スレート屋根には塗装が欠かせません。劣化を放置しておくと、雨漏りや大掛かりな修繕の原因になってしまいます。塗装は不要と言われることもありますが、定期的に点検をおこないましょう。必ずそのタイミングで最適な屋根用塗料を使って塗装をし、屋根が傷むのを防いで、防水性や耐食性を高める必要があります。
本記事では、スレート屋根の塗装にかかる費用相場や塗装の手順などをご紹介します。スレート屋根に欠かせない「縁切り」についても詳しく解説するので、業者に依頼する時には注目してください。また、塗装以外での補修方法や業者選びのポイントにも触れていきます。
スレート屋根とは?
スレート屋根とは、セメントを主成分としている厚さ5mm程度の板状の屋根材です。耐久性に優れており、第三世代と呼ばれる2000年代後半に製造されたものは約30年使い続けられます。
スレート屋根は「ルーフィング」と呼ばれる防水シートの上に直接加工できる屋根材です。屋根1枚の幅は約90cmで、四隅を1箇所ずつ留めてスレート屋根同士を張り合わせていきます。
重ね張りすることによってスレートが剥がれても、下地が劣化したり、雨漏りが起きたりしにくいというメリットがあるのが特徴です。
泥岩などが地下で固まった「粘板岩(ねんばんがん)」を薄く加工したものを「天然スレート」と呼びます。これに対して、セメントを固めてつくった人工的なスレートは「化粧スレート」と呼ばれます。
スレート屋根は塗装が必要
スレート屋根の多くは「化粧スレート」と呼ばれる屋根材です。スレートが劣化すると、本体が水を吸収してコケや藻を付着させるようになります。これは屋根の美観に関わるだけではなく、機能面にも悪影響が及んでしまうのです。
具体的には、スレート屋根の浮きや反りなどが挙げられます。こういった症状は放置しておくと悪化の一途を辿り、決して自然回復するものではありません。
スレートが浮いたり割れたりして吸水・雨水などの浸入が進めば、下地が進んで屋根材の寿命は短くなります。また、台風などの強い雨風に晒されると屋根そのものが剥がれることも考えられるでしょう。
スレート屋根の劣化サイン
スレート屋根は塗装不要と言われることも多いですが、長持ちさせるには丁寧なメンテナンスが欠かせません。スレート屋根の寿命は20年前後と言われており、10年経つと下記のような劣化症状が目立ちやすくなります。
- ひび割れ
- 色褪せ(変色)
- コケや藻、カビの発生
- 浮きや反り
どれも目視で確認できる症状なので、小まめに様子を見るようにしてください。
劣化したまま放置しておくと支障がある
劣化サインを放置していると、屋根材の破損や雨漏りなど深刻な事態を招く恐れもあります。劣化が進行すると塗装メンテナンスだけでは対応できず、大規模な修繕工事が必要になるため、劣化が見られたら早めに塗装を依頼しましょう。
スレートの劣化は美観を損なうだけではなく、屋根の下地を剥がしてしまい屋根の寿命を縮めてしまいます。地震で屋根が破損してしまうことも考えられるでしょう。雨風や紫外線で劣化しやすい屋根だからこそ、定期的な塗装メンテナンスを心がけることが大切です。
スレート屋根の塗装にかかる費用相場
スレート屋根塗装の工程は、ケレン作業から高圧洗浄、下塗り、中塗り・上塗りまで非常に多岐にわたるのが特徴です。塗装費用の総額には、これらの作業代に加え、足場建設費や塗料代、処分費、諸経費などが含まれます。
費用相場は塗布する屋根面積によって異なりますが、30坪の住宅なら約50~80万円が目安です。また、塗料のグレードや種類によっても費用が変動するため、予算と相談しながら決めると良いでしょう。
塗料のグレード・種類 | 費用相場(1㎡あたり) |
ウレタン塗料 | 1,800~2,000円 |
シリコン塗料 | 2,000~2,800円 |
フッ素塗料 | 3,800~4,500円 |
断熱塗料 | 3,000~6,000円 |
基本的にはグレードが上がるほど耐久性も高くなるため、長期的なコストパフォーマンスを考慮して使用塗料を決めることがポイントです。スレート屋根の塗装には、費用対効果のバランスが良いシリコン塗料が多く使われる傾向にあります。
以下の関連記事では、屋根塗装の費用相場や安く抑える5つのコツを紹介しています。屋根塗装を安く抑えたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
関連記事:屋根塗装の費用相場
スレート屋根の塗装手順
スレート屋根がどのような流れで塗装されるかについてご説明します。業者に依頼する時に、手順の流れを知っておくと「この業者は正しい手順を踏んでいるから、依頼しても問題ない」といった判断ができますよ。
①高圧洗浄
まずはスレート屋根に付着している汚れを丁寧に取り除きます。塗膜の上には白い粉やコケ、カビや藻などが付着しているので、強い水圧で洗い流すのが目的です。屋根を保護する役割を持つ塗膜が機能していなくなっているため、役に立たなくなった塗膜を剥がしていきます。
②下地処理(ケレン)
塗装を始める前に、きれいに仕上げるための下準備として下地処理をおこないます。この下地処理は「ケレン」とも呼ばれており、スレート材にひび割れが起きていないか、釘が浮き上がっていないかといったところをチェックします。あわせて、板金の変形や固定にずれがないかということも確認し、塗装をしても問題がないか見極めます。
この下地処理がしっかりおこなわれていないと、塗装をしても綺麗な仕上がりにならないだけでなく、屋根がめくれたり剥がれたりしてしまいます。
③下塗り
スレートに塗膜をしっかりと定着させるためにおこなうのが、下塗り作業です。下塗りをしないと屋根の表面の状態が安定せず、塗膜が上手く作られません。よって、下塗りでまずは下地を整えます。
中塗り・上塗りの塗料を屋根に密着させ、過度に吸い込ませない役割を持ってるのが下塗りだと言えるでしょう。
④中塗り・上塗り(上塗り2回)
下塗りが乾いたら、その上に塗料を塗っていきます。これが中塗りと呼ばれる工程です。板金の細かい部分は刷毛で塗布し、それ以外の部分はローラーを使って塗り進めます。
上塗りは2回重ねておこなわれ、スレートが重なっている部分でもハケを使っていきますが、これは上塗りに使う塗料が下塗りのものよりも粘度が高いことが理由です。スレート瓦同士には隙間が生まれなければいけませんが、ローラーを使って塗るとそれが塞がってしまう可能性があります。
よって、重なっている部分は刷毛を使って塗布をおこなうべきなのです。順番としては、重なっている部分を刷毛で塗布してからローラーでその他の広い面を塗り進めるのがよいでしょう。
スレート屋根塗装には縁切りが必要
スレート屋根を塗装するときには、「縁切り」と呼ばれるものが必要です。縁切りをおこなっていないと、雨漏りが起きる原因になります。ここでは、縁切りとはどういうものなのか、具体的に解説しますので理解を深めてください。業者さんに依頼するときも、縁切りについて言及されるかどうかを確かめるのは非常に大切ですよ。
縁切りとは?縁切りをする必要性
「縁切り」とは、塗装後に乾燥でふさがったスレートの隙間の塗膜を切り、適切なすき間を設ける重要な作業のことです。スレート屋根は隙間を通って水分を逃がしていく構造をしています。
そのため、縁切りをしなければ、内部に溜まった雨水や霜などの水分は次第に屋根の内側に浸水していき、雨漏りや部屋の湿気などの原因になります。そのため。水の通り道を作るために縁切りをおこなって浸水対策をおこなうのです。
スレート屋根の縁切りでは、屋根材同士の重なりに皮スキ(金属製のヘラ)や塗膜カッターで屋根自体に切り込みを入れ、少しずつすき間を作ります。非常に手間のかかる作業のため、余裕をもって1日程度見積もる業者も少なくありません。
通気性や水の流れを良くするためには必須の作業なので、見積もり書の工程に含まれているかきちんと確認しておきましょう。
タスペーサーを設置する
近年では、縁切りをする際に「タスペーサー」という器具を使うことが多くなっています。タスペーサーとは、屋根材同士の間に挟んですき間を作る道具のことで、株式会社セイムが販売する特許商品です。これを使用する場合は塗装の工程が若干変更されるので注意しましょう。
通常はご紹介した通り「高圧洗浄」「下塗り」「中塗り・上塗り」が基本的な流れですが、タスペーサーを挿入する場合は「下塗り」と「中塗り・上塗り」の間に挿入することになります。
タスペーサーの施工方法にはシングル工法とダブル工法があり、屋根の幅が60㎝の場合はシングル工法、幅が90㎝の屋根の場合はダブル工法で取り付けます。
また、タスペーサー1個あたりの費用相場は約30〜50円で、屋根1㎡あたり約10個前後使用するケースが多いです。一般的な住宅では約700〜1,000個程度使用するため、約2〜5万円程度はかかると把握しておきましょう。
参照:株式会社セイム 製品紹介「平板スレート屋根再塗装時の縁切り部材 タスペーサー」
塗装できないスレート屋根もある
スレート屋根は基本的に塗装をしなければいけない屋根材です。塗装をしなければ劣化が進み、雨漏りや屋根の剥がれなどに繋がってしまいます。しかし、どのスレート屋根も必ず塗装できるというわけではありません。スレートによっては塗装できない種類も存在します。
ここでは、塗装できないスレート屋根の代表的な製品の名称をご紹介します。
- ニチハ パミール
- コロニアルNEO
- セキスイ かわらU
- クボタ アーバニー
- 松下電工 レサス
- 松下電工 シルバス
- 大建工業 ナチュール
- ケイミュー(クボタ)アーバニー
これらの製品が使われなくなった理由はさまざまですが、クラック(ひび割れ)が入ってしまったり、釘の部分に負荷がかかると本体が割れてしまったりしたといったトラブルが起きたことが挙げられます。
塗装以外でスレート屋根を補修する方法
スレート屋根の劣化が深刻な場合は「葺き替え」または「カバー工法」という2種類の屋根リフォームによる補修工事が必要になります。施工費用に大差はなく、「葺き替え」が選ばれることが多いです。
ただし、どちらも塗装メンテナンスよりは値段が高くなるため、劣化が進行する前に塗装を検討するとよいでしょう。ここでは、「葺き替え」と「カバー工法」について解説します。
葺き替え
スレート屋根の劣化が目立つ場合は、「葺き替え(張り替え)リフォーム」をおこないます。葺き替え工法では、既存のスレート屋根を撤去し、新しい屋根に張り替えます。注意点として挙げられるのは、スレート屋根は瓦屋根への葺き替えができないことです。
スレート屋根から新しい屋根材に変更する場合、耐久性や防食性に優れたガルバリウム鋼板が多く使用される傾向にあります。
葺き替え工事にかかる費用相場は、約100万円〜180万円程度です。新しい屋根材の種類や劣化状況によっては、費用総額が200万円を超えるケースも少なくありません。特に、屋根にアスベストを使っている場合は、撤去・処分費用がさらにかかるため注意が必要です。
カバー工法
カバー工法とは、既存のスレート屋根の上に、直接新たな屋根を被せて施工する方法のことです。また、野地板と呼ばれる素材を置いてから屋根を被せる施工方法もあります。
既存の屋根の劣化が進んでいない場合は直接新たな屋根材を被せますが、傷みが酷い場合は野地板を敷いてから屋根材を施工するのが一般的です。
屋根カバー工法は葺き替え工事に比べて屋根の撤去費がかからず、屋根にアスベストが使用されている場合は大幅に節約できます。
施工の特徴としては、撤去費が必要ない分、新たな屋根を被せる際に、芯木や野地板、ルーフィングを設置する工程が追加されることが挙げられます。
カバー工法の費用相場は約110万円〜200万円前後と幅広く、葺き替え工事よりもコストを抑えられるわけではありません。デメリットとして屋根を重ねることで住宅の耐震性が下がることも挙げられるため、特別な理由がない限りは、葺き替え工事を選択するのがオススメです。
スレート屋根の塗装における塗料選びのポイント
スレート屋根の塗装に使用する塗料には多様な種類があり、それぞれ性能や値段が異なります。
たとえば近年では、劣化因子である「ラジカル」の発生を可能な限り抑える「ラジカル制御型塗料」は重宝されている塗料のひとつです。ほかにも、紫外線に強い「遮熱塗料」や雨水の侵入を防げる「弾性塗料」など、付加機能を加えられる塗料も多く存在しています。
特に遮熱塗料は、自治体や環境省がヒートアイランド現象を抑えるために認めている塗料で、塗装工事の際に補助金や助成金制度などが使えるかもしれません。塗料を選ぶ際は「長期的なコストと耐久性のバランスのよさ」を考慮すると失敗しにくくなるでしょう。
また、安い塗料を選べば総額の費用も節約できますが、安すぎる塗料を使うのはおすすめできません。高い塗料が必ずしも高品質だというわけではありませんが、安すぎる塗料は色褪せしやすかったり、剝がれやすかったりする恐れがあります。見積もりに記載されている塗料名やメーカーをきちんと確認しておくと安心です。
DIYでの屋根塗装はできない
スレート屋根はDYで塗装できません。屋根に上るためには足場の建設が必要ですが、足場建設には国家資格が必要です。資格を持たない人が作業することはできないと言えます。
また、素人判断で塗料を選んだり、塗布したりすると、思うような効果を得られないこともあるでしょう。施工後すぐに塗装が剥離したり、望んだ色合いと異なっていたりする場合は、改めて業者に依頼しなければなりません。二度手間になるだけではなく、かえって費用が高くつく恐れがあります。
施工を安心して任せられる業者を探し、屋根塗装はプロの職人がいる工務店やリフォーム業者に依頼しましょう。
屋根塗装はプロの業者に任せて綺麗に仕上げてもらおう
屋根塗装は危険を伴う難易度の高い作業です。プロの業者さんに任せて綺麗に仕上げてもらうのが一番望ましいと言えるでしょう。大前提として、塗装するために足場を組んだり、足場解体をおこなったりといった作業自体が、素人にはできません。
しかし悪徳業者が存在するのも事実です。優良業者を選ぶためには、見積書をよく確認しましょう。足場代が無料となっていたり、塗料のメーカーが記載されていなかったりする見積書を出してくる業者は信頼できません。
本当に信頼できる業者は親身になって相談に乗ってくれますし、外壁塗装についても同時に質問できるでしょう。資格を持った職人が所属していることも多々あります。
優良業者を見つけるためには、相見積もりをとるのがおすすめです。相見積もりで一度に数社の見積りを取ると、簡単に見比べられます。
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