ベランダ屋根には、日差しを緩和したり雨から洗濯物を守ったり、外からの目隠しをしたりするといった役割があります。後付けをすれば、より快適な生活を送れるようになるでしょう。
本記事では、ベランダに屋根を後付けする事で得られる詳しいメリットと、後付けの際に必ず押さえておかなければならない注意点について解説します。
設置にかかる種類別の費用相場と、おすすめの製品も紹介するため、ベランダ屋根の後付けの参考にしてください。
想いを形に工房
ベランダとバルコニーの違い
「ベランダ」とは、2階以上にある屋外のスペースです。屋根がついていて、洗濯物を干す時に使うような比較的狭い空間として使われます。
一方、「バルコニー」とは、2階以上にある屋外のスペースではありますが、屋根がなく、ベランダよりも広いのが一般的です。リラックスするために使う事があり、ベランダの実用性とは使い方が大きく異なります。
2つの違いは「屋根の有無」なので、広さによって定義されるわけではありません。
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ベランダ屋根の種類と費用相場
ベランダ屋根には、アール型(R型)やフラット型(F型)、ルーフ型など、3つの種類があります。それぞれ種類によって相場費用が異なります。
種類 | 費用相場(出幅885mmサイズ) |
アール型(R型) | 13万〜16万円程度 |
フラット型(F型) | 12万〜15万円程度 |
ルーフ型 | 7万〜15万円程度 |
アール型(R型)
アール型は、屋根の先端が丸くカーブしている形状になっているのが特徴です。フラットタイプと比べると雨がベランダに入るのを防ぎ、日差しを遮る効果があります。
また、積もった雪が滑り落ちやすいため、寒冷地域にある住宅にもぴったりです。和風や洋風など、あらゆるデザインに合うベランダ屋根なので、機能性とデザイン性を兼ね備えています。しかし、価格帯は他の種類に比べると高額なため、予算と工事費用を照らし合わせながら検討しましょう。
フラット型(F型)
フラット型は、屋根が先端まで真っすぐで平面な形状になっているのが特徴です。直線的でスタイリッシュなため、デザイン性の高さにこだわりがある人に適しています。特にモダンな住宅のベランダとの相性が抜群です。
フラット型のベランダ屋根は視界が開けているため、開放感を得られるというメリットがあります。しかし、アール型のように屋根の先端が丸くないので、雨の日に洗濯物を干すと濡れる可能性があるのがデメリットです。
急な雨から守る能力には欠けるという事を念頭に置いたうえで、、フラット型のベランダ屋根にするか決めましょう。
ルーフ型
ルーフ型は、ベランダ屋根を支える柱がないタイプの屋根の総称です。直接外壁に取り付けるので柱がなく、ベランダを広く使用できるというメリットがあります。
屋根そのものの形状は、屋根の先端が丸いアール型と平面のフラット型の両方から選択できます。住宅の雰囲気に合わせて屋根の形状を決められるため、外観を崩す心配もありません。
ただし、屋根を安定させるための柱がないので、通常のアール型とフラット型と比べると耐久性がやや劣ります。
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ベランダ屋根を後付けするメリット
ベランダ屋根は必ず設置する必要はありませんが、多くのメリットがあります。ベランダ屋根を後付けするメリットを確認しましょう。
雨よけになる
ベランダに屋根を後付けすると、雨よけになるというメリットがあります。
天気の悪い日は、雨に濡れるのが嫌で外に洗濯物を干せない事も多いでしょう。しかし、ベランダ屋根があれば多少の雨なら洗濯物を守ってくれるので、過度に心配する必要がありません。
また洗濯物だけでなく、ベランダに置いている物も濡れにくくなります。特に物干し竿のように頻繁に屋内に取り込まない物は、雨に濡れて劣化するのを避けられるという恩恵を受けやすいでしょう。
ただ、ベランダ屋根は完全に雨から守れるわけではありません。ベランダ内部を完全に雨から守りたい場合は、ガラス窓に覆われたサンルームの設置を検討しましょう。サンルームについての詳しい情報はこちらをご覧ください。
日差しを緩和し温度調節できる
ベランダ屋根は、強い日差しを遮ってくれます。部屋に入る光を暗くならずに柔らかくできるので、室内の明るさを保ちつつも温度上昇を和らげられるのがメリットのひとつです。
特に日差しが強くなる夏は、冷房の効きが悪くなる事も多いですが、室温が上がりすぎず過ごしやすくなります。
また、日差しが強いと紫外線の影響で窓際のフローリングや畳などが日焼けし劣化が進みやすくなるため避けたいところです。その点、ベランダ屋根で日差しを遮れば日焼けによる劣化を防げます。
目隠しになる
立地によっては、周りに自宅より高い建物がある場合があります。生活していて、自宅より高い建物にいる人々の視線が気になる事もあるでしょう。ベランダ屋根を取り付けると、周囲の視線を遮れるので目隠しとして役立てられます。
また、ベランダに洗濯物を干す事が多かったり、ベランダで過ごす習慣があったりする場合もベランダ屋根があると安心です。周囲の視線を遮るのにベランダ屋根は効果的だと言えます。
防水塗装の保護になる
ベランダの防水塗装を紫外線や雨風から守る事が可能です。ベランダの防水塗装には、経年劣化によってひび割れや剥がれが発生しやすいというデメリットがあります。
劣化を放置してしまうと、雨漏りが発生したり湿気がこもりやすくなったりする恐れがあるため、定期的なメンテナンスが必要です。
しかし、ベランダ屋根は雨水を避けて紫外線をカットし、経年劣化を抑制できるため、防水塗装の寿命を延ばし、メンテナンス費用と頻度を減らせるという効果があります。
ベランダ屋根を後付けする際の注意点
ベランダ屋根は、日差しをガードしたり、部屋の温度を調節したりするなどのメリットがありますが、デメリットもあります。
- 雨音が発生する
- 外壁の保証が受けられなくなる
- 雨を完全にガードできるわけではない
- 北向きのベランダには向いていない
- 地域にあった素材や形状を選ぶ
- 設置する場所やサイズ、傾斜に気を付ける
- 建ぺい率を確認する
- 賃貸物件の場合は確認する
- 外壁に問題がないか確認する
雨音が発生する
ベランダ屋根に雨滴が当たって発生する雨音は防げません。特に、ポリカーボネート素材のベランダ屋根は雨音が大きい傾向があります。
寝室が隣接している場合は、豪雨の音で眠れなくなる恐れがあるため、ベランダ屋根の必要性と生活に対する悪影響を考えたうえで導入を検討しましょう。
もし寝室側のベランダに屋根を設置する場合は、雨音のストレスを軽減させるために、厚みのある屋根材を使用したり、防音材を導入したりするなどで雨音対策が可能です。
また、窓の内側にもう1枚窓を加える二重窓の設置も効果的だと言えます。
外壁の保証が受けられなくなる
ベランダ屋根を設置する際に外壁に穴を開ける必要がある場合、外壁の保証が効かなくなる可能性があります。
これは、ほとんどの外壁メーカーやハウスメーカーが定める外壁保証の条件に、「外壁に穴を開けていない事」が含まれているためです。外壁に穴を開けると、防水性や気密性が損なわれるため、下記のリスクを伴います。
- 亀裂や破損
- 塗装が剥がれる
- 雨漏り
外壁に穴を開ける工事は、外壁へ悪影響を与える状況にしてしまうため、ほとんどの業者が「穴が開いていない状態」を外壁の保証条件として定めています。
外壁に穴を開ける工事をする前に、保証に関する詳細を必ず施工業者に確認しましょう。
雨を完全にガードできるわけではない
ベランダ屋根は、上から降ってくる垂直方向の雨のみ防ぐ事が可能です。多少の雨は防げますが、風によって横方向に吹き込む雨や、屋根と壁の隙間から侵入する雨を完全に防ぐ事はできません。
ベランダで雨を完全に防ぎたい方は、サンルームの増設リフォームをする方法もあります。サンルームを増設したい場合は、固定資産税がかかる場合があるため、業者に相談してみましょう。
北向きのベランダには向いていない
北向きのベランダには、屋根の設置が向いていません。もともと風通しや日当たりが悪いため、さらに湿気がこもりやすくなったり、部屋が暗くなってしまったりするからです。
しかし、一部を開閉できる屋根を選択したり、換気孔を設置したりするなどの工夫をすれば、風通しが確保できます。日当たりは、透明性の高い素材を使用したり、屋根の角度を調整したりすれば得られます。
日差しが遮断されてしまうと、冬は室内の温度が低くなりがちです。暖房を稼働させる時間が長くなるので、電気代が高くなる事が多くなってしまいます。
本当に北向きのベランダにも屋根が必要かどうか、入念に検討する必要があるでしょう。
地域にあった素材や形状を選ぶ
屋根は地域にあった素材・形状のものを選ぶとより効果を発揮します。
たとえば雪が多い地域に住んでいる場合、雪を下に落としてくれるアール型の屋根が適しています。逆に平面のフラット型を選んでしまうと、屋根の上に雪が積もりやすくなるので危険です。加えて、積雪に対する耐荷重性の高さにも重視しましょう。
また、台風が多く暴風雨に晒される事が多い地域なら、耐風圧に優れているベランダ屋根である必要もあります。
日差しが強い地域に向いている屋根の素材には、ポリカーボネートやポリ塩化ビニル、アクリルなどが挙げられます。ポリ塩化ビニル素材は安価ですが、紫外線に弱く温度が高くなると変形するリスクがあるため避けましょう。
設置する場所やサイズ、傾斜に気を付ける
ベランダ屋根は、物干し竿より30〜50cm程度離れて設置するのが適しています。取り付ける距離が短すぎたり長すぎたりすると屋根の効果を得られない事もあるので、サイズを考慮する事が大切です。
また、ベランダ屋根を後付けする場所の軒先から、掃き出し窓までは10cm以上スペースを設けておかなければいけません。
位置だけではなく、サイズにも十分注意しましょう。小さすぎるベランダ窓は雨や日差しを十分に遮ってくれないため、後付けしても意味がなくなってしまう事も考えられます。
後付けの際には傾斜の角度についても確認しておきましょう。傾斜が緩すぎると屋根の上にゴミが溜まりやすくなってしまいます。風によって飛んでくるゴミもベランダに入り込みやすくなるため、掃除の手間が増えてしまうという不便性が生じるので、設置前に気を付けておかなければなりません。
建ぺい率を確認する
建ぺい率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合です。敷地面積に対してどれくらいの広さの建物を建ててもよいかを定めている決まりだと考えてください。建ぺい率を超えると、ベランダ屋根の設置はできません。
建ぺい率は建築基準法によって規定されていて、地域によって異なります。ベランダ屋根の設置には、建ぺい率以外にも守らなければならない規則・規制があるため、リフォーム前には業者と確認するようにしてください。
賃貸物件の場合は確認する
賃貸マンションの場合、基本的にベランダは共有部分に含まれるため、入居者が自分の判断で屋根を設置する事はできません。ただし、大家さんもしくは管理会社によっては、ベランダ屋根の設置を許可してくれるかもしれません。
ベランダ屋根を取り付けたい場合は、住宅の管理責任者に相談してみましょう。
ベランダ・バルコニーの屋根は外壁に固定して後付けします。外壁によってはひび割れや欠損などが生じる恐れがあり、設置が不可能なケースもあるので確認が必要です。
外壁の耐荷重性や、屋根を後付けしても崩壊しないかどうかといった点に注意しておきましょう。特に、固定する場所の素材が「ALC外壁材」や「タイル」、「レンガ」であると取り付けの難易度が上がります。
後付けにおすすめのベランダの屋根3選
後付けのためのベランダ屋根は各メーカーが販売しています。ここでは機能性とデザイン性が高いおすすめの製品3選をご紹介します。
①ソラリア(YKK AP)
「ソラリア」はYKK AP社の製品です。
特に物干し空間を求めている人におすすめで、使いやすさにこだわっています。屋根がバタつく音を軽減する特長を持っており、強風が気になる地域にも適しているでしょう。
サイズ展開が幅広く、さまざまな場所に設置可能なところも便利なポイントです。
参考:ソラリア|YKK AP
②スピーネ(LIXIL)
「スピーネ」はLIXIL社の製品です。
オプション機能の豊富さが特徴で、自由に屋根角度を調整できたり、全面と側面にスクリーンを加えてより雨風を防いだりできるなどといった利便性の向上が可能なのが魅力だと言えます。
もし屋根にさまざまな機能性を持たせたいのであれば、ぜひ検討したい製品です。
参考:スピーネ|LIXIL
③レボリュー(三協アルミ)
「レボリュー」は三協アルミ社の製品です。
耐風圧・耐積雪荷重性能に優れており、天候により生活に影響が及びやすい地域で特に役立ちます。
出幅と間口のサイズが広いタイプが展開されているので、広々とベランダを使いたい時に取り入れるとよいでしょう。
参考:レボリュー|三協アルミ
サンルームなら雨や汚れをカットできる
「サンルーム」とは、ベランダ屋根の下をガラスの壁で囲って部屋のようにする設備です。ベランダ屋根だけでは強い雨や外からの汚れをカットしきれませんが、サンルームなら完全にシャットアウトできます。
ベランダ部分を部屋として活用できるので、リラックススペースとして使えるのも嬉しいポイントです。
サンルームを設置する場合に増築として扱われると、固定資産税がかかる可能性があります。設置する際にどのような扱いを受けるかは業者に確認しておきましょう。
オーニングは屋根の代わりになる
「オーニング」とは、布製の折りたたみ可能なひさしです。使いたい時だけ広げて屋根のようにして角度や長さなどを調節して使用します。
ベランダ屋根が常に必要なわけではないけれど、シチュエーションによっては日差しを遮りたいといった場合にはスペースをとらないオーニングが便利です。オーニングは防水性能つきなので洗濯物を干す時にも活用できます。
多少コストがかかる設備ですが、利便性と耐久性に優れているのがメリットです。
シェードで簡単に日差し避けができる
「シェード」とは、薄い素材でできている布を外壁のフックからベランダの床まで広げて固定する日よけです。オーニング同様、使いたい時だけ広げて使えるため、日差しの強さが気になる時だけ設置できます。
防水性能はありませんが、難しい施工がいらないので簡単に後付けできるのが大きなメリットです。また、他の設備に比べて大きくコストカットできるのも優れている点だと言えます。
商品のバリエーションが豊富で安価で手に入るため、劣化しても交換しやすい設備です。
DIYでも設置できる?
ベランダの屋根は、適切な専門知識がある場合もしくは、簡単な組み立て式の屋根であればDIYでも設置可能です。しかし、高所作業で難易度が高いため、設置ミスをしてしまうと強度や防水性などが機能しなくなる可能性があります。
DIYでの取り付け方法
ベランダ屋根をDIYで取り付ける際には以下の道具を準備しましょう。
- 後付けテラス屋根キット:簡単な組み立て式のベランダ屋根
- ドリルドライバ:フレームや取付金具を固定する
- レンチ:取付金具を締め付ける
- メジャー:部材や設置場所を図る
- 水平器:フレームが水平になっていることを確認する
- マスキングテープ・鉛筆:穴を開ける場所をマーキングする
DIYでの設置は下記の5ステップの流れで行います。
- 設置場所を決める
- 下地を補強する
- フレームを組み立てる
- 屋根材を取り付ける
- 固定する
まず、ベランダ屋根を設置する場所を決めます。建物の構造や窓の位置なども考慮し、十分な設置スペースを確保しましょう。
次に、設置場所の下地に十分な強度がある事を確認します。万が一強度が足りない場合は、コンパネや角材などでの補強が必要です。
ここまで進んだら、フレームを組み立て、屋根材を取り付けます。水平器を使って、フレームが水平になっているか確認が必要です。
最後にフレームをビスやアンカーなどを使って壁や床に固定します。すべての部品が取り付けられたら完成です。
ベランダ屋根の設置は高所での作業になるため、安全に気をつけながら行いましょう。
ベランダに屋根を後付けする時は業者に確実な施工を依頼しよう
ベランダ屋根をDIYで後付けしたいという人もいるかもしれません。決して不可能ではありませんが、高所での作業であるうえ、少しでも施工ミスをすれば日常生活の中で大怪我をする可能性があります。
やはり業者に確実な施工を依頼するのがベストだと言えるでしょう。
業者選びに役立つのが、相見積もりという方法です。相見積もりとは複数の業者から見積もりを取り寄せる方法で、効率的に費用や保証、アフターサービスなどを比較検討できるというメリットがあります。
ぜひ優良業者選びの際に活用する事を検討してください。
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監修したプロのコメント
洗濯物などを干せるようにしたいという理由で、ベランダに屋根を設置される方が多く存在しています。軒の出の幅が少ないと、雨が降りこみ洗濯物が濡れることがあるので、そこは十分注意が必要です。
ベランダに屋根を後付けする工事など、外壁に関わる工事のDIYは避けることをおすすめします。
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