一般的なコンクリートと比べて圧倒的に軽量なALCパネルは、断熱性・耐火性に優れた外壁材として広く利用されています。機能性が高い分、ほかの素材と比べて多少高価ではありますが、快適な住まいづくりを実現するために検討の価値があるでしょう。
本記事ではALCパネルの特徴やほかの外壁材との違い、必要となるメンテナンス、リフォーム費用の相場などをご紹介します。理想の住宅を完成させるために、ALCパネルに関する知識を付けておきましょう。
ALCパネルとは
ALCとは、Autoclaved Lightweight aerated Concreteの略語です。珪石・セメント・発泡剤・石灰などを原料としたコンクリートの1種で、軽量気泡コンクリートとも呼ばれます。
一般的なコンクリートよりも圧倒的に軽量であるのが特徴で、断熱性と耐久性に優れた素材です。ALCパネルは高い機能性を活かして、一般家庭の住宅から高層ビルまで、さまざまな建物の外壁材として利用されています。
他の外壁材との比較
外壁材として利用されている素材は豊富にあるため、それぞれの特徴を詳しく比較して選択することが大事です。今回はALCと、そのほかの3種類の外壁材を項目ごとにまとめました。
外壁材 | 原料 | メンテナンス周期 | 特徴 |
ALC | セメント・ケイ石・生石灰 | 10~15年程度 | 断熱性が高い耐火性が高いコンクリートと比べて軽量 |
窯業系サイディング | セメント・繊維質 | 10年程度 | 施工性が高い耐火性が高いデザインが豊富 |
金属系サイディング | アルミ・スチール | 10~15年程度 | 断熱性が高い耐震性が高い |
モルタル | セメント・砂 | 10年程度 | 高級感があるコーキングが不要 |
素材の特徴によって、メンテナンスの周期も異なります。
ALCパネルの特徴とは
ALCパネルは、以下のような特徴をもった外壁材です。
- 耐久性に優れている
- 軽量で耐震性が高い
- 断熱性が高い
- 耐火性・防火性に優れている
- 遮音性が高い
- 調湿性に優れている
ほかの外壁材と比べる際には、機能性とコストのバランスを確認するようにしましょう。
耐久性に優れている
ALCパネルは鉄筋やスチール金網といった成分が含まれるため、耐久性が高いのが特徴的です。外壁材の耐久性に影響を与えるパルプ材や木繊維を使用しておらず、ひび割れの心配もないでしょう。
定期的なメンテナンスを欠かさなければ、50年以上の長い期間もつとされています。自宅の寿命を考えた場合には、ALCパネルはおすすめの外壁材です。
軽量で耐震性が高い
ALCパネルは軽量でありながら、優れた耐震性を誇る外壁材です。一般的なコンクリートとは違い、直径0.05~0.1ミクロンの気泡が含まれています。
地震被害の多い日本において、耐震性を考慮した外壁材を選ぶことも重要です。ALCパネルであれば、軽量かつ衝撃に強いため、耐震性の面でも安心して利用できるでしょう。
断熱性が高い
ALCパネルは断熱性が高い外壁材で、室内を冬は暖かく夏は涼しく保つことができます。温度変化の影響を受けにくいのは、気泡部分が空気の層を作っているためです。
一般的なコンクリートと比べると、ALCパネルの熱伝導率は10分の1程度であるとされています。断熱性の高い外壁材を選ぶことで、1年を通して快適に過ごせる環境を確保できるでしょう。
また、暖房や冷房器具の利用を減らす良いきっかけとなり、光熱費の節約につながります。
耐火性・防火性に優れている
無機質のセメントやケイ石を原料とするALCパネルは、耐火性・防火性に優れています。燃えにくいだけではなく、万が一火が燃え移った場合も有害物質が発生しません。
一般的な住宅に多く用いられているサイディングボードの2倍程度の厚みがあるため、防火性の面でも安心できるでしょう。いざという時に備えて、耐火性・防火性の高い外壁材を検討することは重要です。
遮音性が高い
ALCパネルの特徴ともいえる気泡の層は、遮音性を高める効果ももっています。空気の層によって音が伝わりにくくなるため、快適な室内空間を実現できるでしょう。
交通量の多い道路に面している場合や、電車の線路が近い場合には、ALCパネルの利用がおすすめです。また、住宅内での騒音を軽減する目的でも利用できます。
調湿性に優れている
ALCパネルには、室内の湿気をコントロールする機能が備わっています。空間を過ごしやすい湿度に保つためには、結露の発生を抑えて水分量を調整する必要があります。
湿気が多い時には水分を吸収し、乾燥している時には水分を排出する働きをするのがALCパネルです。湿気によるカビの発生は住まいの寿命を縮める原因となるため、外壁材選びから対策をしておくとよいでしょう。
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ALCパネルの種類
ALCパネルの種類を分類する際には、次の3点がポイントとなります。
- 形状の違い
- 厚さの違い
- 表面加工の違い
項目ごとに、ALCパネルの種類を解説します。
形状が異なる
ALCパネルの種類を形状に注目して分類した場合、次の2つに分けられます。
- 一般パネル:建物の平面部に用いられる平らなALCパネル
- コーナーパネル:建物の四隅に用いられるL字型のALCパネル
外壁の面部分を覆うために使われるのが、一般パネルです。コーナーパネルは、四隅のに合わせて利用できるように、L字型をしています。
形状に違いがあるのみで、素材の基本的な耐久性などには違いがみられません。
厚さが異なる
ALCパネルを厚さによって分類すると、次の2つに分けられます。
- 厚型パネル:厚さが75mm以上のALCパネル
- 薄型パネル:厚さ35mm以上で75mm未満のALCパネル
厚型パネルは、鉄筋コンクリートや鉄骨を用いた強度や耐火性の求められる建物で利用されます。対して薄型パネルは、鉄骨造や木造住宅など比較的耐久性が低い建物で用いられることが多いです。
表面加工が異なる
表面加工の違いによって分類すると、ALCパネルには次の2種類があります。
- 意匠パネル:デザイン性のある模様が施されているALCパネル
- 平パネル:デザインが施されていないシンプルなALCパネル
外壁の見た目にもこだわりたい場合には、デザイン性の高い意匠パネルの利用がおすすめです。ラインが入ったものや、チェック模様が施されたパネルを選ぶことができます。
一方で特に要望がなければ、平パネルのほうが費用を抑えられるでしょう。
ALCパネルの外壁は定期的なメンテナンスは必要?
耐久性が高く、正しくメンテナンスをおこなえばALCパネルは50年以上使える外壁材です。ただし、住まいを安全で快適に保つためには、10~15年に1度の定期的な塗装リフォームが必要です。
ALCパネルのメンテナンスの重要性と塗装タイミングを見極めるコツを知って、自宅の外壁を長く美しく管理しましょう。
定期的な塗装が必要
ALCパネルを外壁材として選んだ場合は、定期的なメンテナンスが必要です。耐久性がある素材として下地に問題がなくても、雨や風にさらされる表面は劣化が進みます。
10~15年のサイクルで塗装工事をおこなうことで、経年劣化で失われる防水効果を高められます。塗装の劣化を放置してしまうと、水気に弱い下地部分にダメージを及ぼしてしまうため注意しましょう。
定期的な塗装を忘れずに実施すれば、ALCパネルは寿命の長い頼れる外壁材です。
塗装のタイミングは
ALCパネルの塗装をし直すタイミングの目安は、10~15年に1度です。耐久性の高い外壁材であるため、そこまで頻繁なメンテナンスが必要ないのがメリットです。
新築住宅を構えたら、10年の節目の時期に外壁材塗装の状況を確認するようにしましょう。定期的に塗装を繰り返すことで、年数が経っても建物を健康に保てます。
塗装には足場の設置が必要となるため、ほかの部分のリフォームも一緒に実施すべきか検討してみるのをおすすめします。
劣化症状が見られたら塗装を
次のような劣化症状が見られる場合は、早急に塗装をおこないましょう。
- 塗膜のひび割れ
- 塗膜の膨れ
- チョーキング
- コケ、藻の発生
- 色褪せ
これらの明らかな劣化が確認できる状態が続くと、ALCパネルの機能低下を引き起こしてしまう原因となります。外壁材の寿命が短くなってしまうだけではなく、雨漏りなど建物に深刻な被害につながる可能性も否めません。
定期的なメンテナンスとあわせて、外壁の状態をこまめにチェックしておくようにしましょう。
パネルが割れたり破損したら交換(張り替え)を
ALCパネル自体に割れや破損が発生した場合は、外壁材の張り替え工事が必要です。既存のパネルをはがして新しいパネルへの交換をするため、塗装のみの場合より費用がかさみます。
始めは表面の塗装部分の劣化であっても、時間が経過してパネル本体にダメージが及ぶこともあります。定期的なメンテナンスで日頃からALCパネルの状態を正しく把握しておけば、被害を最小限に抑えられるでしょう。
メンテナンス方法のまとめ
最後に、これまでご紹介したALCパネルのメンテナンス方法をまとめました。劣化の状態を把握し、適切な補修をおこなうことが大切です。
劣化の状態 | メンテナンス方法 |
目地のひび割れ・はがれの発生 | 古いシーリングをはがして補修工事をする |
ALCパネルの割れ・破損の発生 | ALCパネルの交換工事をする |
塗膜のひび割れ・はがれの発生 | 塗装工事をする |
素人がALC外壁の状態を判断するのは、難しいと感じる場合もあるでしょう。必要に応じて、専門家のチェックを受けるのも良い手です。
ALC外壁塗装にかかる費用相場
一般的な2階建て住宅のALCパネル外壁塗装工事にかかる費用相場は、80~150万円程度です。実際には外壁の面積やパネルの劣化具合によっても、費用に差が出ます。
住宅の外壁として需要が高いサイディングやモルタルと比べると、ALCパネルは高価な素材だといえるでしょう。メーカーごとにも取り扱っているパネルの種類や価格に差があるため、複数の業者に問い合わせてみてください。
外壁塗装業者のプロを探す
ALCパネルは、軽量で耐久性・耐震性・耐火性・遮音性に優れた外壁材としてさまざまな場所で活用されています。一般的な住宅に多く用いられるサイディングボードやモルタルと比べて費用が高めですが、高い機能性を備えているのが魅力です。
ALCパネル外壁を長く美しく保つためには、10~15年に1度の定期的なメンテナンスが欠かせません。ご紹介したチェックポイントを参考にしながら、塗装工事を実施するタイミングを見極めてみてください。
納得した価格で外壁塗装をおこなうには、複数の業者への相見積もりが有効です。信頼できる業者を見つける方法を、探している方もいらっしゃるでしょう。
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