マンションの建て替え工事をする際は、住民側にも大きな負担が発生します。建て替えに賛成でも反対でも経済的なリスクがつきまとうため、マンションの購入前に正しい知識を身につけておくことが大切です。
この記事では、マンションの耐用年数の考え方や、建て替えの費用負担などを解説します。物件を購入する際の参考にしてみてください。
マンションの耐用年数は?
マンションの耐用年数の考え方として、以下の3つが挙げられます。
法定耐用年数 | 47年※SRC造、RC造 |
物理的耐用年数 | 100年超※RC造を想定 |
経済的耐用年数 | 40〜50年 |
法定耐用年数とは、減価償却ができる期間のことです。鉄筋鉄骨コンクリート造または鉄筋コンクリート造の住宅用物件の場合、47年以内であれば減価償却費の計上が認められます。
法定耐用年数は住宅の構造によって違いがあり、木造・合成樹脂造は22年、木骨モルタル造は20年です。
物理的耐用年数とは、建物の利用が物理的に可能な期間を指します。建築技術の進歩により、近年建てられた建物の物理的耐用年数は100年を超えると考えられています。
ただし、建築技術が低い年代に建てられている場合、寿命の目安は築60〜70年です。寿命を迎えた建物は物理的に住むのが困難となるため、建て替え工事をする必要があるでしょう。
経済的耐用年数とは、建物が経済的な価値を有する期間のことです。一般的な基準として、マンションは築40年〜50年程度を超えると経済的な価値がなくなるとされています。
経済的耐用年数を過ぎた建物は住みやすさが損なわれることから、土地価格のみで売買されるケースが多いです。
参照:国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」
マンションの建て替えはよくある?
結論として、マンションの建て替えが実施されるケースは多くありません。2022年4月1日時点で建て替え工事が完了している物件数は、全国で累計270件です。前年の累計件数は263件のため、1年間で7件しか建て替えられていないことがわかります。
国土交通省の調査によると、2021年末の時点では築30年以上の分譲マンションの戸数は249.1万戸です。築30年を迎えた分譲マンションは、老朽化などによって建て替えの必要性が高まります。
しかし、建て替えの実施状況と見比べると、ほとんどの物件が建て替えられていないことが読み取れます。
参照:国土交通省「マンション建替えの実施状況(2022年4月1日時点/2022年6月28日更新)」
参照:国土交通省「築後30、40、50年以上の分譲マンション数(2021年末現在/2022年6月28日更新)」
マンションの建て替えが行われない理由
マンションの老朽化が進んでいたとしても、建て替えは積極的に実施されていないのが現状です。マンションの建て替えが多くない理由として、以下の3つが考えられます。
- 住民の費用負担が大きい
- 建て替えまでの流れが複雑
- 法律上建て替えられないマンションが多い
住民の費用負担が大きい
マンションの建て替えが行われない要因には、区分所有者である住民の費用負担が関係しています。建て替えにかかる費用は高額なため、ストックしている修繕積立金ではまかなえないケースがほとんどです。
工事費用を捻出するためには、修繕積立金を多く徴収するなどの策を講じる必要があるでしょう。しかし、修繕積立金の値上げは住民の負担増に直結する行為です。結果として建て替えに反対する住民が多くなり、工事実施の合意を得られないことが多いです。
建て替えまでの流れが複雑
マンションの建て替えが進まない理由として、工事実施までの流れが複雑であることも挙げられます。主に4つのステップを踏まなければならず、途中で計画がとん挫することは珍しくありません。
- 準備段階
- 検討段階
- 計画段階
- 実施段階
準備段階
はじめに、管理組合で建て替えの必要性に関する協議が開かれます。マンションは築年数が経過するほど老朽化が進むことから、およそ築40年を迎えるころに話し合うのが一般的です。場合によっては、準備段階から専門家を交えて協議することも少なくありません。
検討段階
検討段階では、「建て替えすべきか」「大規模修繕をして建て替え時期を延ばすか」を話し合います。管理組合だけで決定するのではなく、マンション管理士などの不動産に詳しい専門家とともに調査を行います。その際、管理組合内で検討委員会を設立するのが基本です。
マンションの建て替えが必要だと判断された場合は、建て替え推進決議後に計画段階へと入ります。
計画段階
計画段階は、建て替えに関するさまざまなプランや費用負担を明らかにするステップです。建て替え計画が固まったら、区分所有者である住民に対して説明会や建替え決議を行います。
区分所有法第62条に基づき、5分の4以上の住民から賛成を得られた場合は建て替えの実施段階に移ります。ただし、建替え決議で住民からの合意が得られず、計画が取り消しになるケースは珍しくありません。
参照:e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」
実施段階
住民の合意が得られれば、区分所有者権や抵当権などの引き継ぎに関する手続きが行われます。手続きの完了後、マンションの解体・建設工事が施工されます。
法律上建て替えられないマンションが多い
法律に関する問題により、建て替えが難しいマンションも少なくありません。建築された時点では合法であっても、法改正などによって法律の基準を満たさなくなることがあります。
このような物件は既存不適格と呼ばれており、例として容積率が現在の基準から外れる建造物が挙げられます。容積率とは、建物の階数と土地面積の割合を示したものです。
容積率をオーバーするマンションで建て替え工事を施工するためには、住戸数や住戸の床面積を削減しなければいけません。削減に伴う費用負担が大きいことから、容積率を超えるマンションでは建て替えが行われないケースが多いです。
建て替えに必要な費用負担とは?
マンションの建て替えにかかる費用は、主に区分所有者が負担することとなります。自己負担額の目安は、1戸あたり1,000万〜3,000万円程度です。費用の内訳を確認してみましょう。
- 解体費用
- 設計費用
- 事務費用
- 建設費用
上記に加えて、建て替え工事中の仮住まいの家賃や引っ越し費用の準備も必要です。
なお、マンションの容積率にゆとりがあり、建て替え時に住戸数を増やすケースでは、自己負担が減額される可能性もあります。容積率は敷地面積に対する延床面積の割合のことで、地域ごとに基準が定められています。
建て替え前の容積率が基準を下回っている場合は、新築時に増やした分の売却益を工事費用の一部に充てることが可能です。結果として区分所有者の負担分が減少し、自己負担の軽減が期待できるでしょう。
参照:Relife mode(リライフモード) くらしを変えるきっかけマガジン「マンションは建て替えするの?実施の流れや負担額を解説」
建て替えが決まったらするべきこと
マンションの建て替えが決まった際は、賛成と反対の2つの選択肢があります。どちらを選ぶかによってすべきことが異なるため、それぞれのケースについて確認しておくことが大切です。
賛成の場合
マンションの建て替えに賛成する場合は、工事期間中に暮らすための仮住まいを確保しなければいけません。仮住まいで生活し、建て替えが完了したら再入居する流れとなります。
注意すべきポイントは、マンションの建て替え費用に加えて、仮住まいの分の家賃や引っ越し費用が発生する点です。高額な自己負担が必要となるため、経済的に困難な場合は支援制度の利用を検討しましょう。
国や自治体が実施する制度の中には、建て替え費用の一部を助成するものがあります。また、自治体が運営する住宅に仮住まいできるケースもあるため、各種制度を調べてみるのがおすすめです。
反対の場合
建て替えに反対する場合は、マンションを立ち退くこととなります。立ち退きを選ぶのであれば、売渡請求権について理解しておかなければいけません。
売渡請求権が実行されると、マンションの住戸部分の売却を余儀なくされます。売却額は時価で計算されるため、場合によっては資金面で損をするでしょう。
建て替え費用を支払うよりも負担は抑えられますが、不利な条件での売却を迫られる可能性がある点には注意が必要です。
マンションを購入する際は気をつけよう
マンションの建て替えに賛成しても反対しても、ほとんどのケースで経済的な負担が発生します。金銭面のリスクを抑えるためには、老朽化や建て替えに関する知識を身につけたうえで、物件の購入を検討することが重要です。
特に築年数が古い物件を購入する場合は、管理組合から建て替えを打診される前に売却するのがおすすめです。売却して資金を確保できれば、安心して新たな住まいを探せるでしょう。
中古マンションを高く売るためには、リノベーションしておくのも選択肢のひとつです。特に水回りがきれいな物件は、資産価値が高まる傾向があります。
リノベーション費用がかさむ場合などは逆効果ですが、うまく活用すれば物件を高く売却することも可能です。
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マンションを建て替える場合、区分所有者である住民側に大きな負担がかかります。将来的に後悔しないためには、建て替えのリスクを踏まえたうえで購入を検討することが大切です。
建て替えに合意せずに物件を売却する場合は、資産価値を上げる方法としてリノベーションを選択肢に加えましょう。
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