正しいアンブシュアを意識しなければいけません。マウスピースのくわえ方は以下の通りです。
- 「エ」という言葉を発音するように、口を横へ引いた状態にする
- 下の唇を内側に巻き込むようにする
- マウスピースの先端から約1cmの部分を下唇の上に乗せる
- 軽く微笑むようにして口を閉じる
口を閉じるときは、力を入れてリードを潰してしまわないように気をつけましょう。マウスピースをくわえた後は、リードが振動するポイントを探しながら息を入れていきます。なお、このとき横から空気が漏れないよう注意してください。うまくリードが振動すると音が鳴るので、何度も音を出しながら吹き方を覚えていきましょう。
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初心者がクラリネットを吹けるようになるための練習方法
以下では、クラリネット初心者が楽曲を吹けるようになるまでの練習方法について、セッティングの段階から詳しく説明していきます。
1. 本体を組み立てる
まずは接合部分のコルクに薄くグリスを塗り、バレルと上管、ベルと下管、上管と下管を組み立てます。グリスを毎回塗る必要はなく、クラリネットを購入したときや、組み立てで軋みを感じたときに塗るようにしてください。
なお、上管や下管を持つとき、キーに余計な力が加わってしまうと不具合や破損の原因となるため注意が必要です。できるだけキーの部分は握らないようにして組み立てましょう。
2. リードをつける
クラリネットの本体が完成したら、マウスピースにリードを装着しましょう。「リガチャー」と呼ばれる留め金を一度外し、リードをマウスピースの先端よりも髪の毛一本分ほど下の位置にセットします。再度ネジを締めて固定し、マウスピースを本体に取り付けるとセッティングの完了です。なお、ネジを締めすぎるとリードが振動しにくくなってしまうため気をつけましょう。
3. 音を出す
上述したクラリネットの吹き方を踏まえて、音を出してみます。最初はリードを振動させる感覚が掴みにくく、なかなか音が出ずに苦労することも珍しくありません。何度も吹き方を練習することで、音を出すコツが掴めてきます。まずは音量や音程など気にせず、音を出す感覚が掴めるようにしましょう。
4. 音の長さをコントロールする
音の出し方がわかってきたら、今度は長さがコントロールできるように練習してみましょう。まずは音をまっすぐ伸ばす「ロングトーン」の練習を行います。深く息を吸い込み、開放音である「ソ」の音で4拍分伸ばしてみましょう。
慣れてきたらどんどん拍数を長くしてみたり、他の音で練習したりするのがおすすめ。 音が伸ばせるようになったら、次は音を切る練習をします。音を切るときは、舌でリードの振動を止める「タンギング」というテクニックが必要。息の流れは止めないまま、「ティ」と発音するように舌をリードの先端へ軽くつけるのがタンギングのやり方です。
なお、舌の長さによってリードに触れる舌の位置は変わってきます。舌の先端がつけやすいか、先端より手前の方がつけやすいか、自分にとってベストな位置を探してみましょう。
5. 音階を吹く
音階とは、「ドレミファソラシド」のように音を高さ順で並べたもののこと。曲を演奏する前の段階として、この音階を吹けるように練習してみましょう。
まずは拍数を気にせず、順番にひとつひとつの音を出してみて指を慣らします。少しずつでいいので、音同士のつながりが滑らかになるよう意識してみてください。慣れてきたらメトロノームのテンポに合わせて2拍ずつ、または1拍ずつ音階を練習してみましょう。
6. 曲を演奏する
ここまでの基本的な練習を経て、いよいよ曲の練習に取り組めます。ただし、最初から曲を滑らかに吹けるわけではありません。まずは小節やフレーズごとに区切り、少しずつ吹けるよう練習していきます。 複雑なリズムや難しい音が続き、なかなかできない部分は繰り返し練習しながら克服しましょう。
小節ごとで吹けるようになってきたら少しずつ小節をつなげ、通しで吹けるように練習します。地道に思えるかもしれませんが、うまく曲を演奏できるようになるには、コツコツ練習を続けることが大切です。
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クラリネット初心者が注意すべきポイント
ここからは、クラリネット初心者が特に注意すべきポイントを紹介していきます。
アンブシュアが崩れないようにする
初心者によくあるのは、練習を続けているうちにアンブシュアが崩れてしまうこと。特に、最初のうちはマウスピースをくわえすぎたり、口の力を入れすぎたりということが起こりがちです。
しかし、正しいアンブシュアでなければ綺麗な音を出すことはできません。 アンブシュアが定着しないうちは、毎回鏡の前で確認しながら練習するのがおすすめです。変な癖がついてしまうとなかなか戻らないので、常に正しいアンブシュアを心がけるようにしましょう。
腹式呼吸を意識する
クラリネットは、ちょっとした息づかいの違いで音色が大きく変わります。呼吸がうまくできていないと、音の震えやリードミスの原因に。クラリネットを演奏するときは、腹式呼吸を使うのがポイントです。
お腹の膨らみとへこみを意識しながら練習することで、自然と腹式呼吸が使いこなせるようになるでしょう。腹式呼吸を使って演奏できると綺麗な音を出せます。息を吸うときに肩が上がっているのは胸式呼吸のため、注意してください。
噛み癖が付かないようにする
特に厚くて硬いリードを使っている場合、しっかり音を出そうとするあまりリードを噛んでしまいがちです。
ただし、リードを噛んでしまうと音色が細くなって響きが失われるほか、唇が痛くなって練習を続けにくくなってしまいます。 リードの噛み癖がつかないよう、はじめは薄いリードを使うのがおすすめ。厚いリードだとどうしても力が必要になる分噛みやすいので、まず薄いリードで練習し、力を抜いた状態の感覚を掴みましょう。唇で優しくリードを包むように吹くのがポイントです。
クラリネット初心者におすすめの練習曲5選
ここからは、クラリネット初心者におすすめの練習曲を5曲紹介していきます。
ベートーヴェン『交響曲第9番 歓喜の歌』
「喜びの歌」とも言われ、誰でも一度は耳にしたことがある壮大なオーケストラの楽曲です。四分音符の並びが多く、複雑なリズムはほとんどないため初心者の練習におすすめでしょう。中音域のメロディーが中心となっており、高音を出すのが苦手という方も比較的演奏しやすくなっています。
ドヴォルザーク『交響曲第9番 新世界より 第2楽章 家路』
温かみがありつつも、どこか切なさが感じられる曲調の楽曲です。後から日本語の歌詞をつけた『遠き山に日は落ちて』が有名で、小学校の下校時間や店舗の閉店を知らせる音楽としてよく使われています。音域が比較的狭く、全体的なテンポもゆっくりめで初心者の練習曲にはぴったりでしょう。
G.R.プールトン『オーラ・リー』
アメリカ民謡として有名な曲で、小学校や中学校における音楽の授業でもよく登場します。1オクターブ内で演奏できるため、あまり運指を覚えていない初心者でも演奏しやすいでしょう。ゆっくりとしたテンポで、心地よいメロディーが耳に残ります。
ジョン・ニュートン『アメイジング・グレイス』
イギリスの牧師によって作られた賛美歌です。ドラマや映画などのテーマ曲として使われることが多く、これまでに何度か耳にしたこともあるでしょう。全体的に落ち着いた雰囲気で、ゆったりと美しいメロディーが特徴的です。こちらも1オクターブ内で演奏できるため、まだ吹ける音階が少ないという方でも演奏しやすくなっています。
モーツァルト『きらきら星変奏曲』
誰もが一度は歌ったことがある定番の童謡です。12の変奏から構成されており、同じメロディーが繰り返し出てくるため演奏しやすいでしょう。途中で細かいリズムや高音域のメロディーが出てくるため、クラリネットに慣れてから挑戦してみるのがおすすめです。
初心者におすすめなクラリネットの上達法
最後に、クラリネット初心者が効率よく上達するための方法について紹介します。
教則本を参考に練習する
1つは、教則本を参考に独学で練習してみる方法です。初心者向けの教則本であれば、クラリネットの基礎知識から基本テクニック・応用テクニックなどがわかりやすく説明されています。
また、イラストや写真がついているため、文章だけでは理解しにくい吹き方もマスターしやすいでしょう。まずは練習のお供として、自分に合った教則本を1冊用意してみるのがおすすめです。以下でおすすめの教則本を3冊紹介しますので、教則本選びの参考にしてみてください。
初心者のクラリネット基礎教本
クラリネットの基礎知識から段階を踏んだ練習方法まで、初心者が押さえておくべき内容を網羅した教則本です。初心者がつまずきやすい運指も、わかりやすい写真とイラストで紹介されているのでスムーズに上達できるでしょう。
初心者からさらにステップアップするためのテクニックも学ぶことができ、長く練習のお供として使えます。どのような教則本にしたらいいかわからない方は、こちらの一冊を選べば間違いありません。
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- 出版社:自由現代社
- 著者:河原塚 ユウジ
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中学生・高校生のための吹奏楽教本 クラリネット
基礎的な内容から演奏における応用的なテクニックまで、学生向けにわかりやすく説明している教則本です。
難しいフレーズの吹き方もしっかり教えてもらえるため、様々な楽曲に挑戦したいという方には心強い存在となるでしょう。部活動でクラリネットを始めたという方だけでなく、趣味でクラリネットを始めたという方にもおすすめの一冊です。
- 税込価格:1,650円
- 出版社:シンコーミュージック
- 著者:齋藤 雄介
- 出版年月日:2017/10/30
パワーアップ吹奏楽! クラリネット
クラリネットの基本テクニックに加えて、より早く上達するためのエクササイズが盛り込まれた教則本です。
運指やタンギング、苦手な音の克服法など、初心者が苦戦しやすいポイントに絞ったエクササイズで、効率よくクラリネットが吹けるようになるでしょう。また、合奏で上手に演奏するためのポイントも紹介されているため、アンサンブルで演奏する方には特におすすめです。
- 税込価格:1,760円
- 出版社:ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス
- 著者:松本 健司
- 出版年月日:2016/4/21
クラリネットのプロからレッスンを受ける
もう1つは、プロのクラリネットレッスンを受けてみるという方法です。独学で練習していると間違った吹き方が定着してしまったり、一定のラインから伸び悩んだりということがあるかもしれません。より効率よくクラリネットを上達させたい方は、プロに練習を見てもらうのがおすすめでしょう。
特に個人レッスンを少しの間でも受けると、目からウロコで、ちょっとしたコツからクラリネットがうまく吹けるようになるかもしれません。
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まとめ
クラリネットは表現の幅が広く、演奏を通して様々な表情を楽しめます。また、ソロだけでなく、仲間同士でアンサンブルを楽しめるのもクラリネットの魅力でしょう。コツコツ地道な練習を続けることで、クラリネットは必ず上達します。少しずつステップアップしながら、クラリネットの演奏を楽しんでください。
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