雪国に住む方にとって、冬の屋根の雪下ろしは大きな負担であり、そうした悩みを解決する手段が「無落雪屋根」です。
本記事では、無落雪屋根の3つの主要な方式とその特徴、メリット・デメリット、そしてリフォームにかかる費用相場について詳しく解説します。さらに、コストを抑える方法や利用可能な補助金についても紹介しています。
無落雪屋根とは?
無落雪屋根とは、屋根から雪を落とさずに処理することを目的とした特別な構造を持つ屋根のことです。この屋根は、傾斜を平らで緩やかにしたり、M字型にすることで、雪をあえて屋根に積もらせる設計になっています。
積もった雪は、太陽光やヒーターなどの融雪設備で溶かし、雪解け水をダクト方式(スノーダクト:屋根の中心部が谷になったM型屋根)や傾斜を利用して流す仕組みです。
このような設計により、豪雪地域では雪下ろしの手間を大幅に軽減できます。また、建物の安全性を高め、落雪による事故のリスクを低減するため、雪国での生活を快適にする解決策といえるでしょう。
無落雪屋根の3つの方式の特徴
無落雪屋根には主に3つの方式があり、それぞれに特徴があります。ここでは、「ルーフフラット方式」「スノーダクト方式」「勾配屋根方式(スノーストッパールーフ)」について、それぞれの特徴を詳しく解説します。
ルーフフラット方式
ルーフフラット方式は、建物の屋根をほぼ平らに設計した無落雪屋根の一つです。この方式では、屋根上に積もった雪を太陽光などの自然な融雪力で溶かし、微妙な傾斜を利用して雪解け水を徐々に排水します。
ルーフフラット方式のメリットは、スノーダクトがないため、メンテナンス頻度が少なくて済むことです。
一方、デメリットとしてはつららが形成されやすいことや、隣家や住宅機器への雪解け水の落下リスク、そして雨水の滞留による雨漏りやサビの可能性が挙げられます。
これらの問題に対処するため、定期的なサビ止め塗装など屋根の防水対策が必要です。
スノーダクト方式
スノーダクト方式は、無落雪屋根の中でも特に主流となっているM型屋根の一種です。屋根の中央部分が谷のような形状になっており、その谷部分にスノーダクトが設置されています。
屋根に積もった雪を自然な融雪力で溶かし、雪解け水をスノーダクトで排出するという仕組みです。ダクト周辺には、凍結を防ぐためにヒーターを設置するケースが多く見られます。
この方式の特徴は、軒先に氷柱ができにくく、隣家への雪や雪解け水の落下リスクが低い点です。ただし、ダクトにゴミが詰まることや漏水を防ぐため、定期的なメンテナンスが必要です。
勾配屋根方式(スノーストッパールーフ)
勾配屋根方式(スノーストッパールーフ)は、通常の三角屋根にスノーストッパーという雪止めを取り付けた無落雪屋根です。豪雪地帯ではない地域や、積雪量が比較的少ない場所に適しています。
この方式では、雪止め部分に雪をとどめ、自然な融雪を待ちます。溶けた雪解け水は、屋根の傾斜に沿って流れ落ちる仕組みになっています。既存の三角屋根構造を活かせることもメリットです。
一方で、積雪可能量が他の方式より少なく、「雪庇(せっぴ)」(注1)や「つらら」の形成リスクが高いといったデメリットもあります。また、ストッパーにたまった水による「すが漏(も)り」(注2)にも注意が必要です。
注1:積もった雪が風により庇(ひさし)の方へ押し出され、地上に向かって垂れ下がった塊のこと
注2:屋根にたまった雪解け水が、軒先付近で凍結するために排水がうまくいかず、結果として屋根内部に水が浸透する問題のこと
無落雪屋根の特徴
無落雪屋根の施工を検討しているのであれば、メリットとデメリットについて正しく理解することが重要です。ここでは、それぞれついて詳しく解説します。
メリット
- 除雪という重労働から解放される
- 転落事故などの危険を回避できる
- 時間や体力的負担を大幅に減らせる
- 安全性向上
- 屋根からの落雪による事故を防止できる
- 住宅周辺の安全性を確保できる
- 空間効率の向上
- 雪下ろしのためのスペースが不要になる
- 狭い敷地でも空間を有効活用できる
デメリット
- 建物への負担増加
- 雪の重みで建物に負担がかかり、歪みが生じる心配
- 太陽光パネルとの併設が困難
- 雨漏りのリスク増加
- 雪解け水の排水経路が複雑になるため、雨漏りのリスクが高まる
- 定期的なメンテナンスが必要
- 費用面
- 初期費用やメンテナンス費用が高額になる傾向がある
無落雪屋根にリフォームする費用相場
無落雪屋根へのリフォーム費用は、100万〜300万円が相場です。
リフォーム費用は、屋根の大きさや形状、変更後の屋根タイプなどによって変わります。
たとえば、山の形した屋根をM型屋根に改修する場合、屋根の構造ごと変えなければならず高額になりがちです。300万円ほどかかることも想定しておきましょう。
一方、三角屋根の形状を変えずにスノーストッパー屋根に変更する場合は、100万〜150万円ほどで済むケースもあります。
また、屋根のリフォームだけでなく、融雪を効率的に行うための設備を導入することもあります。これらの設備は単独で使用されることもありますが、無落雪屋根と組み合わせて利用されることもあります。
たとえば、雪の滑り落ちを防ぐ雪止めの取り付けには、10万円~40万円ほどの費用がかかります。さらに、積極的に雪を溶かす融雪設備の導入を考えると、50万円~300万円程度の追加費用が必要になるでしょう。
無落雪屋根に安くリフォームする方法
無落雪屋根のリフォーム費用を抑える方法をご紹介します。
- 複数の業者から相見積もりを取る
無落雪屋根のリフォームは、業者によって費用相場が大きく変動します。複数の業者に見積もりを依頼し、内容を比較することが大切です。
- 火災保険の適用を検討する
火災保険の中には、雪害による屋根の損傷を補償対象としている場合があります。保険適用が可能であれば、自己負担額を大幅に減らせる可能性があります。
- 足場が必要なリフォームと同時に行う
外壁塗装や雨どい交換など、足場が必要なリフォームと同時に行うことで、足場設置費用を節約できます。
- リフォーム内容を見直す
予算が厳しい場合は、屋根の構造を変えるのではなく、スノーストッパー屋根などの簡易的な方法を検討するのも一つの方法です。
無落雪屋根のリフォームは、高額な費用がかかる工事ではあるものの、工夫次第で費用を抑えられます。これらの方法を組み合わせて、賢くリフォームを進めていきましょう。
補助金を活用する
無落雪屋根へのリフォーム費用を抑えるため、補助金制度の活用を検討しましょう。多くの自治体では、雪対策リフォームに対する補助金制度を設けています。ここでは、代表的な2つの補助金制度を紹介します。
克雪住宅普及促進事業補助金(長野県)
長野県の「克雪住宅普及促進事業補助金」は、豪雪地域に住む住民の雪下ろしによる負担や事故を減らすため、住宅の克雪化(新築・増改築・改修工事)にかかる費用の一部を助成する制度です。
対象地域は特別豪雪地帯に限られ、融雪型、自然落雪型、雪下ろし型の住宅が対象です。補助金額は工事費の1/5〜1/2が補助され、上限額は8万円から75万円までとなっています。
克雪すまいづくり支援事業・命綱固定アンカー普及促進事業(新潟県)
新潟県の「克雪すまいづくり支援事業・命綱固定アンカー普及促進事業」は、雪に強い地域づくりを目指して、多雪地域の住宅の克雪化と、屋根雪下ろし時の転落事故を防ぐ安全設備の設置を支援する制度です。克雪すまいづくり支援事業では、特別豪雪地帯における住宅の克雪化費用を市町村に補助し、命綱固定アンカー普及促進事業では、安全対策設備の設置費用を支援します。補助金額は地域によって異なり、最大で100万円となっています。
※上記の例は、2024年8月現在のものです。
補助金制度を利用する際は、あらかじめ以下を確認しておきましょう。条件の判断が難しい場合は、リフォーム業者へ相談してみてください。
- 住んでいる地域に適用可能な制度があるか
- 自宅やリフォーム内容が対象条件を満たしているか
- 申請期限に間に合うか
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