筋力トレーニングを続けている人、その効果を実感できている人は、トレーニングのを進める中で成長の壁を意識した経験をお持ちではないでしょうか。 その成長の壁を一つ一つクリアしていくためには、動作とそれに関わる筋肉の部位と超回復能力をより意識する必要があります。特に中級・上級の筋力トレーニングでは、そうした筋肉の性質を理解した上で体感していくことが欠かせません。
効率よく筋肉をつける筋トレとは
筋肉の性質には「引く動作を行う筋肉は体積が大きい」「押す動作を行う筋肉は体積が小さい」があります。効率よく筋肉を鍛えていくためには、「引く動作の種目」と「押す動作の種目」を上手く組み合わせることが重要です。 また、筋肥大は筋力トレーニングの順調さの大切な目安となります。筋肉トレーニングが順調に進むと心身に充実感をもたらしてくれます。 筋肉を太く強いものにするには、超回復の時間を確保することが欠かせません。筋肉に負荷が掛かると筋繊維は破壊され、そこからの回復の過程で、筋繊維はより強いものになります。これが超回復です。トレーニングと超回復のサイクルにおいて、負荷と休養の最適なバランスを探ることで筋トレはより良いものになっていきます。 知識を身に付け、実践していくことで、皆さんの筋トレ生活を充実したものにしましょう。
中級〜上級者が筋トレで意識するべきポイント3つ
1.トレーニングメニューの数え方を意識する
この記事の中で紹介していくトレーニングメニューの例は、合計のセット数を10セットと想定して組んでいます。それを目安として各種目のセット数を決めてください。効率的に筋肥大を促す適切なトレーニング量は「1セットの反復回数は6~12回程度」「一日でこなすセット数の合計は10~15セット程度」です。
2.トレーニングメニューの動作の順番を意識する
基本的に、前半は複雑な動作を中心、後半は単純な動作を中心、となるように意識してください。複合関節運動は動作が複雑で集中力も必要なので、疲労の少ないうちに正確な動作で筋肉負荷を掛けることが望ましいからです。
3.筋肉に負荷をかける順番を意識する
各メニューをこなす上で、先に大きな筋肉に負荷を掛けて、次に小さな筋肉の動作に移るという順番を意識することも大切です。大筋群(大胸筋・広背筋・僧帽筋・大腿四頭筋・ハムストリングスなど)の種目を行ってから、小筋群(前腕・上腕・三角筋・ふくらはぎ・腹筋など)という具合です。
週2日のトレーニングで筋トレの効果を出すコツは種目組み合わせ
週2日のトレーニングで偏ることなく筋肉を肥大させていくためには、種目の組み合わせにコツがあります。週のうち一回は上半身の筋肉のうち体積の小さな部分&下半身の筋肉のうち体積の大きな部分、もう一回は「上半身の筋肉のうち体積の大きな部分&下半身の筋肉のうち体積の小さな部分」という組み合わせです。この視点で種目を選べば、超回復に必要な時間を取りつつ、筋肉を肥大させることができます。
上半身の押す動作の筋肉群(大胸筋、三角筋、僧帽筋)を鍛える種目
腕立て伏せ、逆立ち伏せ、パラレル懸垂
下半身の押す動作の筋肉群(大腿四頭筋)を鍛える種目
各種スクワット
上半身の引く動作の筋肉グループ(広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋)を鍛える種目
順手懸垂、逆手懸垂、パラレル懸垂
下半身の引く動作の筋肉グループ(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)を鍛える種目
ブルガリアンスクワット、ヒップリフトオンザチェア、ダンベルレッグカール
メニューの例
【1回目】 ・上半身の押す動作(腕立て伏せ) ・下半身の引く動作(ブルガリアンスクワット) 【2回目】 ・上半身の引く動作(順手懸垂) ・下半身の押す動作(シシースクワット) ※例示した2回以外の日に「軽い腹筋運動」を入れると、さらに効果的な身体づくりになります。
2.週3日の筋肉のトレーニングで効果を出すコツ
週に3日以上のトレーニングを行う際に意識したい点は、複合関節運動と単関節運動です。複合関節運動は、一つの動作の中で二つ以上の関節と筋肉を使うものです。各筋肉に大きな負荷を掛けて鍛えることができます。 単関節運動は、一つの動作の中で一つの関節と筋肉を使うものです。このトレーニングは、あまり高重量で鍛えることはできませんが、特定の部位を鍛えることに向いています。 また、各回ごとに鍛える部位を大まかに3つに分ける、というメニュー構成もおすすめです。例えば「上半身の押す動作の筋肉群」「上半身の引く動作の筋肉群」「下半身各部位」という具合です。
- 上半身の押す動作の筋肉群(大胸筋、三角筋、上腕三頭筋など)
- 上半身の引く動作の筋肉群(広背筋、僧帽筋、上腕二頭筋など)
- 下半身の筋肉群(大腿四頭筋、大腿二頭筋など)
各回、なるべく負荷を掛ける部位が重ならないように種目を組み合わせます。その際、上記の分類を参考にしてください。 ある回で上半身を鍛えてその次の回でも上半身を鍛える場合は2日間(48時間以上)空ける、など超回復の時間を確保してください。 ※以下、例示した3回以外の日に「腹筋運動」を入れると、さらに効果的な身体づくりになります。
メニュー例(器具トレーニング多め)
【1回目】
- プレス系の複合関節運動(腕立て伏せ、ダンベルプレスなど)
- 複合関節運動(ナロー腕立て伏せ、ダンベルトライセップスプレス、ディップなど)
- 大胸筋の単関節運動(ダンベルフライ)
- 上腕三頭筋の単関節運動(ダンベルフレンチプレス)
- 肩の単関節運動(フロントレイズ、サイドレイズなど)
【2回目】
- 上半身全体に高い負荷を掛ける複合関節トレーニング(懸垂)
- 広背筋の複合関節運動(ダンベルロー)
- 僧帽筋の複合関節運動(ダンベルショルダーシュラッグ)
- 上腕二頭筋の単関節運動(ダンベルカール、コンセントレーションカール、ダンベルハンマーカールなどのカール系種目)
【3回目】
- 下半身全体の複合関節運動(自重スクワット、ダンベルスクワット)
- ハムストリングスの複合関節運動(ブルガリアンスクワット)
- 大腿四頭筋の単関節運動(ダンベルレッグエクステンション)
- ハムストリングスの単関節運動(ダンベルレッグカール)
メニュー例(自重トレーニング多め)
【1回目】(上半身の押す動作の筋肉群)
- 腕立て伏せ、又はダンベルプレス
- ディップ、又はリバース腕立て伏せ
- ダンベルショルダープレス、又はサイドレイズ
- ナロー腕立て伏せ、又はダンベルトライセップスプレス
【2回目】(下半身筋肉群の日)
- ブルガリアンスクワット
- カーフレイズ
- クランチ、又はジャックナイフ
【3回目】(上半身の引く動作の筋肉群)
- 懸垂
- ダンベルローイング、又はプルオーバー
- ダンベルカール
3.週4日のトレーニングで効果を出したい
1週間のうち4回もトレーニングに取り組むとなると生活の中の時間配分も難しくなりますが、それだけに効果的に筋肉を鍛えていくことができます。たくさんの種目をこなす中で集中力を保つために、一回のメニューに負荷の大きなメインの種目・負荷の小さなサブの種目を組み合わせてメリハリをつけるなどの工夫も大切です。特に、超回復の遅い部位への負荷が重ならないメニューであることが重要です。 以下の数字を目安にして、回復時間を確保して、トレーニングを組み立ててください。
- 腹筋・前腕・ふくらはぎなどの筋繊維:24時間
- 大胸筋・腕の筋肉などを構成する筋繊維:48時間
- 背筋群・大腿筋群などを構成する筋繊維:72時間
メニュー例
【1回目】(上半身の日)
- メイン種目(腕立て伏せ、ディップ、ダンベルプレスなど)
- サブ種目(ナロー腕立て伏せ、ダンベルフライなど)
- 上腕三頭筋種目
【2回目】(下半身の日)
- スクワット系トレーニング
- ランジ系トレーニング
- ふくらはぎトレーニング
【3回目】(肩・腹筋・前腕の日)
- ショルダープレス・サイドレイズなど三角筋種目
- 腹筋トレーニング
- 前腕トレーニング
【4回目】(引く動作の筋肉群の日)
- メイン種目(懸垂など)
- サブ種目(ダンベルローイングなど)
4.毎日少量の筋トレ続けて効果を出したい
おすすめは自重筋力トレーニングです。名前の通り、器具などを用意することなく、自分の体重によって自身に負荷を掛けて鍛えてトレーニングです。各部位に掛かる負荷を小さく抑えます。
毎日少量を継続することに向いている種目の例
- 上半身の押す動作の筋肉群(腕立て伏せ)
- 上半身の引く動作の筋肉群(懸垂)
- 下半身の筋肉群(各種スクワット)
- 腹部の筋肉群(バックエクステンション、クランチ)
また、毎日トレーニングを続ける上で、計算しておく必要があるのが、超回復の時間サイクルです。筋繊維の種類による回復時間の違いを意識しておいてください。
5.女性向けの筋トレメニューを知りたい
筋力トレーニングをやりたい女性の中には、筋肥大で身体が大きくなることを気にする人もいるかもしれません。 鍛えると筋肥大して身体が大きくなる速筋(白筋)、鍛えると筋繊維の密度のみが上がる遅筋(赤筋)という分類があります。瞬発的に大きな力を出す動作に必要な筋肉が速筋(白筋)、持久力を要する動作の反復に必要な筋肉が遅筋(赤筋)です。遅筋は鍛えても太くなることはありません。しかも、速筋と比べてエネルギー消費が大きいので、多くの脂肪を消費することにもなります。
週3日のトレーニングのメニュー例
【1回目】腹筋と上半身の押す動作の筋肉群のトレーニング 【2回目】腹筋と下半身の筋肉群のトレーニング 【3回目】腹筋と上半身の引く動作の筋肉群のトレーニング
上半身の引く動作の筋肉群のトレーニング/バックエクステンション
①床にうつ伏せになります。 ②息を吐きながらゆっくりと上体を反らします。 ③息を吸いながらゆっくりと上体を下ろします。 ※②と③を交互に10~20回ほど繰り返して1セットとして、3セット行います。 ※セットの間には30秒ほどの休憩をとります。
上半身の押す動作の筋肉のトレーニング例/(膝つき)腕立て伏せ
※腹式呼吸を組み合わせて有酸素運動も兼ねたもの。 ①床に両膝と両手をついて腕立て伏せの姿勢をとります。 ②鼻から息を吸い込んで、それから身体を押し上げます。 ③身体を下ろしたら、一気に口から息を吐きます。 ※二の腕のシェイプアップのためには「20回1セット」がお勧めです。
下半身の筋肉群のトレーニング例/ブルガリアンスクワット
※足を載せる台(膝辺りの高さ)を用意します。 ①足を後ろに伸ばして届く位置に台を置いて、両足で立ちます。 ②片足を爪先(または甲)を軽く台に載せます。 ③体幹を伸ばしたままで腰をゆっくりと落としていきます。 ④前に出ている方の膝が90度まで曲がったら、ゆっくりと②の姿勢に戻っていきます。 ※②~④を10回繰り返したら、足を左右入れ替えて10回繰り返します。
5.あまり知られていないレアなメニューを知りたい
スパイダーマンプッシュアップ(全身に負荷を掛ける腕立て伏せ)
上半身の押す動作の筋肉群、下半身の主な筋肉群、体幹(インナーマッスル)を同時に鍛える腕立て伏せです。 ①通常の腕立て伏せの姿勢になります。 ②両肘を曲げたタイミングで右膝を右肘にタッチ、また通常の姿勢に戻ります。 ③次に両肘を曲げたタイミングで左膝を左肘にタッチ、また通常の姿勢に戻ります。 ※②と③を繰り返しながら、腕立て伏せをします。 ※タッチする足は、膝も爪先も浮かしたままです。体幹をまっすぐに保てているほど効果も上がります。 ブリッジプッシュアップ(背筋に負荷を掛ける腕立て伏せ) 脊柱に沿ったインナーマッスル、長背筋を鍛えるトレーニングです。 ①床に背をつけた仰向けの状態で、床に手と足をつきます。 ②肘と膝を伸ばし、身体を反らして、ブリッジの姿勢になります。 ※①(肘・膝を畳む動作)と②伸ばす動作とを繰り返す腕立て伏せです。
バイシクルクランチ(腹斜筋に負荷を掛ける運動)
仰向けになり、上半身と脚部を浮かした姿勢で、自転車をこぐような動作をして鍛えるトレーニング。シックスパックの見栄えが格段に良くなります。
サイドエルボーブリッジ(体幹、腹斜筋、内転筋に負荷を掛ける運動)
①身体を真っ直ぐの状態にして横向きに寝ます。 ②身体の下側の肘を曲げ、床につきます(肩のラインと肘が一直線上にある状態)。 ③そこから腰を持ち上げて、体幹をまっすぐにします。 ④身体の上側の腕を床に対して垂直に上へ伸ばします。 ⑤30秒間、姿勢を維持します。 ※間に30秒のインターバルを挟みながら、①~⑤を3度行います。 ※左右を変えて、もう片方の側についても同様に行います。 効率よく筋肉をつけるために、筋トレと食事時間の関係が気になる方は、 『筋トレは食後何時間後にやるべき?【トレーナーが回答】』の記事をごらんください。
最後に
長文にお付き合いいただいて、ありがとうございました。筋力トレーニングの種目は数えきれないほど存在しています。この記事で紹介してきた、中級〜上級のトレーニングを充実したものにする要点が、多くの種目の中から皆さん一人一人に必要なものを選ぶためのお役に立てましたら幸いです。 筋力トレーニングの「成長の壁」をクリアして、目的に合った理想の筋肉を身に付けてください。
個人でパーソナルトレーナーに依頼を出しませんか?
プロのパーソナルトレーナーに、あなたの希望に合わせたトレーニングメニューを、正しく的確に作ってもらいませんか?
普段の悩み、体の悩み、なりたい姿を伝えて、それに合わせたトレーニング! 自己流で、なんとなくジムのマシンを使って時間を費やすトレーニングよりも、適正な期間でグンと効果が出るかもしれません。
マンツーマンや少人数だと、質問しやすく教えてもらいやすい時間を過ごすことができます。 ゼヒトモでパーソナルトレーニングを受けたい、という依頼を出すと、5人以内のパーソナルトレーナーから依頼が来ます。
「こんな悩みがある」 「この筋トレを続けて効果があるのかわからない」 「こんなボディになりたい」 というリクエストを、ぜひとも出してみてくださいね。
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