漆喰(しっくい)は紫外線や雨風、地震のダメージを受けやすく、屋根瓦よりも早い段階でメンテナンスが必要です。どのような劣化症状が出てきたら、屋根修理工事を検討すべきでしょうか。
この記事では、屋根修理工事が必要な漆喰の劣化症状や屋根瓦などに関して、ご紹介します。お住まいの屋根の状態にお悩みの方、屋根修理工事をご検討中の方は、最後までご覧ください。
屋根瓦の漆喰とは?
漆喰(しっくい)とは、消石灰を主成分とする建材です。住宅の棟瓦や軒先などで使用されています。棟瓦は、住宅の面同士が頂上で交差する部分を指し、軒先は外壁や玄関よりも外側の部分です。
漆喰は棟瓦と屋根平部の隙間を埋め、雨水の浸入を防ぐ役割を担います。棟瓦を支える土台に雨水が浸入すると、瓦の固定力が低下してズレや歪みが生じるためです。漆喰の見た目は白く、住宅全体の美観性を保つ役割も果たしています。
また、漆喰は紫外線や雨風に常にさらされている状況です。屋根瓦よりも寿命が短いため、定期的なメンテナンスが必要になります。
屋根の修理工事が必要な漆喰の劣化症状
お住まいの屋根瓦の状態が以下4つの症状に該当した場合、早急に修理工事を検討しましょう。
- ひび割れ
- 漆喰のはがれ
- 漆喰の変色やコケの発生
- 棟瓦にずれや歪みが発生
工事の時期が遅れるほど、雨漏りや屋根材の劣化を招く可能性が高まります。
ひび割れ
屋根瓦の隙間に使われている漆喰は、紫外線や雨風のダメージを受け、収縮と膨張を常に繰り返している状態です。ダメージが蓄積すると、地震や台風での強い揺れによって、漆喰にひび割れや欠けが発生する可能性が高まります。
漆喰のはがれ
屋根瓦の土台には瓦の安定性を高めるため、葺き土が使用されています。漆喰は葺き土の外側に塗られ、常に紫外線や雨風のダメージを受けている状態です。乾燥と濡れた状態を繰り返すと、少しずつ漆喰と土葺きの間に隙間が生じ、雨水が浸入します。
雨水によって漆喰の耐久性や耐震性が低下すると、弱い揺れでも漆喰が剥がれる可能性が高いです。漆喰の剥がれや崩れが拡大すると、雨漏りの発生を招きます。お住まいの庭にコンクリートや石の破片が落ちていた場合は、早急に漆喰の修理工事を実施しましょう。
漆喰の変色やコケの発生
漆喰は葺き土の外側に塗られ、紫外線や雨風から葺き土を守る役割を果たします。施工の際、葺き土と漆喰は密着している状態です。しかし、年月が経つと徐々に隙間が生じて雨水が侵入しやすくなり、コケやカビの発生を招く可能性が高まります。
住宅の漆喰が黒く変色するのは、コケやカビの繁殖が原因です。劣化が進むとコケやカビが繁殖して黒ずみ、外から漆喰の存在を確認できません。施工当初と比べると防水性も低下しており、コーキング材としての役割は望めないでしょう。
棟瓦にずれや歪みが発生
棟瓦の下に敷き詰められた葺き土に、雨水の浸食を阻止するのが漆喰の目的です。仮に葺き土に雨水が浸食した場合、住宅全体の安定性が大幅に低下します。棟瓦にズレや歪みが発生し、劣化が進むと雨漏りや家屋倒壊を招くでしょう。
屋根漆喰の修理工事が遅れると生じるリスク
漆喰の修理工事が遅れるほど、以下4つのリスクが生じます。
- 雨漏りの発生
- 屋根瓦の落下
- 屋根材の劣化
- 工事費用の増大
雨水が原因で屋根材が腐食すると、漆喰の修理工事だけでは状況が改善されません。屋根の葺き替えをはじめ、大規模な屋根工事が必要です。全面リフォームが必要な場合、多額の工事費用が発生します。
雨漏りの発生
漆喰の劣化で葺き土との隙間が広がると雨水が内部に浸食し、コケの繁殖や黒ずみを招きます。瓦内部の防水シートに影響が及ぶ前に、漆喰の修理工事が必要です。防水シートが劣化した場合、雨漏りや内部腐食を招く可能性が高まります。
また、雨漏りが発生している=住宅内部の柱や屋根の下地が傷んでいる状態です。瓦の葺き替えや葺き直しなど、全面的な屋根リフォームを実施しなければなりません。漆喰の修理工事よりも多額の工事費用が必要となります。
屋根瓦の落下
漆喰が剥がれると棟瓦の内部に雨水が浸水し、葺き土の固定力が低下します。棟瓦との接着力が低下してゆがみやズレが発生し、瓦がいつ落ちてきてもおかしくない状況です。屋根瓦の落下によって怪我をしないよう、早めに対処しましょう。
屋根材の劣化
漆喰の劣化を放置した場合、雨水の影響で野地板やルーフィング、防水シートなど、屋根材全体の劣化を招きます。屋根材の腐食が進むと屋根の強度が低下し、地震や飛来物によって天井がいつ落下しても不思議ではない状況です。
他にも断熱性の低下やシロアリ被害の発生など、さまざまなトラブルが生じます。屋根材に影響が及ぶ前に、修理工事を実施しましょう。
工事費用の増大
雨漏りの発生や屋根材の腐食が進んだ場合、漆喰の修理工事だけでは不十分です。お住まいの機能性や耐久性、防水性を回復するには、新しい屋根材に入れ替えなければなりません。
屋根の葺き替え工事や葺き直しなど、全面リフォームが必要になった場合、多額の工事費が必要になります。たとえば、30坪の2階建て住宅で屋根の葺き替え工事を実施したとしましょう。工事費用は140万〜200万円が相場です。
屋根の劣化状況や屋根面積、住宅の階数などによっては、250万円以上の費用を支払わなければなりません。
屋根漆喰の修理工事は2種類
漆喰の修理工事は以下の2種類に分けられます。
- 漆喰の詰め直し
- 棟瓦の取り直し
漆喰の劣化状況に応じて、工事を使い分けるかたちです。
漆喰の詰め直し
漆喰のひび割れや剥がれなど、劣化症状が比較的軽い場合におこなう工事です。古い漆喰を除去し、葺き土や埃などをきれいに掃除してから、新しい漆喰を詰め直します。土台をきれいにしておく目的は、漆喰の密着度を高めるためです。
漆喰の詰め直しを依頼した場合、工事費用は1mあたり5,000円〜6,000円が相場です。仮に棟の長さが10mの場合、漆喰は両面に施工されているため、施工面積は20mです。工事費用は10万〜12万が目安となります。ただし、上記の工事費用に足場代は含まれていません。
足場の設置が必要な場合、20万円前後の追加費用が発生する点を認識しておきましょう。また、既存の漆喰に新たな漆喰を塗る詰め増しは推奨できません。屋根瓦との隙間が埋められていないため、施工後すぐに新旧の漆喰双方が崩れる可能性が高まります。
修理工事を依頼しても漆喰が長持ちしないため、詰め増しの依頼は避けましょう。
棟瓦の取り直し
棟瓦の取り直しとは、棟瓦のズレやコケの発生など、漆喰の劣化が激しい場合におこなう工事です。棟瓦を一旦取り外し、古い漆喰と葺き土を撤去したあと、葺き土とのし瓦を敷き詰めていきます。のし瓦とは、粘土瓦の棟の部分に使用される特殊な瓦です。
葺き土とのし瓦の上に先ほど撤去した棟瓦を設置し、新たな漆喰を詰め直します。工事業者によっては、漆喰を詰め直す際に耐久性に優れたなんばん(南蛮)漆喰を使用します。瓦の安定性や耐震性を高めるため、施工後は漆喰の周辺に銅線がビスで留められている状態です。
棟瓦の取り直しを依頼した場合、工事費用は1mあたり10,000円〜15,000円が相場です。施工面積が20mの場合、工事費用は20万〜30万円になります。漆喰の詰め直しと同様、足場代は工事費用に含まれていません。
なんばん(南蛮)漆喰
なんばん漆喰とは、消石灰に炭酸カルシウムや山砂利などを混ぜ、フノリの煮汁で練ったものです。特殊なシリコンも配合しており、通常の漆喰より耐久性や防水性に優れています。屋根瓦になんばん漆喰を使用した場合、基本的にメンテナンスは必要ありません。
瓦を積む際に葺き土を敷く必要もないため、雨水が原因での瓦のズレや浮きを避けられます。なんばん漆喰は、主に新築住宅の工事や棟瓦を新調する際に使用されるケースが多いです。
屋根漆喰の修理工事が必要な屋根瓦は3種類
漆喰の修理工事が必要な屋根瓦は以下の3種類です。
- 粘土瓦
- セメント瓦
- モニエル瓦
粘土瓦やセメント瓦の住宅には、棟瓦に漆喰が使用されています。棟瓦と平面で生じた隙間を埋め、雨水の浸水を防ぐのが目的です。紫外線や雨風、地震などの影響で漆喰は劣化するため、劣化症状を発見したらすぐに修理を依頼しましょう。
また、トタンやガルバリウム鋼板など、金属屋根には漆喰が使用されていません。スレート瓦にも使用されておらず、お住まいの屋根瓦が金属屋根やスレート屋根の場合、修復工事は不要です。
粘土瓦
粘土瓦は瓦の表面に釉薬(ゆうやく)を塗ったあと、高温で焼き上げる瓦のことです。釉薬によって防水性や耐久性を高め、雨漏りや内部腐食の発生を防ぎます。ただし、すべての粘土瓦に釉薬が塗られているわけではありません。
釉薬が塗られた屋根瓦を陶器瓦、塗装されていない瓦を無釉薬瓦として区別します。粘土瓦は耐久性に優れているため、屋根塗装工事をおこなう必要はありません。反面、衝撃に弱く、一定の年数が経つと漆喰のひび割れや棟瓦にズレが生じます。
対応が遅れると、雨水の侵入や雨漏りにつながるため、定期的に漆喰を補修しましょう。
セメント瓦
セメント瓦はセメントと川砂を混ぜて作られた屋根瓦です。耐火性や耐久性に優れており、耐用年数は30年〜50年といわれています。一方、粘土瓦と同様に衝撃に弱く、地震の衝撃で漆喰のズレや屋根瓦の破損を招くケースも珍しくありません。
また、瓦の表面に塗装をしているため、10〜15年周期で塗装工事が必要です。塗装の色あせやコケの発生、瓦のひび割れなどが発生した場合が、塗装工事をおこなう目安となります。工事費用を削減するため、漆喰の修理工事と塗装工事を同時に依頼しましょう。
モニエル瓦
モニエル瓦はセメント瓦の一種です。スラリー層と呼ばれる保護層を表面に形成し、防水性を高めます。モニエル瓦はセメント瓦よりも耐久性が低く、耐久年数は20年前後です。紫外線や雨によって防水性が低下しやすく、定期的にメンテナンスをしなければなりません。
瓦のヒビ割れや破損、塗膜剥離などが発生した場合は、漆喰の修理工事と塗装工事を検討してください。塗装工事は10〜15年周期が1つの目安となります。
屋根漆喰の修理工事前に整理すべき5つのポイント
屋根漆喰の修理工事を実施する前に、以下5つの点を認識しておきましょう。
- 漆喰の寿命を把握しておく
- 重ね塗りの提案は断る
- 漆喰修理をDIYでしない
- 屋根塗装との同時工事も検討する
- 複数の塗装業者から見積を取得する
ポイントの内容を一つひとつみていきます。
漆喰の寿命を把握しておく
漆喰の寿命は15〜20年です。ただし、降雨量や温室度の変化量によっては、10年程度でひび割れが発生する可能性も十分考えられます。上記の寿命は1つの目安として捉え、5~10年周期で劣化状況を確認するようにしましょう。
重ね塗りの提案は断る
漆喰の重ね塗りを修理業者に提案されたとしても、断ってください。重ね塗りの場合、漆喰が従来よりも外に出ている状況です。紫外線や風雨によるダメージを受けやすくなり、通常より寿命が短くなります。
また、漆喰の塗装を厚くしたとしても、必ずいい影響が出るとは限りません。仮に古い塗膜や汚れが残っていた場合、上塗りしても漆喰が剥がれやすくなります。耐久性や防水性が低下し、耐用年数が短くなる可能性が高いでしょう。
さらに、必要以上に塗膜を厚くしすぎると、屋根の棟から雨水を外に排水できません。漆喰に雨水が浸水し、雨漏りや内部腐食を招く原因となります。早期劣化や修理費用の増大を招くため、漆喰の重ね塗りを提案する業者への依頼は避けましょう。
漆喰修理をDIYでしない
漆喰修理を自身で対応するのは推奨できません。屋根から足を滑らせて地面に転落した場合、骨折や脳震盪などの重傷を負う可能性が高いです。最悪の場合は後遺症が残り、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
瓦屋根は表面がツルツルとして滑りやすく、素人には難しい環境です。また、慣れない高所作業によって、屋根や漆喰の一部を破損させる可能性もあります。安全性の確保と修理費用の高騰を避けるためにも、漆喰の修理工事は専門業者に依頼しましょう。
屋根塗装との同時工事も検討する
工事費用の高騰を避けるため、屋根塗装と同じタイミングで漆喰の修理工事を修理業者に依頼しましょう。足場設置が1度で済むため、足場代を削減できます。別々の時期に工事を依頼した場合、毎回足場を組まなければなりません。
30坪の2階建て戸建て住宅で足場を組んだ場合、足場代は16万〜23万円が相場です。屋根塗装と漆喰の修理工事をセットで依頼すれば、20万円前後の足場代を余計に支払う必要がありません。
また、屋根塗装と工事のタイミングが合わない場合、外壁塗装とのセット工事を利用するのも有効です。屋根塗装と同様、足場を工事のたびに設置する必要がなくなります。
複数の修理業者から見積を取得する
1社からしか見積を取得しなかった場合、見積金額の正確性や施工品質の高さを正確に掴むのが難しいです。仮に担当者と相性が悪かった場合、発注後に追加費用の高騰や納期遅延を招く可能性が高まります。
担当者が自社の要望を上手く汲み取れないため、やりとりに多くの時間が必要になるでしょう。ミスマッチを避けるため、複数の修理業者から外注先を絞り込んでください。
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漆喰の修理先を選定する際は、複数の工事業者から絞り込むことが重要です。ただし、1件ずつサイト上で実績や得意分野を確認するのは、多くの手間がかかります。外注先を効率的に探すため、ビジネスマッチングの利用を検討しましょう。
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