胡蝶蘭というお花の種類をご存知でしょうか?胡蝶蘭はラン科ファレノプシス属の植物です。
名前の由来は、属名のファレノプシス(Phalaenopsis)というギリシャ語からきています。「Phalaina(蛾)」と「opsis(似る)」という2つの単語を合わせたものです。花の形が蛾に似ているということを表しています。しかし日本では、蛾のイメージが悪いので、「蝶が舞っているように見える蘭」という花名に変更にしたようです。
通常、1つの花は1ヶ月間くらい咲き続けます。花茎全体では、なんと2〜3ヶ月間ほど咲き続けるので驚きですね。花の寿命が長いということと、花の形や色のバリエーションも多いことが特徴です。今回はそんな胡蝶蘭について紹介していきます。
胡蝶蘭の原産はどこ?
胡蝶蘭の原産地は、東南アジアを中心とした熱帯〜亜熱帯地域です。主な原産地として有名なのは、フィリピンや台湾、インドネシアなどです。
胡蝶蘭には、原産地が暖かい地域なので寒さに弱いという特徴があります。日本での歴史は意外と浅く、明治時代にイギリスから伝わったそうです。。
今でこそ個人の観賞用としても人気の胡蝶蘭ですが、当時は温室栽培の技術がまだあまり普及しておらず、ごく一部の上流階級の人々だけが楽しめる高価なお花でした。
胡蝶蘭の特徴
大型の大ぶりな胡蝶蘭
花の大きさが11〜15cm以上のものは大型の胡蝶蘭です。古くからある大型の胡蝶蘭は、豪華な印象です。そのゴージャスさゆえに、贈り物によく使われます。開業・開店祝いでよく見かけるのが大型の胡蝶蘭になります。
品種は、サンライズスター、白コチョウラン、コチョウラン赤リップ、コチョウランピンク、パープルエレガンス、大輪ブルーエレガンスなどになります。盛大な贈り物として胡蝶蘭を選ぶ時には、大型を選ぶと相手も喜んでくれるのではないでしょうか。
中型の胡蝶蘭
花の大きさが3〜6cm程度のものは中型の胡蝶蘭です。見た目が愛らしくて育てやすいため、友人・知人・家族への記念日などのプレゼント利用が多いです。「大型にするのは大げさ過ぎるけれど、小型だと少し物足りない…」という時に選ぶとよいでしょう。
品種は、ミディコチョウランイエロー、ミディ胡蝶蘭アマビリス、ミディ胡蝶蘭フーシェンズグラッドリップ、ウェディングプロムナード、満天紅、中輪ブルーエレガンスなどになります。結婚記念日や誕生日などで胡蝶蘭を贈る時に、適している大きさが中型と言えるでしょう。
小型の小さな花の胡蝶蘭
花の大きさが2〜4cm程度のものは小型の胡蝶蘭です。テーブルの上にも乗せることが可能で、狭い部屋でも馴染むと人気になった新しいタイプの胡蝶蘭です。小さくて飾りやすいため、自宅用・お土産用の利用が多いです。
品種は、ザルツマン、サクラヒメ、ピンクエレガンス、ダイアモンドミキ、紫式部などになります。どれも小さくて可愛らしい胡蝶蘭なので、例えば独り暮らしをしている方や、同棲しているカップルへの贈り物として適しているのが小型と言えるでしょう。
胡蝶蘭の年間スケジュールは?
苗を購入してから、収穫までの合計期間は約1年間となります。順を追って解説します。
5〜7月に苗を購入して植え、5月以降、新しい根が生えてきたら肥料を与えましょう。1〜5月に花が咲きます。2年に1回、5〜7月に植え替えをします。
例えば4月に苗を購入して植えれば、来年の4月には胡蝶蘭が楽しめるということです。1年間は長く感じるかもしれませんが、綺麗な胡蝶蘭が咲くまで待つというのも1つの楽しみと言えるでしょう。
1.苗を購入する際に気をつけるポイント
胡蝶蘭の苗にはいくつか種類があります。フラスコ苗・実生苗・メリクロン苗などです。フラスコ苗とは、内部が無菌状態になっている苗です。実生苗とは、花同士を交配させて種を取った苗です。また、実生苗の中には、1つの株の花粉を同じ株のめしべに交配させて取れたセルフ苗と、別の個体同士を交配させて取れたジブリング苗があります。
メリクロン苗とは、良い個体をバイオ技術で増殖させた苗です。一般的には育てやすいフラスコ苗を購入するとよいでしょう。環境に対して敏感なので、購入したら早めに鉢に移してくださいね。
2.育苗
胡蝶蘭のフラスコ苗を例に育苗について説明します。購入したらビンから取り出して病気などを防ぐためにも、葉や根についている寒天培地を水で洗い流しましょう。洗い流した後に寄せ植えをします。
フラスコ苗は、直射日光は厳禁なので屋外で作業しないように気をつけてください。胡蝶蘭の詳しい栽培ステップについては、後で紹介しますので参考にしてみてくださいね。
3.開花
開花は3月、4月、5月頃です。1月、2月はまだ胡蝶蘭の花芽が伸びてきている途中か、休んでいる季節になります。花の状態によって変わりますが、水やりの頻度を控えめにして、温度も18度程度を下回らないようにして様子を見ます。乾燥しやすい季節なので、葉に霧吹きをするのを忘れないでくださいね。
3月、4月、5月は花が咲いてくる季節です。水やりの頻度を冬より少し増やしましょう。乾いたら水をあげるようにすれば十分です。しかし水やりの頻度が増えすぎると、花が咲いている期間が少なくなってしまうので気をつけてくださいね。
4.花を楽しめる期間
胡蝶蘭を楽しめる期間は、平均的に1〜3ヶ月と長居です。上手に手入れをしてあげれば、なんと数年間も花を楽しめるという専門家の意見もあります。胡蝶蘭を数年間、楽しむ方法を解説します。
胡蝶蘭が花落ちしてしまったら、株と茎を支えていた支柱を外します。胡蝶蘭の株についている節を、下から数えて4節ほど残して、その上はカットしてしまいましょう。
花がつく茎(花茎)を残したままだと、株の栄養が取られてしまって翌年花を咲かせる力がなくなってしまうのです。花茎は切り落としても、翌年には違う場所から新しく伸びてきます。じっくり育てていきます。
胡蝶蘭の栽培におけるポイント5つ
1. 日当たりや場所
5〜9月下旬は家の外で管理し、冬は暖房の効いた室内で育てます。この時に、直射日光に当たると葉っぱが焼けて枯れる可能性が高いので気をつけてください。室内ならレースのカーテン越し、屋外なら遮光ネットで日差しを避けるとよいでしょう。
2. 水やり
季節ごとに水やりの回数は変えましょう。枯れさせてしまう原因の多くは、水の与えすぎによる根腐れです。特に冬は根腐れしやすいので、完全に水苔が乾いていて根元が乾燥しているかを確認してから水やりをしてくださいね。一方、夏は乾燥しやすいので、葉っぱに水を与えて湿度を調整するようにしましょう。
3. 肥料
5月になって新しい根が生えてきているかどうかで、肥料を追加で与えるかを判断します。新しい根が伸びてきたら、化成肥料の置き肥をするか、9月いっぱいまで1週間に1回薄めた液体肥料を水やりの代わりに与えていきます。この時、液体肥料は洋ラン用のものを使ってくださいね。
4. 用土
胡蝶蘭は樹上に着生して生育するため、一般の園芸用培養土は使いません。胡蝶蘭におすすめの用土は、水苔やバークなどになります。土が変わることで育て方も変わってくるので、初心者の方は胡蝶蘭に関する本を1冊購入して、読んでみるとよいかもしれませんね。
5. 病気や害虫
胡蝶蘭の病気で多いものが軟腐病になります。軟腐病に感染すると栄養分の通り道が塞がれるため、株全体が枯れてしまいます。原因には細菌性と真菌性の2種類があり、症状や対処方法が異なります。胡蝶蘭につく害虫の代表的なものは、カイガラムシやハダニになります。風通しをよくすることで害虫を遠ざけることができるので、風通しのよい場所を探しておきましょう。高さ50cmくらいの台の上に置くのが最適です。
胡蝶蘭の栽培ステップ
1. 苗を購入する
まずは苗を購入しましょう。一般的にお花屋さんや胡蝶蘭専門店、ホームセンターなどで購入することができます。最近は苗だけではなく、肥料や説明書も合わせて「胡蝶蘭セット」として売られていることも多いようです。
2. 植える
胡蝶蘭は寒さに弱いので、地植えはしません。鉢に植えるようにしましょう。鉢は、水苔なら乾燥しやすい素焼き鉢、バークならプラスチックの鉢を使うのがおすすめです。
3. 水やりと追肥
定期的に水やりと追肥を行うようにしましょう。水やりは5月ごろの生育期にはたっぷりと行い、冬は乾燥を感じた2〜3日後に行うくらいで大丈夫です。追肥は、5月になって新しい根が生えてきていたら行いましょう。
4. 花が咲いてからの手入れ
花が咲いたら支柱を立てて、上向きになるよう支えてあげましょう。きっちり括らずに、花茎を折ってしまわないよう緩めに括るとよいですよ。ラン用の支柱が売っているので使ってみてくださいね。
5. 花が枯れた後にすること
枯れてしまった花は一輪ずつ手で摘んで取り除き、他の花と当たらないようにしましょう。そして茎の半分くらいまで花が咲き終わったら、花茎切りを行います。夏頃までに再び花を咲かせることがあるので、下から4節くらいを残して切るようにしましょう。
胡蝶蘭の植え替え
1.植え替えを検討する基準
2年以上植え替えていない時や3本立てや5本立てなど寄せ植えの場合は、2年に1回植え替えを行いましょう。花が咲く5〜7月の後が、最も植え替えに適した時期です。
2.水苔を使う胡蝶蘭の植え替え方法
水苔を使う胡蝶蘭の植え替えは、まず用土である水苔を根の周りに巻きつけます。根が完全に隠れて、鉢にやっと入るくらいの多めの量をつけるようにしてくださいね。そして、鉢の中に押し込んで完了です。鉢の上が2cm程度空くくらいまで強く押し込んでください。
3.バークを使う胡蝶蘭の植え替え方法
バークを使う胡蝶蘭の植え替えは、まずバークひと摑み分をポリポットに入れます。次に15粒ほど肥料を入れて、さらに上からバークひと摑みをポリポットに入れます。根が肥料に触れると胡蝶蘭を傷めてしまう可能性があるので、肥料が見えなくなるよう入念に敷きましょう。
そして胡蝶蘭を中心に入れて、周りにバークを入れます。胡蝶蘭の株と根の間にもしっかり敷き詰めてくださいね。バークが固くなるまで粘土ベラや割り箸で押し込みましょう。
最後に
華麗な胡蝶蘭は贈ると喜ばれることが多く、自分用として買っても嬉しくなる素敵なお花です。今回は苗からの育て方も紹介したので、イチから育てる楽しさを味わってみてもよいですね。
花が咲いた時には、気持ちまでパッと明るくなれるのではないでしょうか。
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