住宅診断(ホームインスペクション)は、建物に問題がないかを専門家が調査することで、マンションや一戸建ての売買契約前によく行われます。日本でも実施例が増えており、義務ではありませんが、売り手・買い手双方にメリットがあるため、導入がおすすめです。
今回は、住宅診断にかかる費用相場や住宅診断が必要な理由、依頼時の注意点などを解説します。住宅の売買やリフォーム前などで住宅の状態を知りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
住宅診断(ホームインスペクション)とは
住宅診断(ホームインスペクション)とは、住宅の状態をチェックする調査のことです。第三者的な立場から、住宅の劣化状況や欠陥の有無、改修すべき場所やその時期などを確認します。チェックする担当者は、住宅診断士や既存住宅状況調査技術者登録講習を修了した建築士などの場合が多いです。
ホームインスペクションは、目視で行われる1次診断が基本。屋根や外壁、室内の劣化状態・構造などが診断されます。診断の結果は書面で提示され、屋根裏や床下など目視で判断できない部分に調査すべき項目が出た場合は、2次診断が必要であるといわれることも多いです。
ホームインスペクションは、欧米ではすでに普及しており、日本でも実施されるケースが増えてきました。
ホームインスペクションは、不動産を売買するタイミングで行われることが多いです。実施することで、住宅の状態を正しく反映した価格を設定できたり、住宅の状態に問題がないことを担保できたりします。また、マンションの引き渡し後に買い手とトラブルが発生することを予防できるのもメリットです。
ホームインスペクションの結果、建物に問題がないことがわかれば、安心して不動産を売買できます。問題が発生した場合は、売却前に修繕のための費用が必要です。
住宅診断の費用相場一覧
目視で行う基本的な診断の場合、住宅診断の費用相場は約5万〜7万円です。建物の種類や広さ、調査項目によって費用は異なります。依頼する会社によってもプランや調査項目、費用が異なるため、複数社に見積もりを出し比較検討するのがおすすめです。
目視で確認する基本的な診断は、約5万〜7万円程度が目安ですが、詳細な診断が必要と判断された場合は2次審査としてさらに費用がかかります。
一戸建てとマンションそれぞれの住宅診断にかかる費用相場をまとめると、以下のとおりです。
一戸建て | 約5万~7万円 |
マンション | 約4万~6万円 |
ここでは、それぞれのケースについて解説します。
一戸建ての場合
30坪程度の一戸建ての建物で住宅診断を行う場合、調査にかかる時間は3時間程度です。目視では判断できない屋根裏や床下に潜入して診断を行う場合は、さらに1時間程度かかると把握しておきましょう。
1次診断、2次診断における費用相場と調査内容は、それぞれ以下のとおりです。
1次診断 | 2次診断 | |
費用相場 | 約5万~7万円 | 約6万~12万円 |
調査内容 | 柱・基礎・外壁など目視での確認 給排水管の水漏れ調査 開口部の確認 | 屋根裏や床下など目視できない箇所に侵入 屋根の劣化をドローンで調査 |
一般的に、マンションよりも一戸建ての方が調査する箇所が多いため、その分費用も高くなる傾向にあります。
マンションの場合
マンションの場合、建物を壊して屋根裏や床下に潜入することは難しいため、目視の1次診断のみが行われるケースが多いです。70平米程度のマンションの場合、住宅診断には2時間ほどかかります。
費用相場と調査内容は、それぞれ以下のとおりです。
費用相場 | 約4万〜6万円 |
調査内容 | 玄関ポーチ、バルコニー、テラスなどの確認 |
住宅診断を導入するべき3つの理由
2018年4月に宅地建物取引業法が改正されて以降、不動産会社が中古のマンションや一戸建ての売買を仲介する際、売り手・買い手に住宅診断の制度を説明し、希望に応じて斡旋することが義務づけられました。しかし、住宅診断を実施することは義務ではありません。売り手の中には、調査の結果査定価格が下落してしまうことを恐れ、住宅診断の実施に消極的になってしまうケースも多く存在します。
しかし、以下のような理由から、住宅診断を導入することには売り手・買い手双方にメリットがあるのです。
- 円滑に取引を進められる
- コスト管理がしやすい
- 瑕疵保証保険の利用ができる
ここでは、住宅診断を導入するべき3つの理由について解説します。
円滑に取引を進められる
買い手にとっては、契約後に予想外の問題が発覚するリスクを解消できるため、円滑に売買取引を進められるのがメリットです。中古住宅の保証には統一された基準がないため、仮に契約後にトラブルが発生しても、十分に保証してもらえない可能性があります。
そこで住宅診断を行うことで、住宅に問題がないかを専門家に調査してもらえ、安心して売買契約を締結できるのです。住宅診断には費用がかかりますが、安心してスムーズに取引できることを考えると、住宅診断を導入するべきと言えます。
コスト管理がしやすい
住宅診断を実施することで、住宅のコンディションが明らかになり、購入後に必要な修繕工事やそれにかかる費用がわかるのは大きなメリットです。中古物件の場合は、購入後のリフォームやメンテナンスの計画が立てやすくなるため、コスト管理がしやすくなります。新築物件の場合は、施工の不具合がないかを専門家に調査してもらえ、安全性が担保されるでしょう。
瑕疵保証保険の利用ができる
住宅診断の結果が問題ないと判断された住宅は、既存住宅売買瑕疵保証保険を利用できるようになるのもポイントです。取引後に住宅に欠陥が見つかったとしても、保障費用が保険金として支払われます。
瑕疵保証保険とは、取引後に重大な不具合や欠陥が見つかった場合、それによって生じる損害に対して保険金が支払われる制度のことです。対象となる瑕疵の内容には制限がありますが、万が一の経済的なリスクに備えられるのは売り手・買い手双方にとって大きなメリットといえるでしょう。
なお、瑕疵保証保険の付与要件を満たすためには、住宅診断に合格していることに加え、建物が新耐震基準を満たしている必要があります。
瑕疵保証保険のメリットは、経済的なリスクに備えられる点だけではありません。実は、住宅ローン控除にも役立ちます。住宅ローン控除を利用して住宅を購入すると、一定期間、年末残高の0.7%が控除され、税金が安くなります。住宅ローン控除の利用条件は、中古物件の場合「登記簿上の建築日付が昭和57年(1982年)1月1日以降の家屋」です。しかし、瑕疵保証保険が付与されている場合は、それ以前に建築された物件についても、住宅ローン控除を利用できます。
ホームインスペクションを依頼するタイミングは?
ホームインスペクションを行うのに適したタイミングは、住宅の売買契約前です。契約前にホームインスペクションを依頼し、住宅の状態を正しく把握しましょう。
もちろん、売買以外のタイミングでもホームインスペクションを依頼できます。長年住んだ自宅の安全性を点検するためや、リフォームや建替え前の調査のためなど、住宅に関わるさまざまな意思決定に役立つ大切な診断です。新築・中古物件ともに、ホームインスペクションの実施については前向きに検討しましょう。
ホームインスペクションを行う際の注意点
最後に、ホームインスペクションを行う際の以下の注意点について解説します。
- 誰が費用を負担するのか確認する
- 実力のある診断士にお願いする
- 結果が出るまでに時間がかかる
ホームインスペクションでは、信頼できる診断士に、客観的な立場から調査してもらうことが大切です。それを踏まえたうえで、誰が費用を負担し、誰がインスペクション会社を選ぶのかを決めましょう。
また、結果が出るまで別の取引ができるようにするかを決めなければ、売り手・買い手間でトラブルが発生する原因になります。
ここでは、ホームインスペクションを行う際の注意点について解説します。
誰が費用を負担するのか確認する
ホームインスペクションの実施は義務づけられておらず、費用を誰が支払うかについては明確に定められていません。そのため、費用を誰が負担するかについては、売り手・買い手の間で事前に確認する必要があります。
買い手にとってのリスクをなくすための制度であるため、買い手が費用を負担するケースが多く見られます。売り手や不動産会社が負担する場合もありますが、ホームインスペクションにおいては、売り手と利害関係がない会社に依頼することが重要です。客観的に建物を調査してもらうためには、買い手が費用を負担し、買い手が指定したインスペクション会社を利用して住宅診断をすることが一般的と言えるでしょう。
実力のある診断士にお願いする
ホームインスペクションは、専門のインスペクション会社に依頼することが多いですが、実際に調査を行うのがその会社の社員であるとは限りません。会社の信頼性だけでなく、実際に建物の調査を行う診断士が信頼できるかについても確認しておきましょう。
適切なホームインスペクションを実施するためには、診断士が既存住宅状況調査技術者の資格を保有していることと、保険法人の登録事業者であることが必要です。
検査にどのような機材を用いるのか、結果報告書は丁寧に記載してくれるか、買い手の不安や疑問に真摯に対応してくれるか、などのポイントも重視しておきましょう。費用が安ければよいというわけではありません。不動産という大きな買い物をする以上、信頼できる調査を行ってくれる診断士に依頼することが大切です。過去の実績や利用者の口コミも参考に、慎重に選んでください。
結果が出るまでに時間がかかる
住宅診断は、依頼から結果が出るまで早くて1週間、基本的には約2週間と比較的時間がかかります。そのため、余裕のあるスケジュールで依頼することが大切です。
とくに、中古の建物の売買で住宅診断を利用する際は注意が必要です。住宅診断の結果を待っている間に別の取引ができる条件なら、その間に物件が売れてしまう可能性があります。逆に、結果が出るまで別の取引ができない条件なら、診断後に確実に買ってもらえるとは限らないため、売り手にとっては機会損失となります。
このように、売り手・買い手双方の利害が対立するため、トラブルが発生しないよう事前に契約内容についてすり合わせておきましょう。
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住宅診断(ホームインスペクション)の費用相場やメリット、注意点について幅広く解説しました。住宅の売買を検討している方は、事前にホームインスペクションをおこない、安心して取引することが大切です。
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