フルートは、透明感のある高音域と柔らかく包み込むような中音域を持っている木管楽器です。
和音やメロディーライン、ソロなど、曲中のあらゆる場面で活躍し彩りを添えてくれます。 初心者がフルートを吹く上で大切なのは、唇の形と腹式呼吸の2つを意識すること。
また、フルートを吹くときの構えがしっかりできていないと綺麗な音は出てくれません。今回は、フルート初心者が練習する上で押さえておきたいポイントを詳しく紹介していきます。
目次
フルートってどんな楽器?
フルートとは、クラリネットやサックスのようなリード楽器ではなく、菅の穴から息を吹き込んで音を出す木管楽器です。優雅な美しい響きが特徴で、曲中ではソロパートを担当することも多いでしょう。
本体は頭部菅・胴部菅(主管)・足部菅で構成されており、頭部菅のリッププレートに唇を当て、歌口へ息を入れて音を出します。胴部菅には穴をふさいだり開いたりするためのキイがいくつかついていて、押さえるキイの違いで音階を奏でられるという仕組みです。
また、音域とサイズの違いから、ピッコロ、ソプラノフルート、アルトフルート、バスフルートなど10種類以上ものフルートが存在しています。
フルートの選び方
フルートを選ぶときは、「材質」「キイのタイプ」「メーカー」「値段」のポイントをチェックすることが大切です。それぞれどういった違いがあるか、以下で解説していきます。
材質で選ぶ
一般に、フルートの材質には金属と木の2種類があり、金属製の中でも白銅・銀・金・プラチナなどの種類に分かれます。それぞれの特徴は以下の通りです。
- 白銅:明るく響く音色が特徴で、バランスよく幅広い音域を演奏できる。錆び付きにくく、初心者向け。
- 銀:フルートの材質として最も広く使われている。豊かで迫力のある音色が特徴。
- 金:煌びやかでキラキラとした音色が特徴。倍音が響きやすく、華やかな演奏ができる。
- プラチナ:メリハリのある透き通った音色が特徴。力強い演奏に向いている。
- 木:暖かく柔らかい音色が特徴。様々な曲において表現力豊かな演奏ができる。
材質によって音の響き方や耐久性は異なり、中でも初心者におすすめなのは白銅です。耐久性が高いため扱いやすく、値段も他と比べて安いので最初の1本にはぴったりでしょう。
キイのタイプで選ぶ
キイのタイプには2種類あり、押さえる部分がフタ状になっているカバードキイと、リング状になっているリングキイがあります。
カバードキイは少し指で押さえただけでほぼ完全に穴を塞げるため演奏しやすく、初心者向きでしょう。
一方、リングキイは完全に指で穴を塞がないと息が漏れてしまうので、初心者のうちは難しく感じるかもしれません。ただし、穴の押さえ具合で響きを細かくコントロールできる分、より表現力豊かに演奏することができます。フルートに慣れてきたらリングキイに挑戦してみるのもいいでしょう。
メーカーで選ぶ
フルートは「YAMAHA」「Muramatsu」といった日本メーカーや、「Powell」「HAYNES」といった海外メーカーなどで作られています。
メーカーごとに音色の特徴があり、繊細で柔らかい音色のメーカーやクリアで鋭い音色のメーカーなど、その違いは千差万別と言えるでしょう。
メーカーにこだわるのであれば、実際に楽器屋へ足を運び、試奏させてもらったり店員から特徴を聞いたりするのが一番おすすめです。ぜひ自分好みの音色を奏でられる1本を探してみてください。
値段で選ぶ
フルートの値段はピンキリで、1万円台で購入できるものもあれば数百万円するものもあります。
ただし、あまりに安いフルートは音が出にくかったり響きが悪かったりして、十分演奏を楽しむことができません。安い楽器には安いなりの理由があるため、避けた方が無難でしょう。
初心者の場合、操作性も音色もそれなりに良い10万円前後のフルートを選ぶのがおすすめです。なお、フルートを長期にわたって続けていきたいという方は、15〜20万円まで幅を広げてみてもいいでしょう。
フルート初心者におすすめの練習方法
最初から音をしっかり出すのは難しいですが、練習を続けるうちにフルートはどんどん上達していきます。以下で紹介する練習方法を参考に、毎日コツコツとフルートを吹いてみてください。
最適なアンブシュアを作れるようになる
アンブシュアとは唇や口の形のことを指し、管楽器を演奏する上で重要な要素です。特にフルートは自分の息だけで音を出す楽器のため、息の出口であるアンブシュアが演奏に大きな影響を与えるでしょう。
アンブシュアを安定して作れるようになると、音も安定して出せるようになります。アンブシュアの基本的な作り方は以下の通りです。
- 口全体をリラックスさせて、かすかな笑みを浮かべるように唇を横へ引く
- 唇の中央を軽く開き、米粒くらいの大きさのスペース(アパチュア)を作る
- アパチュアをキープしながら息を出す
最適な唇の形は人によって違うため、何度も練習を繰り返して自分に合うアンブシュアを見つける必要があります。
まずは吹き込み口のある頭部菅だけを使い、鏡を見てアンブシュアを意識しながら音が出せるよう練習しましょう。このとき、肩に力が入りすぎないようリラックスすることを心がけてください。繰り返し何度も音を出すうちに、アンブシュアとリッププレートに置く唇の位置が掴めるようになります。
腹式呼吸の練習をする
腹式呼吸とは、息を吸うときに横隔膜を下げるようにしてお腹をへこませ、その逆の動きで息を吐き出すという呼吸法のこと。特にフルートを演奏するときは多くの息が必要となるため、腹式呼吸をマスターすることで音が安定しやすくなるでしょう。
仰向けだと自然に腹式呼吸へ切り替わるため、感覚が掴めないという方は寝転んだ状態で練習してみるのがおすすめです。まずは仰向けの状態で2秒ずつ息を吐く・吸うという練習をし、次に4秒息を吐いて2秒息を吸う、その次に5秒息を吐いて1秒息を吸うというように練習してみてください。
実際の演奏では息を吸う時間よりも吐く時間の方が長いため、こうして段階を踏みながら練習していくのが効果的です。慣れてきたら座った姿勢、立った姿勢でも腹式呼吸ができるように練習してみましょう。
ロングトーンの練習をする
ロングトーンとは、文字通り長く音を出し続ける練習のこと。まずは「シ」の音に合わせてできるだけ長く安定した音を出してみましょう。
吹き始めは「トゥー」と発音するようにして音を出します。できるだけ音を前に飛ばすイメージで息を吹き込むのがポイント。出だしの発音から鳴っている音の響き、切ったときの響きまで、できるだけ綺麗な音を出せるよう意識してみてください。 最初から拍数や時間を気にする必要はありません。
ただし、慣れてきたらメトロノームに合わせて4拍、8拍と規則的な長さで吹けるよう練習しましょう。ロングトーンは姿勢やブレス、アンブシュア、音色など様々な要素が組み合わさっており、毎日続けることでフルートの上達に近づきます。
音階を吹いてみる
スムーズに曲を演奏するには、音階練習で運指に慣れておくことが大切です。まずはハ長調のCメジャースケール(ドレミファソラシド)を練習しましょう。
最初は自分のペースで1オクターブ吹けるように練習し、慣れてきたらメトロノームに合わせて四分音符、八分音符で吹けるようにします。 1オクターブ間の音階練習に慣れたら2オクターブ間でも吹けるように練習すると、より運指の技術が上がるでしょう。また、少し難しいですが単調にも積極的に挑戦してみてください。
曲の練習をしてみる
曲の練習では、まず小節ごとに区切って練習するのがポイントです。初見でいきなり全体を吹くのは難しいため、楽譜を細かく切り分けて慣れるようにしましょう。
特に、フレーズを練習するときは楽譜をよく見て運指を丁寧に行うようにしてください。慣れないうちはテンポを落とし、ゆっくりとしたテンポで吹けるようになってから徐々にテンポを上げていくと、スムーズに吹けるようになります。難しいフレーズが出てきたときは挫折しやすいですが、諦めず繰り返し練習することで吹けるようになるでしょう。
音がしっかり出ない時に考えられる原因
フルートは、他の管楽器と比べて特に音を出すのが難しいと言われています。練習を続けても音がしっかり出ない場合、以下の原因に該当しないかチェックしてみてください。 練習を続けても音がしっかり出ない場合、以下の3つが原因として考えられます。
頭部菅が内側を向いてしまっている
頭部菅が内側に向きすぎた状態で息を吹き込んでも、音はなかなか響きません。対策として、組み立ての時にキイの中心線が歌口から外れないようにすると、頭部菅が内側に向きすぎるのを防げます。最初はキイの中心と歌口の中心を合わせてみて、そこから歌口を外れない範囲で吹きやすい角度を探してみるといいでしょう。
息を入れにくい構え方になっている
フルートは、少し構え方や姿勢が崩れると息を入れにくくなり、綺麗に音を響かせるのが難しくなってしまいます。具体的に、以下のポイントを意識することでフルートが吹きやすくなるでしょう。
- 肩の力を抜く
- 足を肩幅ほどに開く
- つま先は約45度外側へ向ける
- まっすぐな姿勢を保つ
- フルートを水平に構える
特に、立って演奏するときは1本の樹木のように立つことを意識すると、重心が安定しお腹に力が入りやすくなります。また、疲れてくると持ち手が下がってフルートが斜めになりがちとなってしまうため気をつけてください。
アンブシュアが崩れている
何時間も練習していると、口が疲れてアンブシュアも崩れがちになってしまいます。なかなか音が出ないというときは、鏡を見てアンブシュアを見直してみましょう。
特にアパチュアが歌口から外れた部分にないか、注意が必要です。息はアパチュアから出るため、歌口とアパチュアがずれていると正しく息が入りません。アパチュアがちゃんと歌口の真ん中にあるか、確認してみてください。
また、唇が乾燥していても音が出にくい原因となるため、練習のときはこまめにリップクリームを塗るようにしましょう。
フルート初心者におすすめの練習曲
曲には難易度があり、同じフルートの曲でも初心者向きとそうでない曲があります。以下でフルート初心者におすすめの練習曲を5曲紹介しますので、曲を選ぶときの参考にしてみてください。メロディに聞き覚えのある曲も多く、楽しく練習できますよ。
リー・ハーライン『星に願いを』
ディズニー映画「ピノキオ」のテーマ曲であり、「小さな世界」「A Whole New World」などと並ぶディズニーの代表曲です。中音域から高音域までの移り変わりがある楽曲で、息のコントロール法を練習できるでしょう。耳覚えのあるメロディーが続くため、最初から最後まで演奏のしがいがあります。
ジョン・ニュートン『アメイジング・グレイス』
有名な賛美歌で、ドラマや映画の挿入歌としても耳にすることが多い楽曲です。ゴスペルやジャズなど様々なジャンルでアレンジされており、マスターしてからも他のアレンジで楽しむことができます。落ち着いた優美なメロディーが印象的で、1オクターブ内で演奏できるため初心者でも無理なく吹けるでしょう。
ベートーヴェン『交響曲第9番 歓喜の歌』
オーケストラ演奏や、大勢の合唱団による合唱で有名な楽曲です。同じフレーズの繰り返しが多く、一度フレーズを吹けるようになれば最後までスムーズに練習が進むでしょう。四分音符の並びが中心で、複雑なリズムが少ないのも初心者には嬉しいポイントです。
木村弓『いつも何度でも』
映画「千と千尋の神隠し」の主題歌で、ジブリ好きの方であればメロディーに聴き覚えがあるでしょう。しっとりと落ち着いた曲調でありながらも、どこか温かみを感じられる楽曲です。元々のテンポがゆったりとしており、それより遅いテンポで演奏しても味が出るため、初心者もチャレンジしやすいでしょう。
井上陽水『少年時代』
夏に聴きたい名曲として、昔から安定の人気を誇る楽曲です。複雑な音符がなくシンプルな構成となっているため、初心者でも演奏しやすいでしょう。中低音から高音まで幅広い音域となっており、技術を磨くための練習曲としてぴったりです。
初心者脱却におすすめの上達法
最後に、初心者から中級者へステップアップするための上達法を2つ紹介します。
教則本を活用して練習する
教則本には、クラリネットの基本的な知識から練習方法、上達のためのポイントなどが詰まっています。どのように練習を進めたらいいかわからないという方は、練習のお供として1冊お気に入りの教則本を用意するといいでしょう。
写真や図解でわかりやすく説明されており、独学でもまるでレッスンを受けているかのように練習を進められます。以下でおすすめの教則本を3冊紹介しますので、教則本選びの参考にしてみてください。
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フルートの組み立て方や持ち方から丁寧に解説してあり、初めてフルートを手に取ったという方はこちらの1冊があれば心配いりません。
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- 著者:久保 順
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「どうしたら音が出る?」「正しい音程を取るにはどうしたらいい?」という初心者にありがちな悩みをゼロからわかりやすく解説。吹奏楽部向けに作られた教則本ということもあって、合奏でうまく演奏するためのポイントも紹介されています。 楽器の選び方や楽譜で使われる用語・記号の意味についても解説があり、楽器自体が初めてという方もこちらの1冊があれば安心でしょう。
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まとめ
フルートを練習するときのポイントを紹介してきましたが、大切なのは技術を磨くこと以上にフルートを楽しむということです。せっかくフルートを練習するのであれば、楽しみながら練習した方が自然と早く上達できるでしょう。 練習のモチベーションを上げるには、自分の好きな曲を練習するのが一番です。好きな曲が吹けるようになると達成感があるだけでなく、より練習のやる気がアップします。基礎練習と曲の練習を続けながら、ぜひフルートを楽しんでみてください。