戸建て住宅や建物の屋根瓦は、多くが定期的な塗装工事を必要とします。ただし、一部の屋根瓦は塗料との相性が悪く、塗装工事によるメンテナンスは必要ありません。どの種類が必要ないのでしょうか。
この記事では、屋根瓦の種類別に塗装工事の必要可否や工事の実施時期、費用相場などに関して、ご紹介します。屋根の状態が気になる方、戸建て住宅にお住まいの方は、最後までご覧ください。
屋根瓦の塗装必要可否を種類別に紹介
住宅や建物に使われる屋根瓦は、主に以下の4種類に分けられます。
- 粘土瓦
- セメント瓦
- 金属瓦
- スレート瓦
個々の特徴と塗装工事の必要可否に関してみていきましょう。
粘土瓦
粘土瓦は和瓦とも呼ばれ、いぶし瓦や陶器瓦などが該当します。日本家屋や神社などに使われているタイプの瓦です。粘土瓦の場合、塗装工事は必要ありません。防水性や耐久性、耐火性に優れており、紫外線や風雨によるひび割れも起きにくいです。
また、粘土瓦は塗膜がすぐに剥がれやすく、塗料を塗るとかえって美観性が低下します。お住まいにいぶし瓦や陶器瓦を使っている場合、塗装工事は不要です。
いぶし瓦
焼き上がりの最終工程で、窯の中で瓦を燻して仕上げるタイプの屋根瓦です。瓦の表面に銀色の炭素皮膜が形成され、独特の輝きを放ちます。年月が経つと炭素皮膜の変色や剥離が発生しますが、耐久性が高いため保護機能に大きな影響は及ぼしません。
いぶし瓦は時間の経過と共に、素材の味わい深さや重厚感を感じられる点も魅力です。
陶器瓦
陶器瓦は下地を乾燥させたあと、表面に釉薬(ゆうやく)を塗って高温で焼き上げた瓦です。釉薬によって防水性や耐久性が高まり、きれいな状態を長期間維持できます。経年劣化にともなう色あせやツヤの消失を心配する必要もありません。
また、釉薬の選択肢が多く、好みの色合いに瓦を着色できます。
セメント瓦
セメント瓦はセメントと砂、水を混ぜ合わせてできた瓦です。セメント瓦とモニエル瓦が該当します。セメント瓦は防水性が低く、雨水を吸い込みやすいため、10年〜15年周期で塗装工事が必要です。
塗装の必要性を見分ける判断基準は、経年劣化の有無になります。塗料の色あせやコケが目立つ場合は、塗装の塗り替えを検討しましょう。
セメント瓦とモニエル瓦
塗装の仕方が異なるため、ご自宅の屋根材にセメント瓦とモニエル瓦のどちらが使われているか、見極めることが重要です。以下の表に特徴をまとめました。
セメント瓦 | モニエル瓦 | |
見分け方 | ・小口がなめらか ・塗膜が傷つきやすい | ・小口に凹凸や高さがある ・触ると手に粉が付着する |
特徴 | ・防水性や耐傷性が低い ・塗膜が劣化しやすい | ・塗膜が密着しづらい ・工期が伸びやすい |
セメント瓦はモルタルを主成分とする屋根瓦です。モニエル瓦より防水性や耐傷性が低く、定期的な塗装メンテナンスが必要となります。
一方、モニエル瓦は、表面にスラリー層と呼ばれる着色材が吹きかけられた屋根瓦です。防水性や耐久性はセメント瓦より優れています。一方、スラリー層の影響で塗料が密着しづらく、塗膜の剥離が起きやすい点がデメリットです。
高圧洗浄や下地補修で念入りにスラリー層を落としてから、新しい塗料を塗る必要があります。早期劣化を防ぐため、モニエル瓦の施工に慣れた塗装業者に工事を依頼しましょう。
金属瓦
金属瓦とは鋼板やアルミニウムなどを使った屋根瓦です。ガルバリウム鋼板やトタンなどが金属瓦に該当します。金属瓦は耐震性や防水性、耐久性に優れている点が特徴です。比較的リーズナブルな価格設定で、近年人気が高まっています。
反面、サビや衝撃に弱く、定期的な屋根塗装工事が必要です。トタン屋根の場合は5〜10年、ガルバリウム鋼板は10〜15年が、塗装工事をおこなう目安になります。
サビを放置すると、屋根全体にダメージが拡がるため、早急に対処しなければなりません。最悪の場合は屋根カバー工法や葺き替えなど、全面リフォームが必要になります。
スレート瓦
スレート瓦とは、セメントを主成分とする屋根瓦です。塗装業者が扱いに慣れており、施工品質のバラつきを抑えられます。軽量で耐震性にも優れている一方、スレート瓦は塗膜が薄いため、紫外線に弱いです。
紫外線のダメージで塗膜の劣化が進むと、雨水を吸収しやすくなります。お住まいがスレート屋根の場合、7〜10年を目安に塗装工事が必要です。塗膜の劣化が進むと、塗膜の膨張や収縮を繰り返し、やがて瓦の反りや雨漏りを招きます。
工期を逃すと色あせやコケが発生し、最悪の場合は屋根材を新しく変えなければなりません。お住まいがスレート瓦の場合、劣化のスピードが早い点を認識しておきましょう。
屋根瓦を塗装する目的
屋根塗装工事が必要な目的は、以下の4点があげられます。
- 工事費用の高騰を避ける
- 紫外線や風雨から屋根を守る
- 室内の快適性を高める
- 住宅の外観を美しく保つ
定期的な塗装メンテナンスによって、屋根材の早期劣化を防ぐのが目的です。屋根材の強度が低下した場合、屋根の葺き替えやカバー工法など、全面リフォームに踏み切らなければなりません。
塗装工事によって塗膜の防水性や耐久性が高まると、屋根材へのダメージを最小限に抑えられます。また、断熱塗料や遮熱塗料を使用すると、ご自宅の快適性が高まる点もプラスです。
工事費用の高騰を避ける
定期的な屋根塗装によって塗膜の防水性や防汚性を高め、全面リフォームの必要性を最小限に抑えます。仮に既存の屋根材の劣化が酷く、屋根の葺き替えが必要になった場合、工事費用は100万〜170万が相場です。
屋根材の種類や屋根面積によっては、200万円以上の工事費を支払わなければなりません。
また、葺き替えの場合は屋根材に加え、下地の防水紙や野地板も新調する可能性があるため、工事費用が高騰します。塗装工事の目的は、塗料の機能性回復と屋根材の保護です。定期的に屋根塗装を実施すると、屋根材が長持ちして工事の頻度を少なくできます。
紫外線や風雨から屋根を守る
塗装工事では塗料を塗り直し、新たに塗膜を形成します。塗膜の役割は、紫外線や風雨から屋根材を守ることです。塗膜に紫外線や風雨のダメージが蓄積すると防水性が低下し、ひび割れやコケが発生します。
劣化が進むと屋根材の破損や雨水の浸水が発生し、屋根材を新たに新調しなければなりません。屋根塗装によって塗膜の防水性や耐久性を高め、屋根材の劣化を防ぎましょう。
室内の快適性を高める
屋根塗装での塗料に断熱塗料や遮熱塗料を利用すると、快適な室内空間を形成できます。遮熱塗料は太陽光を反射し、屋根の表面温度を下げる機能を持つ塗料です。遮熱塗料を使った住宅は、夏の室内温度が2〜3℃低くなるとの研究結果が出ています。
ガルバリウム鋼板やトタンなど、お住まいの屋根材に金属瓦を使用している場合におすすめです。一方、断熱塗料は外熱の侵入に加え、室内からの熱放出を防ぐ機能を持つ塗料を指します。
室内の温度を一定に保てるため、季節を問わずご自宅でリラックスした時間を過ごせるでしょう。エアコン使用量の増大や電気代の高騰にお悩みの方におすすめです。
住宅の外観を美しく保つ
美観性の維持も屋根塗装工事をおこなう重要な目的の1つです。長年のダメージによって塗膜が劣化すると、色あせやサビ、コケなどが発生します。工期が遅れるほど劣化症状が拡がり、住宅全体の美観性が低下するでしょう。
定期的な塗装メンテナンスによって、屋根材の保護と美観性の維持を図ります。
屋根瓦の塗装工事を検討すべきタイミング
ご自宅の屋根瓦に以下の劣化症状が見られた場合、塗装工事を検討しましょう。
- 屋根材の破損
- 塗膜の剝がれや劣化
- コケやカビの発生
- サビの発生
- 瓦の反りまたはひび割れの発生
- 棟板金の浮きまたは釘抜け
工期が遅れるほど塗装の防水性が低下し、雨漏りの発生や屋根材の腐食を招く可能性が高まります。
屋根瓦の塗装にかかる工事費用【セメント瓦編】
30坪の2階建て戸建て住宅の屋根にセメント瓦を使用していた場合、工事費用は60万〜80万円が相場です。塗装面積や塗料の種類、隣家との間隔など、さまざまな条件に応じて工事費用は変動します。
また、屋根瓦の劣化状況が進んでいる場合、屋根塗装だけでは不十分です。屋根の葺き替えまたはカバー工法を選択し、屋根材の新調や追加が必要です。屋根のリフォーム工事が必要となった場合、最低でも100万円以上の工事費が発生します。
外壁塗装も同時に実施した場合
屋根塗装と外壁塗装の工事を同じタイミングで実施した場合、工事費用は110万〜160万円が相場です。1度に支払う費用は多くなりますが、長期的な視点でみると同じタイミングで工事をした方が、多くのメリットを得られます。
屋根塗装と外壁塗装のセット工事を利用した場合、工事のたびに足場を組み立てる必要がありません。足場代や人件費を削減できます。また、メンテナンス管理の負担を削減できる点もプラスです。
外注先を選定する際は、屋根塗装と外壁塗装の双方に対応しているかを確認しましょう。サイト上で施工事例や得意分野を閲覧してから、依頼先を決めます。
屋根瓦の塗装工事前に理解しておくべき6つのポイント
屋根塗装工事を実施する前に、以下6つの内容を理解しておきましょう。
- 塗料のグレードによって費用は変動する
- 粘土瓦もメンテナンス自体は必要になる
- 塗装を自分でしない
- 外壁塗装と同じ時期に工事を実施する
- 複数の工事業者から見積を取得する
- 塗装専門業者や工務店に工事を依頼する
ポイントの内容を一つひとつみていきます。
1.塗料のグレードによって費用は変動する
外壁塗装と同様、屋根塗装の工事費用も使用する塗料のグレードによって、大きく変動します。屋根塗装で主に使われる塗料の特徴と単価に関して以下の表にまとめました。
塗料の種類 | 特徴 | 耐用年数 | 単価(1㎡あたり) |
アクリル塗料 | ・施工しやすい ・色の選択肢が多い ・紫外線に弱い | 5年~7年 | 1,500円 |
ウレタン塗料 | ・弾力性に優れる ・ひび割れが起きにくい ・紫外線に弱い | 7年~10年 | 1,500円~2,200円 |
シリコン塗料 | ・耐水性と耐候性に優れる ・塗膜が剥がれにくい ・機能性に優れた製品は単価が高い | 10年~15年 | 2,500円~3,500円 |
フッ素塗料 | ・セルフクリーニング機能を持つ ・色あせや劣化がしにくい ・住宅より建物に使用されるケースが多い | 15年~20年 | 4,000円〜5,000円 |
遮熱塗料 | ・夏の暑さを軽減できる ・防汚性に優れる ・住宅によっては、断熱材が必要になる | 15年~20年 | 4,500円~5,500円 |
無機塗料 | ・防汚性や耐候性に優れる ・コケやカビが発生しにくい ・仕上がりの品質にバラつきが出やすい | 20年~25年 | 4,500円〜5,500円 |
光触媒塗料 | ・セルフクリーニング機能を持つ ・メンテナンスの負担を軽減できる ・ひび割れが発生しやすい | 15年~20年 | 5,000円~6,000円 |
遮熱塗料 | ・年間を通して快適に過ごせる ・電気代やエアコン使用量を削減できる ・単価が高い | 10年~15年 | 5.500円~6,500円 |
コストパフォーマンスに優れているのは、シリコン塗料です。防汚性や耐水性、耐候性などに優れ、耐用年数も10年〜15年に設定されています。工事での使用頻度も高く、依頼先が限定される心配もないでしょう。
近年はウレタン塗料との価格差も縮まっており、利用しやすくなっています。また、ご自宅の快適性を高めたい場合は、断熱塗料を選ぶのがおすすめです。室内を一定の温度に保つ機能があり、夏の暑さと冬の寒さを和らげられます。
2.粘土瓦もメンテナンス自体は必要になる
粘土瓦は塗装の必要がない一方、瓦や防水シート、漆喰などのメンテナンスは必要です。台風や地震などの影響で、ひび割れが発生する場合があります。仮に屋根瓦の一部が破損した場合、雨水の浸水を完全に防げません。
破損箇所から雨水が浸水し、下地材の劣化やコケの発生、雨漏りなどを招きます。ご自宅の屋根瓦にひび割れが発生した場合は、すぐに補修工事を依頼してください。また、防水シートや漆喰は、20〜30年周期で交換をしましょう。
3.塗装を自分でしない
DIYでの屋根塗装を推奨できない理由は3つあります。1つめの理由は仕上がりの品質にムラが生じる点です。屋根塗装は下地処理や下塗り、中塗りなど、さまざまな工程を踏んで進めていきます。特に下地処理は塗料の防水性と耐久性に大きく影響する工程です。
高圧洗浄で汚れや古い塗膜をきれいに落としたあと、ひび割れを補修します。汚れや塗膜を落としてから新たな塗料を塗り直さないと、塗料が均等に密着しません。塗料本来の機能が発揮されず、通常より早く塗膜が劣化します。
下地処理は実務経験や知識が求められるため、素人には難しいでしょう。また、仕上がりのムラを修正するため、塗装業者に再塗装を依頼すると、かえって工事費用が高騰します。
そして、3つめの理由は高所作業が危険な点です。屋根から転落した場合、骨折や頭蓋骨の損傷など、重傷を負う可能性が高まります。負傷の具合によっては、日常生活に支障が及ぶケースも珍しくありません。
慣れない高所作業によって、屋根瓦を破損させる可能性も考えられます。上記3つの理由から屋根塗装のDIYはおすすめできません。塗装業者や工務店に依頼しましょう。
4.外壁塗装と同じ時期に工事を実施する
屋根塗装は外壁塗装と同じタイミングで、工事を実施するのがおすすめです。別々の時期に工事を実施した時と比べ、数十万円規模の工事費を削減できます。工事費用で大きな割合を占める項目は、足場代と塗料代、人件費の3つです。
30坪の住宅や建物を工事する場合、足場代は約15万〜20万円が相場となります。屋根塗装と外壁塗装の工事をまとめて依頼すれば、工事のたびに足場を設置する必要はありません。
塗料や職人の手配も1度で済むため、経費の高騰や納期遅延も避けられるでしょう。
5.複数の工事業者から見積を取得する
外注先を選定する際は、複数の工事業者から絞り込むようにしましょう。1社からしか見積を取得しなかった場合、工事費用の相場を正確に掴めません。担当者との相性も見極められず、発注後にトラブルを招く可能性が高まります。
ミスマッチを避けるため、相見積によって各業者の費用や提案を比較してから、依頼先を決めましょう。
6.塗装専門業者や工務店に工事を依頼する
塗装専門業者に依頼するメリットは、コストパフォーマンスに優れている点です。豊富な実務経験やノウハウを持つ職人が多数在籍しており、高品質な仕上がりが期待できます。
また、自社施工を強みとする業者に依頼した場合、工事費に中間マージンや作業料金が追加される心配もいりません。下請けに作業を振る機会が多いハウスメーカーと比べ、工事費用を大幅に削減できます。
一方、工務店に依頼した場合は、自身の要望に対して柔軟な対応を望める点がメリットです。地域密着型の経営スタイルを掲げる工務店も多く、予算に見合った提案が得られます。
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