屋根板金の中でも、棟板金と呼ばれる屋根材が劣化すると、雨漏りや屋根が飛ばされるなどの危険な現象の原因になります。棟板金が劣化しているサインを見つけたら、ただちに修理を行わなければなりません。
屋根板金の修理を業者に依頼する時には、どのような不具合が起きているかを確認しましょう。また、費用相場を知っておくと悪徳業者に騙される可能性がなくなります。この記事では屋根工事の修理内容に加えて優良業者の選び方や、火災保険の活用の仕方についても解説するのでぜひ参考にしてください。
屋根板金とは?
屋根板金とは、屋根材同士のつなぎ目を覆う、薄くて平たい金属製の板のことです。屋根材の接合部分を板金で覆うことで、つなぎ目から雨水や風、虫が侵入するのを防ぎます。
基本的には、サビにくく耐久性が高いガルバリウム鋼板が使用された板金が多いです。
屋根板金には主に以下の3種類があります。
- 棟板金:屋根の頂点部分を覆う板金
- 谷板金(谷樋板金):屋根の谷部分を覆う板金
- 水切り板金:屋根の軒先を覆う板金
ここからは、それぞれの屋根板金について詳しく解説します。
なお、棟板金は特に重要な役割を果たしているため、のちほど更に詳細を説明するので、棟板金について知りたい人は「棟板金とは?」の章を先にお読みください。
谷板金(谷樋板金)
谷板金(谷樋板金)は、屋根の谷になっている接合部分を覆う板金です。雨水を軒先に向かって流し出すために設置されているもので、コロニアルとも呼ばれるスレート屋根のような金属製の屋根だけでなく瓦屋根にも使われています。
屋根の傾斜部分に設置されるので、雨風や雪の影響を受けやすいのが特徴です。そのため、ひび割れやサビなどの症状が多く見られる傾向にあります。腐食が進むと雨漏りの原因になる箇所で、修理する頻度が高い部位です。素材としては、トタンやステンレス、ガルバリウム鋼板などが多く使われています。
水切り板金
水切り板金は、雨水が住まいの内部に浸入するのを防ぐために取り付けられます。水切り板金には数種類あり、それらを屋根の軒先や1階と2階の接合部などに設置して、雨水を溜めずに地上に流し出します。
設置場所によって、雨樋から雨水を流す仕組みを作る役割も持っている板金もあります。このように雨水が正常に流れ出すことで雨漏りのリスクを減らせるのです。
水切り板金に色褪せやサビが見られたら、塗膜保護の劣化が疑われます。また、放置すると穴が空くため、早めに塗装しなければなりません。板金が歪んだり凹んでいる時は、雨水が正しく流れなくなる前に補修をするようにしましょう。
棟板金とは?
棟板金は、屋根の頂点部分にあたる箇所に取り付けられている板金です。通常、スレート屋根や金属屋根などに使用されており、屋根材の結合部分から雨水が浸入するのを防ぐ役割があります。
断面で見ると「へ」の字型をしており、下地には「棟下地(貫材)」と呼ばれる下地材が2本並行に取り付けられています。棟下地の種類は主に「木板」「樹脂」「ガルバリウム鋼板」の3つです。この中でもガルバリウム鋼板はビスで強く固定されるため、強度が出ます。
ただし、どの下地材を使っても、棟板金は雨や紫外線にさらされやすいため、劣化が早いのが特徴です。10年~15年以上経つと次第に劣化してくるため、雨漏り修理を含むメンテナンスを行いましょう。
棟板金の劣化のサイン
棟板金が劣化した時は、できるだけ早く修理をしなければなりません。どのような症状が見られたら修理をするべきなのか、チェックしておくべきサインを把握しておきましょう。
棟板金の劣化のサインは、主に以下の5つです。それぞれ詳しく解説します。
- 釘が抜ける・浮く
- 雨水が浸入する
- 棟板金が浮く
- サビが発生する
- 棟板金が煽られて飛ばされる
釘が抜ける・浮く
棟板金の下地材は釘で固定されていることが多いですが、釘が抜け落ちると板金が飛ばされ周囲に危険が及ぶ可能性があります。釘が抜けたり浮いたりするのは、日光による熱膨張が原因です。
また、風圧がかかる事や寒暖差の影響なども考えられるため、天候の影響を受ける事で起きやすい劣化のサインだと言えます。
雨水が浸入する
釘が浮いたり抜けたりすると、棟板金の内部に雨水が浸入します。浸水は下地材の腐食の原因となり、更に釘を緩めてしまい、危険が高まるため注意が必要です。また、腐食が進むと屋根材や屋根そのものの劣化を引き起こす可能性もあります。
腐食を放置し続けると釘を打ち直せなくなるので、下地材ごと棟板金を交換しなければならなくなってしまいます。塗装工事だけでは対処できなくなり、工事費用も嵩みます。大掛かりな修理工事になるため、その前に早めに修繕しましょう。
棟板金が浮く
釘が浮いたり抜けたりしていると、棟板金が浮くという現象が起きます。外から見て明らかに棟板金が浮き上がっている場合は、特に注意が必要です。雨漏りが起きる可能性が高く、釘が完全に抜け落ちてしまう事も考えられます。
また、棟板金が浮き上がっているほど劣化が進んでいる場合は、下地材に何らかの異変が起きている事はほぼ間違いありません。スレート屋根においても、瓦屋根においても、棟板金の浮きは起き得るトラブルです。
サビが発生する
屋根板金の劣化症状としてサビの発生が挙げられます。特にトタン屋根にはサビが発生しやすく、劣化の初期症状としてわかりやすいものだと言えるでしょう。もちろん放置しておくべきではありませんが、サビが発生した時点では下地材の劣化はまだそれほど進んでいません。
下地材の劣化が進む前に、屋根材に塗装をして対処するのがおすすめです。特に錆び止め材を含んでいる塗料を使った屋根塗装をするのが一般的なので、業者に相談してみましょう。サビが広がり切らないのが塗装をするうえで最適なタイミングです。劣化を食い止めるためにも早めの対策を講じましょう。
棟板金が煽られて飛ばされる
釘の抜けや棟板金の浮きを放置しておくと、台風のように強風が吹くと風圧に耐え切れず棟板金が飛ばされてしまう事例が多数あります。歪んだ棟板金は強風によって更に変形してしまうので、一度耐えたとしても再度強風が吹いた時に飛ばされないとは限りません。
飛ばされた棟板金は近隣へ被害をもたらす可能性が非常に高いと言えます。隣家にぶつかったり、道路へ落ちたりといった危険性があるため、早急に修理しなければならないでしょう。
自分でできる棟板金の応急処置
棟板金が劣化していても、すぐに業者を呼べないというケースもあるでしょう。そのような時は、応急処置をしておかなければなりません。応急処置はあくまでも業者の施工を待つまでの対処ですが、緊急性が高い場合は可能な限り行っておく事をおすすめします。
ただし、高所作業となるため無理は禁物です。出来る範囲で留めるように心がけましょう。
ここでは、以下の2つの方法について解説します。どちらも手順としては難しくありませんが、注意点としては足場をきちんと安定させる事や、工具の正しい使い方を十分把握しておく事などが挙げられます。
- ビスとテープを使う
- ビニールで覆う
ビスとテープを使う
用意するものは、以下の3点です。
手順は以下の通りです。
- 下地材の状態を確認する
- 外れている棟板金を仮押さえする
- ビスを打つ場所を決める
- インパクトドライバーでビスを留める
- テープで棟板金を固定する
ビニールを覆う
用意するものは、以下の2点です。
手順は以下の通りです。
- 養生ビニールシート(ビニール素材なら可)で棟部分を覆う
- テープで固定する
棟板金の修理方法
屋根板金の中でも、特に棟板金に深刻な劣化が見られる場合は、交換工事による修理が必要です。修理業者によって異なりますが、一般的には下記の手順で修理が行われます。
- 既存の下地材と棟板金を撤去する
- 新しい下地材を施工する
- 新しい棟板金を設置する
基本的に屋根板金の修理をDIYでするのはおすすめできません。プロの施工業者に依頼し、まずは見積もりを取るところから始めましょう。
以下では、それぞれの施工工程について詳しく解説します。
①既存の下地材と棟板金を撤去する
まず、古くなっている既存の下地材と棟板金を全て撤去します。下地材は腐食している事が多く、機能しなくなっているケースがほとんどです。
②新しい下地材を施工する
既存の下地材と棟板金を撤去したら、新しい下地材を取り付けます。下地材には「木板」「樹脂」「ガルバリウム鋼板」の3種類が主に使われていますが、この中で最も耐久力が高いのはガルバリウム鋼板です。木板と樹脂よりも高価ですが、ビスで強く固定できる事や変形を防げる事などが大きなメリットとして挙げられます。
③新しい棟板金を設置する
下地材の上に棟板金を設置して、施工完了です。棟板金の交換は、約1日から2日で行う事が出来ます。なお、板金部分にサビが発生している場合は錆止め塗装を行います。
棟板金の修理にかかる費用相場
ここからは、屋根板金の修理にかかる費用相場を工事内容別にご紹介します。
- 棟板金のコーキング補修をする場合
- 棟板金のみを交換する場合
屋根板金の修理に必要な費用は、板金代をはじめ足場代や養生代、処分費など多岐にわたります。板金の長さや屋根の勾配などによっても費用が変動するため、相場は事前に確認しておきましょう。
なお、本記事では棟板金の修理を想定した費用相場をご紹介しています。
棟板金のコーキング補修をする場合
棟板金の釘が抜けたり、ゆるんだりしている場合は釘打ちコーキングで対応できます。抜け落ちた釘を打ち直し、釘頭をコーキング剤でふさぐ方法です。
施工が簡単で特殊な道具も必要ないため、費用相場は2万円〜5万円程度が目安となっています。長くても数時間程度で作業が終了する場合が多く、大掛かりな工事にはなりません。
棟板金のみを交換する場合
棟板金の劣化が進んでいる場合は、板金自体を交換する工事が必要です。費用相場は下記の通りで、コーキング補修よりも高くなる傾向にあります。
工事内容 | 施工単価/m | 修理費用相場(板金の長さが25mの場合) |
棟板金交換工事 | 約5,000〜6,600円 | 約125,000〜165,000円 |
また、下地代や足場代が別途必要になるので、見積もりで内訳を確認することが大切です。10万円〜16万円程度が相場の範囲内なので、あまりにも費用が高すぎる場合は業者の変更を検討しましょう。
見積書を渡された時は、必ず施工面積に対して割高な施工費になっていないか、「経費」で項目をひとまとめにされていないかなどを確認してください。
棟板金の交換工事を行う際は、屋根裏に溜まった空気を逃がす「換気棟」を同時に交換するのがおすすめです。換気棟は屋根の頂点部分に設置する部品で、室内の熱気や湿気を屋根から排出するために取り付けられています。
屋根に穴を空ける必要があるので、雨漏りの心配をする人が多いシステムですが、換気棟から雨漏りをする事はありません。換気棟を使えば効率的に空気の循環を生み出せるため、室内の温度を調節しやすくなるというメリットがあります。
また、以下の関連記事では、屋根板金や他の修理の費用相場も掲載しています。ぜひ参考にしてください。
関連記事:屋根修理・工事の費用相場
板金工事と屋根工事の違い
板金工事と同時に屋根工事も行えるケースがあり、一度に行うと手間と費用が省けるのがメリットです。
板金工事は金属薄板を扱う工事を指すのに対し、屋根工事は瓦やスレートなどの屋根葺き材を使用した修理全般を指します。
ここでは、屋根工事の一種である「葺き替え工事」と「カバー工法」について解説します。
屋根工事の葺き替え
屋根の葺き替え工事とは、既存の屋根材を全て撤去してから下地を補修し、新しい屋根材を設置する施工方法を指します。
屋根材の下には、ルーフィングと呼ばれる防水シートや野地板などが敷かれているので、それらを整えて傷みをなくしてから屋根材を取り付ける工法です。
屋根が新品になるため、耐用年数や寿命が長くなったり、雨風に対する耐久性が向上したりするといった効果が期待できます。屋根やお家を長持ちさせたい人には葺き替え工事が適しているでしょう。また、既存の屋根材を軽い屋根材に変更すれば、地震による揺れに強くなるので耐震性も上がります。
屋根工事のカバー工法
屋根のカバー工法とは、既存の屋根材の上に防水シートを貼って、その上に新しい屋根材を設置する施工方法を指します。
屋根カバー工法は葺き替え工事よりもコストをカットでき、短い工期で施工ができるというメリットがあります。ただし、アスベストが含まれている場合は工事費が高くなるので確認が必要です。
また、新しい屋根材と既存の屋根の間に空気の層ができるため、断熱性能の向上が期待できるでしょう。新しい防水シートを貼り付けるので雨漏り防止効果も高まります。屋根そのものが二重構造になるため、雨音を軽減できるのもカバー工法の特徴です。
火災保険を利用しよう
自然災害が原因で屋根板金の修理を行う時は、火災保険を適用できるケースがあります。加入しているプランによっても異なりますが、一般的には以下の3つの条件を満たす事が条件です。
- 風災・雪災・雹災が原因であること
- 被害を受けてから3年以内であること
- 修理費用が20万円以上であること
火災保険は被災したらすぐに保険会社に連絡をして、申請に必要な書類を受け取るようにしましょう。
その後、屋根専門の専門業者に見積書の作成を依頼してください。修理業者に依頼する際に「火災保険を適用したい」という意思を伝えておくのも大切です。
次に、保険会社から送付される「保険金申請書」と「事故状況説明書」を作成し、見積書と被害状況がわかる現場写真と併せて保険会社に送ります。その後は保険会社が申請を承認するのを待ちましょう。
失敗しない業者選びの方法
屋根板金の修理は、以下の3つのポイントに着目し、信頼できる業者に依頼することが大切です。
- リフォーム瑕疵保険に加入している業者を選ぶ
- 実績や口コミが豊富な業者を選ぶ
- 相見積もりをとる
また、なるべく修理費用を抑えたい方は、地元の施工業者に依頼すると良いでしょう。業者の拠点と施工場所の距離が近く、対応エリアを絞っているため、運搬費用が安くなる可能性があります。
リフォーム瑕疵保険に加入している業者を選ぶ
リフォーム瑕疵保険とは、修理・リフォーム後に欠陥が見つかった場合、事業者に対して保険金が支払われる制度のことです。施主ではなく修理業者が加入する保険で、加入しているかどうかは一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会の公式サイトで確認できます。
また、依頼した修理業者が倒産した場合は施主に保険金が支払われます。万が一のトラブルに備え、リフォーム瑕疵保険に加入している業者を選ぶと安心して依頼できるでしょう。
実績や口コミが豊富な業者を選ぶ
屋根板金の修理業者を選ぶ際は、修理実績や口コミもしっかり確認するようにしましょう。信頼できる業者ほど、公式ホームページに豊富な施工実績が記載されているケースが多い傾向にあります。内訳ごとの写真や実際の施工費用なども解説してある場合は、併せて確認しておくのがオススメです。
また、実際に施工を依頼した方の口コミも確認しましょう。施工内容の詳細が書かれている業者は信頼できます。特に、長年地元で親しまれている業者は口コミを調べやすいため、悪評が多すぎないかチェックしておくと安心です。
なお、飛び込み営業をする業者には注意しましょう。見積書では無料だと記載している項目について、後から高額な施工費を請求してくる悪徳業者である可能性が非常に高いと言えます。
相見積もりをとる
相見積もりも忘れずにとるようにしましょう。相見積もりとは、一度に複数社の見積もりをとる方法です。一社ずつ見積りをとるのは手間も時間もかかりますが、相見積もりなら簡単に見積もりを比べられます。
費用だけでなく、アフターフォローなどの施工後の保証についても確認できるのが便利な点です。定期的な無料点検のようなサービスが充実しているかどうかも、業者選びの際の大切な判断材料だと言えます。
棟板金の修理は業者に依頼すると安心
屋根板金の中でも、棟板金は特に劣化が激しい箇所です。劣化を放置しておくと住まいにさまざまな不具合が生じますが、DIYで修理するのは危険を伴ううえ、専門的な技術が必要であるため現実的ではありません。
お家の劣化のサインを発見したら、まずは専門の業者さんに修理を依頼しましょう。優良業者を探し、損傷の進行を早めに食い止めるのが重要です。補修したい部分について相談して、適切な補修方法をとってもらうのがおすすめです。
また、優良業者であれば同時に屋根リフォームや外壁塗装についても併せて相談してみるとよいでしょう。リフォーム費用は一度の施工で済ませると抑えられる可能性が高いです。これは業者がリフォーム工事にかかる手間を省ける事が理由のひとつだと言えます。もちろん料金が高すぎたり、不安が残る説明しかしてくれない業者は避けましょう。
効率よく業者選びができる相見積もりを活用して、ぜひ信頼して依頼できる業者を見つけてください。
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