筋トレをやっているときに、呼吸を「吸うのか」「吐くのか」どっちかわからなくなることはありませんか?一般的には力を入れるときに息を吐き、力を抜くときに息を吸うと言われていますが、 医学的に正しい学説はありません。
本記事では、筋トレ時における呼吸のポイントやトレーニング別の正しい呼吸方法について解説します。呼吸を意識することで筋トレ効果を高められるので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
1.筋トレ時の呼吸はどうすればいいの?吸う・吐くどっち?
トレーニングの効果を最大化し、安全性を高めるためには、筋トレ時の呼吸に気を配ることが重要です。正しい呼吸法を身につけることで筋肉への酸素供給が改善され、パフォーマンスの向上につながります。
- 力を入れるときに息を吐く
- 力を抜くときに息を吸う
- 呼吸のリズムを意識する
- 鼻呼吸を心がける
- 深い呼吸を心がける
筋トレ時には、以上5つのポイントを意識すると良いでしょう。ここからは、具体的な筋トレ時の呼吸方法について詳しく解説します。
筋トレ時は力を入れるときに息を吐く、力を抜くときに息を吸う
筋トレ時は力を入れるときに息を吐き、力を抜くときに息を吸うのがおすすめです。言い換えると筋肉や筋が縮むときに息を吐き、筋肉や筋が伸びるときに息を吸うことになります。
たとえば腕立て伏せの場合は、腕を下ろすときに息を吸い、下ろした腕をもとの姿勢に戻すときに息を吐きましょう。この呼吸方法を取り入れることで力が入りやすくなり、筋トレのパフォーマンス向上につながります。
ただし、この呼吸方法を医師が推奨する学術的文献などは出回っていません。多くの筋トレ愛好家や鍼灸整体院の先生などが取り入れている呼吸法ですが「この呼吸法にすべき」というわけではないので注意してください。
筋トレ時に「これをしてはいけない」のは「息を止めること」
筋トレ時の呼吸方法はさまざまですが、絶対にNGなのは「息を止めること」です。筋トレでは重いダンベルやバーベルを持ち上げたりマシンを使ったりと身体に負荷をかけるため、無意識に息を止めている人も少なくありません。
筋トレ中に息を止めると、心血管系のトラブルを引き起こす可能性があるため非常に危険です。ボディビルダーの人がバーベルを持ち上げて気を失うことがありますが、これも呼吸を止めていることが原因とされています。
高重量のバーベルを持ち上げるような動作がない場合も、バーを持ち上げる際にゆっくりと息を吐き、下ろす際に息を吸うことを意識しましょう。特に高血圧の人は、力を入れるときに息を止めないよう注意してください。
筋トレは無酸素運動
筋トレは無酸素運動に分類され、短時間で高強度の運動を行うのが特徴です。強い力が必要なときは酸素を使わずに、エネルギー源として筋肉に貯めていた糖質を使います。
筋肉をつけるのに酸素を必要としないため「力むときに息を止めてしまう」という方もいるでしょう。しかし息を止める行為は血管や体への負担が大きいため非常に危険です。息を止めないよう注意して、正しい呼吸方法で筋トレを行ってください。
有酸素運動は酸素を使い脂肪を燃やす
有酸素運動は、体内に酸素を取り込みながら弱い力を筋肉にかけ続けるのが特徴です。エネルギー源として体内の体脂肪と酸素を使い、主に脂肪燃焼に効果が期待できます。
ウォーキング・ジョギング・エアロバイクといった有酸素運動には、十分な酸素が欠かせません。呼吸によって酸素を体内に取り入れることで、長時間の運動が可能になります。
筋トレ時の呼吸はどうすればいい?
筋トレ時は「鼻から息を吸って、口から息を出す」方法を推奨する意見が多いです。呼吸方法には大きく腹式呼吸と胸式呼吸がありますが、どちらが筋トレに効果的なのか医学的観点からの検証はほとんどされていません。
腹式呼吸や胸式呼吸どちらかを取り入れる方がいる一方で、なかには腹式と胸式を交互にするという筋トレ愛好家もいます。筋トレ時の呼吸は「こうあるべき」と捉われるのではなく「息を止めてはいけない」ことを意識すると良いでしょう。
また筋トレではありませんが、ヨガでは腹式呼吸、ピラティスでは胸式呼吸を取り入れるのが一般的です。それぞれトレーナーによって推奨されている呼吸法なので、身体へプラスの影響を出すためにもぜひ意識してみてください。
【トレーニング別】筋トレ時の呼吸方法
筋トレ時の呼吸は、力を入れるときに息を吐き、力を抜くときに息を吸うのがおすすめです。しかし、いざトレーニングをする場面になると、うまく呼吸できないという方も多いのではないでしょうか。
そこでここからは、トレーニング別に具体的な呼吸方法をお伝えします。各トレーニングに適した呼吸法を習得することで効果的に筋トレできるため、ぜひ実践してみてください。
スクワット
スクワットでは、膝を曲げてしゃがむときに息を吸い、膝を伸ばして立ち上がるときに息を吐きます。
スクワットは、しゃがむ際に大臀筋や大腿四頭筋などが緩み、立ち上がる際に筋肉が緊張するのが特徴です。筋肉が緩むタイミングで鼻から息を吸って胸を膨らませ、筋肉が緊張するタイミングでゆっくり口から息を吐きましょう。
なおスクワットでは、胸式呼吸ではなく腹式呼吸が推奨されています。腹式呼吸によって腹筋に力を入れることで体幹を維持でき、インナーマッスルの強化にもつながります。
クランチ
クランチでは、上体を床から起こす際に息を吐き、姿勢を戻す際に息を吸います。上体を起こし始めると同時にゆっくり息を吐き始め、目線をおへそに向けながら強く息を吐くようにしましょう。
息を吐くのが苦しくなったら、口をすぼめながら「フーッ」と吐き、お腹にある空気をできる限り吐き切るのがポイントです。
クランチは腹直筋を鍛える筋トレなので、いつの間にか呼吸を止めてしまうことも少なくありません。元の姿勢に戻るタイミングでゆっくりと息を吸い、次の動作に備えてください。
腕立て伏せ(プッシュアップ)
腕立て伏せ(プッシュアップ)では、床に身体を下げる際に息を吸い、身体を上げる際に息を吐きましょう。身体を下げるときにゆっくりと鼻から息を吸い続け、身体を押し上げるタイミングで口から強く息を吐くのがポイントです。
腕立て伏せは、身体の姿勢を保つために力みやすくなる筋トレのひとつです。呼吸が止まりやすいので、意識して呼吸をするよう心がけてください。
ベンチプレス
ベンチプレスは、バーベルを上げる際に息を吐き、バーベルを下げる際に息を吸います。バーを上げるタイミングで息を一気に吐き切ることで体幹が安定し、少ない負担で持ち上げられるようになるでしょう。
また、バーを下ろす際に息を吸うことで胸郭が拡張し、より大きな可動域でトレーニングを行えます。次の動作で息を完全に吐き出すためにも、肺を膨らませるような感覚で息を吸い込むことが大切です。
なおベンチプレスで限界重量に挑戦する場合は、腹圧を高めるためにわざと息を止めるケースもあります。バルサルバ法と呼ばれており、息を大きく吸い込んだ後に息を止めることで腹圧を高められるのが特徴です。
より大きなパワーを出すのに効果的ですが、呼吸を止めることで血圧が急上昇し、意識を失ってしまうリスクもあります。特に高血圧の方は心筋梗塞になる可能性もあるので、あまり取り入れないほうが良いでしょう。
参考:million fitness | 筋トレに呼吸は大切
2.そもそも呼吸とは何?
呼吸は、生命を維持するために必要不可欠な動作です。体内のエネルギー生成や老廃物の排出といった役割を担い、筋トレを含むあらゆる身体活動のパフォーマンスに大きな影響を与えます。ここでは、呼吸の基本的な仕組みと特に重要な深呼吸について見ていきましょう。
呼吸とは
人間の呼吸とは、体内に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する動作のことです。全身の細胞に酸素を供給することで、代謝活動を支えています。呼吸は自律神経系によって制御されていますが、意識的にコントロールすることも可能です。
呼吸のメカニズムには、主に横隔膜と肋間筋の動きが関係しています。吸気時には横隔膜が収縮して下がり、肋間筋が収縮して胸郭を拡げることで空気が肺に流入。反対に呼気時にはこれらの筋肉が緩み、肺が収縮することで空気を排出します。特に有酸素運動中は筋肉の酸素需要が増加するため、呼吸数が自動的に増加するのが特徴です。
病院にある内科の中には呼吸器科が存在し、専門の医師が多数在籍しています。一般社団法人 日本呼吸器学会などの団体もあり、呼吸や呼吸器は重要なものとして研究・分析が進められています。
深呼吸とは
深呼吸とは、通常の呼吸よりも意識的に深く、ゆっくりと行う呼吸法のことです。身体的・精神的なリラックス効果があり、ストレス軽減や集中力向上にも有効だとされています。
筋トレの前後に深呼吸することで身体をリラックスさせ、トレーニングへの集中力を高めることが可能です。また、高強度のトレーニング後に深呼吸を行えば、心拍数の回復を早め、疲労回復を促進できます。
深呼吸に正解はありませんが、藤田医科大学 地域包括ケア中核センターでは深呼吸の手順を以下のように紹介しています。
- 楽な姿勢で座り、背筋をのばす
- 両手を下腹部にあて、口から息を吐き切る
- 鼻からゆっくりと息を吸い込み、腹部を膨らませる
- 口からゆっくり息を吐き出し、腹部をへこませる
- この動作を5回繰り返す
口から息を吐くときは、鼻から息を吸うときの2倍の時間をかけてゆっくり吐きましょう。身体の中にある老廃物やストレスなども全て出し切る感覚で、思い切り吐くのがポイントです。
深呼吸を日常的に取り入れることで全身の酸素供給が改善され、身体活動のパフォーマンス向上につながります。
参考:藤田医科大学 地域包括ケア中核センター | 心と体のリラックス法
3.呼吸法の種類は2つ
呼吸法は、大きく腹式呼吸と胸式呼吸の2種類に分類されます。それぞれ異なる特徴と効果があるので、状況に応じて使い分けることが大切です。具体的な呼吸方法やポイントを詳しく確認してみましょう。
腹式呼吸
腹式呼吸は、横隔膜を使った呼吸法のことです。効率的な酸素摂取と二酸化炭素排出を促進し、ストレス軽減や集中力向上にも効果が期待できます。
深呼吸と同じように、腹式呼吸は吸気時に腹部が膨らみ、呼気時に腹部がへこむのが特徴です。腹式呼吸は、主に以下3つの手順で行います。
- お腹をへこませるイメージで、8秒以上かけて口から息を吐く
- 息を吐き切ったら、お腹を膨らませるイメージで4秒以上かけて息を吸う
- 6秒間息を止める
腹式呼吸は交感神経を抑えて副交感神経を刺激するため、リラックスしたいときに適した呼吸と言われています。トレーニング後のクールダウン時に腹式呼吸を実践すれば、心拍数の回復を早め、疲労回復を促進できるでしょう。
日本医師会によると、腹式呼吸の回数は1日10〜20回前後が目安です。1日5回程度から始め、慣れてきたら徐々に回数を増やすことをおすすめします。
参考:一般社団法人 半田市医師会健康管理センター、独立行政法人 環境再生保全機構、日本医師会 腹式呼吸のやり方
胸式呼吸
胸式呼吸は、胸郭の筋肉を使用する呼吸法です。吸気時に胸郭が拡張し、呼気時に収縮するのが特徴で、腹式呼吸に比べて浅く速い呼吸になりやすいとされています。
胸式呼吸は短時間で多くの空気を取り込めるので、酸素需要が急速に増加する高強度の運動時に有効です。胸式呼吸を意識的に行う場合は、以下の手順を参考にしてください。
- 背筋を伸ばして座る(または立つ)
- 両手を胸の側面に置く
- 鼻から息を吸い、胸郭を拡張させる
- 口から息を吐き、胸郭を収縮させる
- この動作を繰り返し、胸郭の動きを意識する
胸式呼吸は肋骨を広げて肺に空気を送る呼吸方法ですが、血液循環・内臓の動き・精神活動が悪化すると言われています。日常的に胸式呼吸をしていると呼吸筋が疲労し、首や肩の筋肉の緊張が続くことで首や肩のコリを引き起こしてしまうので注意が必要です。
日常生活やリラックス時には腹式呼吸、高強度の運動時には胸式呼吸のように使い分けると、パフォーマンスの向上と健康増進を図れるでしょう。
4.筋トレ時に意識して呼吸を行うメリット3つ
口呼吸ではなく鼻呼吸ができるようになる
鼻
筋トレ時に呼吸を意識すると、自然と鼻呼吸ができるようになります。口呼吸はあごの発達の妨げになることで歯並びに影響を与えたり、ウイルスや花粉を体内へ入れてしまったりとデメリットの多い呼吸方法です。いびきや口臭の原因とも言われているので、できるだけ早い段階で鼻呼吸へ変更しておくことが大切です。
鼻呼吸は口呼吸よりも呼吸数が少なく、より深い呼吸を促進します。ベンチプレスやスクワットといった筋トレ時に鼻呼吸を意識することでより安定した呼吸パターンを維持し、酸素供給を最適化できるようになるでしょう。
鼻呼吸の習慣化にもつながるので、全体的な健康状態の改善に効果が期待できます。
深い呼吸をしてリラックスできる
筋トレ時に深い呼吸を意識すれば、身体的・精神的なリラックス効果が得られます。時間をかけてゆっくり呼吸することで副交感神経系を活性化し、ストレスホルモンの分泌を抑制できるのがメリットです。
たとえば高重量のデッドリフトを行う前に数回深呼吸すれば、トレーニングへの集中力を高められます。フォームの安定性が向上するので、怪我のリスク軽減にもつながるでしょう。
浅い呼吸が多く続くのは呼吸困難の症状のひとつです。パソコンなどの作業が続き猫背になると無意識に浅い呼吸が増えるので、意識して深く呼吸するようにしましょう。浅く数の多い呼吸を繰り返す場合は、呼吸器科の受診も検討してみてください。
参考:公立陶生病院
腹式呼吸でセロトニンが増える
腹式呼吸を意識的に行うことで、脳内のセロトニン分泌が促進されます。セロトニンとは、気分の安定や幸福感の向上に関与する神経伝達物質です。
別名「幸せホルモン」とも呼ばれており、精神の安定に効果があると言われています。セロトニンが分泌されると、ストレス軽減のほか免疫力向上や血圧上昇予防など、さまざまなプラスの影響を得られるのがメリットです。
トレーニングのモチベーション維持にも有効なので、筋トレ前後には意識して腹式呼吸を取り入れると良いでしょう。
筋トレと呼吸法を生活に活かそう
筋トレを実践するなら、同時に呼吸方法を見直してみることが大切です。筋トレと適切な呼吸法を日常に取り入れれば、トレーニング効果を高めるだけでなく、生活の質改善にもつながります。具体的には、以下のような場面で取り入れてみてはいかがでしょうか?
- 朝のルーティン:起床後に簡単な筋トレと深呼吸を行い、一日のスタートを活性化
- デスクワーク中の小休憩:1時間ごとに立ち上がり、簡単なストレッチと腹式呼吸を実践
- 通勤時間:歩く際に意識的に鼻呼吸を行い、姿勢を正す
- 就寝前:軽いヨガや瞑想と組み合わせた呼吸法を実践し、質の高い睡眠を促進
「効率よく筋肉をつけたい」「筋トレと食後の関係が知りたい」という方は、ぜひ以下の記事も参考にしてください。
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本記事では、筋トレ時の呼吸方法について詳しく解説しました。筋トレ中は呼吸が止まりがちですが、力を入れるときに息を吐き、力を抜くときに息を吸うのがポイントです。呼吸を意識すれば、トレーニングの効果を最大限に得ることができます。
正しい呼吸ができているかわからないという場合は、パーソナルトレーニングジムに通ってみるのもひとつの方法です。プロのトレーナーがトレーニング時のポイントを教えてくれるので、筋トレの効率アップが期待できます。
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