これから自宅をモルタル壁にしようと考えている人も、現在モルタル壁の人も、どのような性質を持っている外壁材なのか知っておく事をおすすめします。モルタル壁が持つメリットとデメリットや、それぞれの種類についての知識は施工時に有益です。
この記事では、モルタル壁の特性だけではなく、メンテナンスをするべき劣化のサインや、業者に修繕を依頼する時の費用相場についても解説します。また、DIYについてもご説明するので、検討している人はぜひ参考にしてください。
モルタル壁とは?
モルタルとは、水と砂とセメントを混ぜ合わせたペースト状の素材です。多くの場合は、水:セメント:砂=1:2:5の割合でつくられています。
モルタルの起源は、レンガ造りの建物を建てる際によく活用していたヨーロッパです。耐火性の高さが評価されて関東大震災後以降に日本でも取り入れられるようになりました。
住宅のセオリーが和風から次第に洋風へと変わったため、昭和後期に人気を博し、1990年以前に多く使われていた外壁材です。
モルタルを外壁材として使う場合は、職人が全て手作業で仕上げるため、費用もやや高額で施工時間も長くかかります。現在は使用されることが少なくなり、代わりにサイディング外壁と呼ばれる板状の外壁材が多用されるようになりました。サイディング外壁について詳しく知りたい人は、「サイディング外壁とは?」の章を先にお読みください。
しかし、サイディング外壁が主流になったとはいえ、デザイン性の高さや防火性などを評価したうえで、積極的に取り入れている業者も少なくありません。
モルタルは表面に凹凸があるものが多く、経年により表面塗装の防水機能が低下したりひび割れが起こるなどの劣化症状が現れますが、メンテナンスをきちんとすれば30年以上も寿命をのばす事が可能な優れた外壁材です。
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モルタル壁のメリット
モルタル壁の主なメリットは以下の通りです。
意匠性に優れ、好みのデザインにできる
モルタル壁はデザイン性の高さが大きなメリットのひとつです。
サイディング壁のように継ぎ目がないため、壁全体に一体感が生まれます。外観の継ぎ接ぎのようなイメージをなくして滑らかにしたい人にはぴったりです。また、それだけではなく、タイルのように模様をつくる事もできます。
また、職人が手作業で施工するので、色や表面の仕上げの風合いのバリエーションが豊富なところもポイントでしょう。温かみがある雰囲気を演出できることや、和風・洋風問わず合わせられるのも、モルタル壁ならではの特徴です。
モルタル壁のデザインは、リフォームで塗り替えて一新できるというメリットもあります。お家全体の雰囲気を大きく変えたいときは、違うデザインに塗り替えるのもひとつの方法です。
耐火性・遮熱性が高い
モルタル壁は耐火性に優れています。
モルタルの主成分は水や砂、セメントなどの不燃性のものです。そのため火災時にはサイディング外壁よりも火が広がりにくいという特性を持っています。
自宅はもちろん、隣家に燃え広がったりもらい火を受けてしまったりする事も防げるのが特徴です。
モルタルは建築基準法において「不燃材料」と認定されています。不燃材料とは、加熱開始後20分以上「燃焼しない」「防火上有害な変型、溶融、亀裂などの損傷を生じない」「避難上有害な煙またはガスを発生しない」という3つの要件を満たす材料です。
>>災害に強いモルタル外壁を知る(日本住宅モルタル外壁協議会)
>>不燃材料を定める件(国土交通省)
加えて、太陽光で外壁の表面温度がほとんど上がらないという遮熱性の高さもメリットとして挙げられます。外壁が熱されない事により、夏場でも室温の上昇を抑えられるので、快適に過ごせます。
金属の外壁材やサイディングボード外壁は、表面に遮熱効果を持つ塗料を塗らなければなりません。この塗料はあまり安価ではないため、コスト面で負担がかかります。しかし、モルタル壁は元々遮熱性を持っているため、塗料の上塗りが必要ありません。
メンテナンス性に優れている
板を接いで施工するサイディングボードは、定期的にその継ぎ目(目地)にシーリング材(コーキング材)による補修を行う必要があります。しかし、モルタル壁には継ぎ目がないため、その手間がかかりません。
また、耐久性に優れているため破損しにくいという特長も持っています。瓦や木片などの飛来物がぶつかって壁が凹んだり、貫通したりするといった心配が少ないため、頻繁なメンテナンスが不要です。加えて、モルタルを厚くしたり、丈夫な下地を選べば、より頑丈にできるため耐久性を上げられます。
耐用年数が20年以上と、サイディングボードよりも長い事もメリットです。
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>>外壁のコーキングとは?耐用年数や補修方法について解説
DIYで補修しやすい
モルタル壁には経年によってクラック(ひび割れ)や剥がれなどの劣化症状が起きますが、軽度のものであればDIYで補修可能です。モルタルのDIYについて先に詳しく知りたい人は、後述の「モルタル壁をDIYする方法」を先にお読みください。
クラックの場合は補修方法が異なります。浅いクラックであれば「スプレータイプの補修材」を使うのがおすすめです。汚れを落としてからスプレータイプの補修材を吹きかけ、乾燥させて塗装するだけで簡単に補修できます。
深いクラックの場合は「充填剤」を用意しましょう。汚れを落としてから充填剤を塗布し、コテやヘラなどで均等に伸ばします。乾燥してから塗装すれば補修は完了です。
クラックの上から塗装するかどうかは必要に応じて決めましょう。あまり目立たないようであれば、塗装する必要はありません。塗装を失敗してしまうと見た目が悪くなるため、上手く塗れる自信がないのであれば避けておくのが無難です。
また、モルタル壁が剥がれている場合はセメントを塗り直す必要があります。放置しておくと雨水が浸入したり、湿気を吸ったりしてお家の内部の損傷が進んでしまうからです。
モルタルはDIYできる外壁材ですが、自分で完璧に補修する事が難しいため、仕上げは業者に任せましょう。
モルタル壁のデメリット
モルタル壁の主なデメリットは以下の通りです。
ひび割れが起きやすい
モルタル壁には継ぎ目がないというメリットがある反面、それが原因でクラックと呼ばれるひび割れが起きやすいというデメリットがあります。
サイディングボードの継ぎ目は緩衝材として機能しますが、それがないモルタル壁は地震などの揺れによってひび割れを起こしやすいのです。また、線路や道路に面している場合は電車や大型車による振動が原因になる事もあります。
加えて、モルタルは防水性が低いため、湿気と乾燥の繰り返しに弱いという事も原因のひとつです。湿り、乾き、という状態の変化が続くとひびが入りやすくなります。
他にも、経年劣化や壁内の水分が失われる事もひび割れだと考えられるため、外壁塗装から数年経過してクラックが起きた場合は経年劣化が原因だと判断して問題ありません。
ただし、数カ月しか経っていないにも関わらずクラックが起きた場合は、建設時に職人がミスをしてしまい、適切な塗装を行わなかった可能性が高いです。下塗りと中塗り、上塗りの工程の間に十分な乾燥時間をとらなかったり、適切な塗料を選べなかったりしたというミスが考えられます。
汚れやすい
モルタル壁は基本的に表面に凹凸がある外壁材です。仕上げ方によっては滑らかな質感に出来上がる事もありますが、基本的にはざらざらとした手触りが風合いを生み出します。
凹凸がある点は外観としては非常に優れていますが、汚れやすくなる点はデメリットです。凹凸に汚れが溜まってしまい、擦っても落としにくくなります。
また、汚れが雨で洗い流されにくいため、サイディングボードや金属を使用している壁よりも汚れが目立ちやすくなるのも特徴のひとつです。
汚れだけではなく、苔やカビの付着も起こりえます。モルタル壁は水分が蒸発しにくく、湿気を含みやすいのが特徴です。特に日光が当たりにくい部分には苔やカビが繁殖しやすいというデメリットがあります。
工期が長く施工費がやや高い
モルタル壁は全て職人の手作業によって施工されます。施工内容が複雑で作業も難しいため、すぐに出来上がる事はありません。
加えて、左官屋さんによってクオリティーも変わるため、必ずしも高品質な仕上がりが約束されるわけではないという点も意識しておきましょう。
一方、サイディングボードを使った外壁は「サイディングボード」と呼ばれる既存の外壁材を適しているサイズに切り貼りし、繋げ合わせて仕上げます。この工程に左官屋の手作業は不要なため、高い技術は求められません。継ぎ接ぎを行うだけなので、工期が短くて済むのが特徴です。
工期だけでなく、施工費の違いについても考えておく必要があります。モルタル壁の施工は職人が行うため、サイディングボードを使った施工よりも高い費用が必要です。
モルタル壁の持つメリットを優先したい人にとっては魅力的な外壁材ですが、コストカットを重視したい人にとっては選びにくい外壁材だと言えます。
モルタル壁の種類
モルタル壁は、表面の仕上げ方法にさまざまな種類があります。
リシン
リシン壁はモルタルで壁の表面を整え、その上から粒状に砕いた石にセメントや樹脂などを混ぜ、それを吹き付けて仕上げます。デザイン性が高く、表面がざらざらして光沢がない砂粒が散らばっているような仕上がりになるのが特徴です。
モルタル壁でよく使われるスタンダードな種類で、比較的安価な点がメリットで、新築でも多く使われています。
デメリットは壁面に細かい凹凸があるため、汚れやすいという点です。苔の発生確率も高く、防水性の低さも挙げられます。
スタッコ
スタッコはリシンを厚くする仕上げの方法です。仕上げたモルタルで壁の表面を整えた後、スタッコ材という塗料を吹き付けます。スタッコ壁はリシンより模様が大きく、立体感があるのが特徴です。
吹き付け後、そのまま固める「吹き放し仕上げ」と、吹き付けた後にローラーなどで押さえつけて凸凹をつぶす「ヘッドカット(凸部処理)仕上げ」の2種類があります。
メリットは、壁が立体的になり、重厚感や高級感のある仕上がりになる事です。デメリットとしては、リシンと似た特徴を持つため、凹凸が原因で汚れやすく、また施工に手間がかかる事が挙げられます。
吹き付けタイル
吹き付けタイルとは、結合材と寒水石や骨材などを混ぜ合わせたタイル材を、専用の「タイルガン」という機材で吹き付けて仕上げる方法です。リシンやスタッコは細かい砂や石などの材料を混ぜ合わせますが、吹き付けタイルはそれらを入れないため滑らかな質感になります。
表面が滑らかなため汚れも落ちやすく、弾性タイプを選ぶとひび割れもしにくくなるのが特長です。
左官仕上げ
左官仕上げは、職人がコテを使って外壁を仕上げる方法です。さまざまな模様の種類があるため、デザイン性に優れ、カラーやバリエーションが豊富なのでおしゃれな壁面にしたい人にぴったりでしょう。主にアイカ工業の「ジョリパット」やエスケー化研の「ベルアート」などの素材が使われます。
ハンドメイドな風合いが魅力で、一般的な店舗の内装に採り入れられる事も多い仕上げ方法です。
ただし、きれいに仕上げるためには、職人の熟練した技術が必要となります。
左官工事については以下の記事もぜひ併せて参考にしてください。
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ローラー仕上げ
ローラー仕上げは壁にローラーを使って塗料を塗る仕上げ方法です。均一に塗布しやすい事や、作業効率がよい事などから多くの作業現場で採用されています。
塗料が飛散しにくく、騒音を軽減できるという点は近隣への配慮にも繋がるでしょう。安全性も高いためメリットが多いのがローラー仕上げの特徴です。
モルタル壁の劣化サイン
モルタル壁は耐久性に優れているといっても、より耐久性を高めるためには定期的なメンテナンスが必要です。
モルタル壁のメンテナンスの目安は、一般的に10年と考えましょう。しかし、住宅の状況や環境などによって変わるため、10年経過していなくてもメンテナンスが必要になるケースは少なくありません。
ここでは、烈火のサインをご紹介します。
チョーキング
壁を触ると、手に白い粉がつく事をチョーキング現象といいます。チョーキングは経年劣化とともに起こる現象です。もちろん外壁が白ではない場合は、外壁と同じ色の粉が発生します。
チョーキング現象で現れる粉は、塗膜の表面が紫外線や雨風などによって劣化したものです。放置しておくと、塗料に防水性や防カビ性などが含まれている場合は、それらの機能が失われていきます。
また、チョーキング現象だけでなく、壁に水がかかった時に変色する場合も防水効果が失われてきている事の表れです。早急に外壁塗装を行いましょう。
汚れ、雨だれ
モルタル壁は表面がざらざらしているものが多いため、汚れが溜まりやすい外壁材です。新築時は防水効果が機能するため壁面の汚れは自然と落ちていきやすいですが、経年劣化が進むとその防水効果が薄れ、次第に壁に雨水が染み込みます。
特に窓の部分に溜まった汚れが雨によって洗い流され、壁を伝って汚れとしてこびりついたものは雨だれとなり見た目も悪くなるでしょう。雨だれは自然に消えず、掃除をしても自力で落とす事はほぼ不可能です。
ただの汚れや雨だれの跡だけなら耐久性には関係しませんが、美観は損なわれます。塗装し直して外観を復旧するのが最も効果的な手段です。
ひび割れ
モルタル壁は、継ぎ目がないため衝撃の緩和材がないというデメリットがあります。そのため地震だけでなく、経年劣化や地盤沈下などの衝撃があると、ひび割れが起こりやすくなるのです。
ひび割れは「クラック」と呼ばれており、クラックには主に「ヘアークラック」と「構造クラック」、「乾燥クラック」と「縁切れクラック」、「開口クラック」に分類されます。
ヘアークラック
幅0.3mm以下、深さ4mm以下の細くて浅いクラックをヘアークラックと呼びます。紫外線のような外的要因の影響でモルタルが乾燥して、収縮と膨張を繰り返すのがヘアークラックの原因です。主に経年劣化により起こるものなので、定期的なメンテナンスによって防止できます。
しかし、経年劣化ではなく、業者が施工時にミスをした場合もクラックが起きるため、あまりにも短い期間でクラックが頻発するようであれば業者に相談してください。
ヘアークラックはフィラーという下地材を塗り込んでから塗装を重ね、埋めれば簡単に補修できます。他には、セメント接着剤を注入してひびを埋めるという方法もありますが、こちらは業者に任せるのが賢明です。
細いひび割れなので、すぐに内部の腐食が始まるわけではありませんが、放置しておくと雨水の浸入や害虫の侵入が懸念されるためできるだけ早く補修しましょう。
構造クラック
幅0.3mm以上、深さ4mm以上の太くて深いクラックを、構造クラックと呼びます。構造クラックの原因は、主に地盤沈下や建物の基礎の劣化、補強材の不足や外的要因などです。建物に負荷がかかると内部にダメージが入って亀裂が走ります。
構造クラックは塗装だけでは補修できません。クラックの内部までシーリング材を行き届かせないと、ひび割れを防げないのです。まずクラックをV字型にカットし、内部をプライマー(下塗り剤)で下地処理し、シーリング材を注入します。
シーリング材はウレタン系や変性シリコン系の、重ねて塗装できるものを選んでください。シーリング材の乾燥後、表面を外壁塗装に使う塗料で仕上げれば補修できます。
また、カットせずにシーリング材を塗ると、クラックの奥に届かなくなってしまうためDIYする際は必ずカットする工程を組み込みましょう。
構造クラックが広がるとお家の基礎部分を支えられなくなるため、非常に危険です。倒壊する前に一刻も早く補修しなければなりません。どれだけ小さくても、深そうなクラックがあればすぐに業者に依頼して補修してもらうべきです。
乾燥クラック
気をつけて探さないと見つけられない程非常に小さいクラックを、乾燥クラックと呼びます。施工の際に塗料を乾燥する時、外壁材の水分が蒸発すると乾燥と収縮が繰り返される事が原因です。
乾燥クラックは塗膜の表面にしか現れません。乾燥すればクラックが広がる心配はないので、補修の緊急性が低いと言えます。塗装時の下塗りに「微弾性フィラー」と呼ばれるものを使用してから上塗りを「弾性塗料」で行うと乾燥クラックの防止ができるのでおすすめです。
縁切れクラック
以前塗っていた所と塗り足した所の塗料の間に起こるクラックを、縁切れクラックと呼びます。塗装を中断してから一定時間が経過し、それから塗装を再開すると前後で乾燥の度合いに差が起こり、これが縁切れクラックの原因です。
縁切れクラックは塗装時に注意を払っておけば防げます。補修のためにはシーリング剤を使い、幅0.3mm未満であればシーラーを使った下塗り処理だけで済ませられる程度の軽微なクラックです。このクラックの補修も緊急性は低いと言えます。
開口クラック
窓枠や扉などの端から斜めに入るクラックを、開口クラックと呼びます。開口部は開け閉めが頻繁に行われる部分です。そのため建物自体が揺れたり歪んだりしやすく、外壁がずれて端からクラックが発生しやすくなるのが原因です。
雨が浸入しやすい箇所なのでクラックを通してお家の内部に水が入り込み、内部に損傷を与える可能性が非常に高い、極めて危険なクラックだと言えます。開口クラックを見つけたら、すぐに業者に相談するべきです。
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カビ、コケ
モルタル壁は経年劣化につれて塗膜の防水機能が失われていくと、徐々に壁面に水が溜まるようになっていきます。
コケは日陰の湿った所に発生しやすい植物です。悪性物質を発し、外壁に含まれるセメントを脆くするため、劣化を早める悪影響を与える可能性があります。それだけではなく、アレルギーの原因にもなりかねないため、早めに対処しましょう。カビも同じく、日が当たらない湿気がある場所で増殖します。
リシンや弾性リシンなどの砂状の塗料材が使われているモルタル壁は、とくにカビやコケが増えやすい傾向にあり、近くに樹木があるとより発生しやすくなるのが特性です。
カビやコケなどは有毒であるだけでなく、お家の外観を損ねるというデメリットもあります。放置しておくとどんどん広がってしまうので、なるべく早く除去するようにしてください。
浮き、剥がれ
モルタル壁の表面に塗っている塗膜が浮いたり剥がれたりしているのも、劣化のサインだと言えます。これは塗膜の付着力が弱まり、下地から浮き上がると起きる現象です。この状態では、外壁の保護は望めません。
外壁が剥がれた部分から雨水が浸入したり虫が入り込んだりすると、更に壁の劣化が進み、内側の木材が腐食します。もし内側まで腐食してしまうと、大掛かりな修繕が必要です。
浮きや剥がれといった不具合は、水分が溜まりやすい住宅の下側の部分で起こりやすいので、気を付けて確認してみてください。雨水の浸入は住まいの内部の天敵です。すぐに外壁の塗り替えを依頼しましょう。
メンテナンス周期
モルタル壁は耐用年数が長く、20年以上の耐久力が見込めます。しかし、これは適切なメンテナンスを行った場合に成り立つもので、条件によっては耐用年数は短くなるため注意が必要です。
塗料の平均的な耐用年数は7年から10年とされています。モルタルはそれよりも耐用年数が長いとはいえ、メンテナンスは適切なタイミングで行うべきでしょう。
具体的には、モルタル壁は10年から15年に一度メンテナンスを行うのが望ましいです。
外壁は塗膜によって保護されていますが、その機能は経年劣化で失われていきます。耐用年数を超えると塗膜から外壁そのものに雨水が浸入し、更に家の基礎部分まで損傷が及んでしまうのです。
最悪の場合、傷んだ基礎部分が家を支えきれず倒壊してしまう恐れもあります。お家を守るためにも、耐用年数の前後には必ずメンテナンスを行いましょう。
特にモルタル壁は、サイディングボードや金属よりもクラックやコケなどに弱いという特徴があります。外壁塗装が必要になるかどうか、こまめに確認するのが重要です。
モルタル壁の補修にかかる費用相場
モルタル壁のメンテナンス方法は基本的に塗装工事です。カバー工法や張り替えという方法もありますが、この方法は壁の下地まで劣化が進んでいた時や壁を作り変えたいときに行います。
また、カバー工法や張り替えは費用が高くなるため、基本的なメンテナンスは塗装で行うのが一般的です。小さなひび割れ程度なら、ひびの補修をし、上から塗装すれば問題ありません。
モルタル壁の補修には部分補修や外壁塗装がありますが、ひび割れの補修なら1万円程度から対応してくれる業者もあります。また、足場代を含む塗り替えの相場は60万円から100万円程度を見ておきましょう。場合によってはそれ以上のコストがかかる事もあります。
より詳しい、塗装工事の坪数別の費用相場は以下の通りです。
坪数 | 費用相場 |
20坪 | 40万円~80万円 |
30坪 | 70万円~100万円 |
40坪 | 90万円~130万円 |
50坪 | 110万円~150万円 |
60坪 | 135万円~220万円 |
70坪 | 170万円~250万円 |
モルタル壁をDIYする方法
モルタル壁をDIYで施工したい場合は、施工方法を理解しておきましょう。手順さえわかれば素人でも施工できますが、業者に依頼する方が確実である事は間違いありません。DIYでできる修繕は範囲が狭いと考えてください。
DIYに必要な道具
モルタル壁をDIYで塗る時に必要な道具は、以下の通りです。
- トロ舟
- バケツ
- コテ
- コテ板
- ひしゃく
- スコップ
- 計量用カップ
- ゴム手袋
トロ舟とは、モルタルを練る時に使用する大きめのプラスチック容器の事です。
モルタルが少量の場合は、バケツでも代用できます。プラスチック製のバケツは破損の恐れがあるので、壊れにくい左官用のバケツがおすすめです。
コテは、モルタルを壁に塗る時に使用します。コテにはその用途に応じていくつか種類がありますが、一般的にモルタルを塗る時には先が尖っている「中塗ゴテ」が使いやすいです。
本格的にDIYをする場合は、仕上げに使う「角ゴテ」、目地仕上げで使用する「目地ゴテ」などを揃えておきましょう。コテのセット品も販売されています。
コテ板はプラスチックや木材でできており、モルタルを必要な分だけ乗せて手元に置いておくために使う道具です。ひしゃくはモルタルをすくう時に使うので準備しておきましょう。
スコップはモルタルを配合して混ぜる時に使いますが、分量が多い場合は鍬を使うと効率がよくなります。
セメントや砂を計量する時には、計量用のカップが便利です。モルタルはアルカリ性のため、肌を守るために厚手のゴム手袋も準備してください。
DIYに必要な材料
モルタルを作るのに必要な材料は、以下の通りです。
- セメント
- 砂
- 水
- モルタル混和材
- 接着増強剤
- 色粉
セメントには種類がありますが、モルタルを塗る時に使用するのはポルトランドセメントがおすすめです。ポルトランドセメントはセメント生産量の9割を占めていて、建設現場でよく使われています。また、モルタル壁に色を付けたい場合は、セメントは白い色を選びましょう。
砂はホームセンターなどに、「モルタル・コンクリート用」の砂が売っています。もしくは、水はけのよい川砂を選んでください。
モルタル混和剤は、水が少なくても材料を簡単に混ぜ合わせられるうえ、強度を高める事が可能です。また、コテの滑りがよくなり、きれいに塗れるでしょう。
接着増強剤は、モルタルの接着力を高める役割を持っています。モルタルに混ぜると強度や性能が増し、施工後のクラック防止にも繋がるため、できれば使いたいアイテムです。なお、モルタルに色を付けたい場合は色粉を使用しましょう。
モルタルの作り方
まず、セメントと砂を1:3の割合で配合し、トロ舟やバケツに入れます。均一になるように丁寧に混ぜてから、セメントの半分ほどの量の水を加えましょう。水を加える際には、硬さをチェックしながら少しずつ足していくのがポイントです。水を入れすぎるとモルタルを塗る時に流れてしまうので、粘り気が生まれる程度を目安にしてください。
セメントと砂は、分量により性質や強度が変わります。一番強度が強いのがセメント、次にモルタル、その次がコンクリートです。
それぞれ使われる材料によって呼称が変化します。セメントは砂利を含まない水とセメントだけを混ぜたもので、クラックの補修に使われる頻度が高いです。モルタルは水とセメント、砂を混ぜたもので、壁に塗って使われます。コンクリートは水とセメント、砂と砂利を全て混ぜ合わせたものです。
上手くできるか不安な方は、最初からセメントと砂が配合されており、水を加えるだけでモルタルが作れる「インスタントセメント」という製品を活用するとよいでしょう。
仕上げ
モルタルを塗る時は、利き腕と逆の上側から塗りましょう。コテを使う場合は、浮かすように動かすと綺麗に仕上がります。最後に全体をならすのを忘れないようにしてください。
モルタル壁は、仕上げ方法により雰囲気が変わります。ローラー、スプレーガン、コテを使う3つの方法です。
ローラーは塗料を均一に仕上げられ、スマートな印象になります。ローラー専用の塗料が販売されているので、ローラーを使いたい人は購入しておくとよいでしょう。また、ローラーは数種類あるので、必要なサイズや好みの仕上がりに合わせて選んでください。実際にホームセンターで確認するのがおすすめです。
スプレーガンを使う場合は、スプレーガンに塗料を入れて、それを飛ばして仕上げます。コードレスタイプとコンセントタイプがあり、電源が確保できる環境かどうかによって選びましょう。一度に広範囲を塗れるのでローラーよりも作業スピードが速くなり、アートな印象の壁に仕上げられます。
コテは仕上げる人の技術によりますが、さまざまに壁をデザインできるアイテムです。初心者であれば、コテを動かして塗り跡を残すと比較的簡単かつおしゃれに仕上げられます。慣れてきたらさまざまな模様をつけるように工夫すると、ハンドメイドの風合いが出て、味わい深い壁になるでしょう。
DIYの注意点
ここでは、モルタル壁をDIYする時に注意するべき以下の2点について解説します。
- 安全対策
- 周囲を養生する
安全対策
モルタルは強いアルカリ性のため、素手で触ると手が荒れてしまう可能性があります。
そのため、必ず防水性のゴム製手袋をしてから作業を開始してください。また目に入ると危険なので、ゴーグルも装着しましょう。
セメントと砂を混ぜる時には微細な粉塵が周囲に飛散するため、吸引防止のためにマスクも必ず着用してください。
また、万が一モルタルが付着しても構わないように、汚れてもよい服装に着替えておくのがベストです。
壁の高い箇所を塗る際には安全帯を付けたりヘルメットを被ったりして、安全対策をしっかりとりましょう。梯子や脚立などが倒れないように、手伝ってくれる人に支えてもらうとより安全です。
周囲を養生する
モルタルを塗る前には周囲を養生して、汚れがつかないようにしましょう。作業をする周辺はブルーシートで覆っておくと、傷つけたり汚したりする心配がなくなります。
もしモルタルが付着してしまった場合は、乾いて固くなる前に拭き取ってください。作業中も、使わない道具は水を入れたバケツにつけておくなど、乾燥しないようにするための工夫が必要です。
作業後の片づけの際には、使った道具は水道で直接洗ってはいけません。道具からモルタルをできるだけ拭き取り、バケツなどに水をためて洗いましょう。
道具を洗った水をそのまま流すと排水溝が詰まる可能性があるため、牛乳パックや木枠など要らなくなった容器に入れてから産業廃棄物として廃棄してください。産業廃棄物の処理方法は自治体によって異なります。
また、庭に流したい時は植物に影響が及ばない場所に穴を掘って流し込みましょう。
サイディング壁とは?
近年、多くの住宅で使われているのが「サイディング外壁」という外壁材です。モルタルとは異なり、職人が一から外壁を塗るのではなく「サイディングボード」という外壁材をカットして壁に貼り付けていきます。
サイディングには「窯業系サイディング」「金属系サイディング」「木質系サイディング」「樹脂系サイディング」の4種類があります。
【窯業系サイディング】
窯業系サイディングは外壁に使われる事が多い外壁材です。セメントと繊維質を混合してつくられており、デザイン性に富みコストが抑えられる事や、施工期間が短い事などがメリットとして挙げられます。
【金属系サイディング】
金属系サイディングは金属製の板と断熱効果を持つ裏打材を組み合わせてつくられている外壁材です。断熱性に優れている事や、ひび割れのリスクが少ない事などがメリットとして挙げられます。
【木質系サイディング】
木質系サイディングは天然木のような木材を使った外壁材です。自然でやわらかな印象を与えられる事や、環境にやさしい事などがメリットとして挙げられます。
【樹脂系サイディング】
樹脂系サイディングは主に塩化ビニル樹脂を使ってつくられている外壁材です。防水性が高い事や、汚れを落としやすい事などがメリットとして挙げられます。
サイディング外壁はコストパフォーマンスが高く、仕上がりが職人の腕に関わらないため一定の質が期待できるのがメリットです。また、工期が比較的短く済み、耐震性に優れているところも評価されているポイントだと言えます。
ただし、目地のコーキング材が劣化するため、メンテナンスの必要があるという点がデメリットです。そのため、メンテナンスにかけるコストを減らしたい人にとっては向いていないと言えるでしょう。
あわせて読みたい
>>窯業系サイディングってどんな外壁?特徴や塗装・メンテナンス方法をご紹介
>>サイディング外壁とは?特徴やメンテナンス方法、リフォーム費用を解説
モルタル壁の施工は優良業者に任せよう
モルタル壁は自分で施工する事もできますが、高いクオリティーと安全性を求めるのであれば、やはり業者に依頼するのが確実です。特に外壁は劣化すると家全体を傷める重要な箇所なので、しっかりと施工しておきましょう。
ただし、悪質な手口で詐欺まがいの事をしたり、手抜き工事をする悪徳業者の存在は否定できません。業者選びは慎重に行う必要があります。
業者選びの際には、インターネットの口コミを参考にするとよいでしょう。
また、おすすめなのが相見積もりという方法です。相見積もりは一度に複数の業者から見積もりを取り寄せる方法で、手間と時間を短縮できるというメリットがあります。アフターフォローの有無や施工後の保証など、対応についても確認できるので優良業者選びの際にはぜひ活用してください。
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この記事では、モルタル壁についてとそのメリットやDIYを解説しました。
モルタル壁はDIYもできますが、時間もかかり、体力も使い、その後処理も大変です。もし家の外壁のメンテナンスが気になっているのなら、外壁塗装業者から見積もりをとってみてはいかがでしょうか。
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