従来、水性塗料と油性塗料とでは「耐久性」に差があるとされてきました。
しかし、最近では耐久性に優れた水性塗料の商品も増えてきています。
この記事では、水性塗料と油性塗料の違いや特徴、選ぶポイントを解説します。外壁塗装や屋根塗装をご検討中の方は、最後までご一読ください。
水性塗料と油性塗料の違いとは
水性塗料と油性塗料とでは、塗料を薄めるために使用されている希釈剤に違いがあります。
塗料の主な原料としては、以下の3つが挙げられます。
- 顔料
- 合成樹脂
- 溶剤(希釈剤)
顔料は塗膜に色を付け、合成樹脂は外壁や屋根塗料の耐久年数を決める重要な役割を担います。ウレタンやシリコン、フッ素など、樹脂のグレードによって単価や耐久年数が変動します。
顔料と合成樹脂はいずれも、もとは固体なので加工しないと塗料として使用できません。
水性塗料の場合は希釈剤に「水」を使い、油性塗料はシンナーをはじめとした「有機溶剤」を使用して顔料と合成樹脂を溶かします。
このように水性塗料と油性塗料は、希釈剤に「水」「有機溶剤」のどちらを使用しているかという点に違いがあります。
水性塗料の特徴
水性塗料には、以下のような3つの特徴があります。
- 安全性が高い
- 健康被害の心配が少ない
- 火事の心配が少ない
希釈剤に水を使用する水性塗料は、人体や地球環境に有害な化学物質の排出が少ないという特徴です。市場で流通するほとんどの水性塗料は、最高評価の「F☆☆☆☆」を獲得しています。
Fはホルムアルデヒドを意味しており、☆の数が多いほど安全性への評価が高いとされています。よって「F☆☆☆☆」の商品は、塗装面積の制限がありません。「F☆☆☆☆」の登録商品としては、日本ペイントの水性ファインSiやニッペ パワーバインド®などが挙げられます
健康被害や引火のリスクも低いため、小さい子どもや高齢者と同居中の家庭でも安心して使用することができます。
油性塗料の特徴
油性塗料には、アサヒペンの油性多用途カラーや油性高耐久アクリルトタン用αなどが、該当します。
油性塗料の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
- 対応できる範囲が広い
- 密着性が高い
- 独特の臭いが漂う
油性塗料は、耐久性・耐候性・耐水性に優れていることから幅広いシーンで活躍します。特に、屋根や外壁、ウッドデッキなど、紫外線や風雨のダメージが大きい箇所での塗装に使用されるケースが多いようです。
また、密着性が高く、水性塗料が苦手な金属屋根の下塗りや雨樋の補修工事などでも、きれなに仕上がりが望めます。
一方、施工後はシンナー特有の刺激臭が残るだけでなく、人体に有害なVOCの排出量も多いため注意が必要です。
このように油性塗料は、体調不良や近隣トラブルを招くリスクがあることから、近年では水性塗料を選ぶ傾向が高まっています。
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水性塗料を使用するメリット
水性塗料を使うメリットは、以下の通りです。
- 臭いがほとんどしない
- 有害物質の排出が少ない
- 引火しにくい
- 汚れを落としやすい
健康被害や引火のリスクが少ないため、業者に塗装を依頼する場合も安心です。
臭いがほとんどしない
希釈剤に水を使用する水性塗料は、乾燥すると水分が蒸発します。蒸発したあとは、顔料や合成樹脂など塗料の臭いが多少残る程度で、シンナーのような強烈な臭いが発生する心配もありません。
水性塗料であれば、塗装後の臭いが原因で起こる体調不良や、近隣トラブルを招くリスクを避けられるでしょう。
有害物質の排出が少ない
水性塗料は油性塗料に比べて、VOCと呼ばれる揮発性有機化合物の排出量が少ないとされています。
VOCとは、トルエンやキシレンなど200種類以上ある化学物質の総称を指します。環境省が発表した「すぐにできるVOC対策」によれば、油性塗料のVOC含有率が30〜60%に対し、水性塗料の含有率は7%以下という結果が示されています。
人体や環境にやさしく、健康被害や大気汚染の発生リスクを抑えられます。
引火しにくい
水性塗料は、シンナーを含む油性塗料と比べて、引火しにくいという特性があります。塗装や保管の際に、火災の発生に注意を配る必要もありません。
塗装業者にとっても、塗装作業に集中して取り組むことができるなど、扱いやすい塗料となっています。
汚れを落としやすい
塗装作業が終わったあと、使用済みのローラーやハケについた汚れを水洗いで落とすことができます。
塗料が乾燥した場合でも、洗剤を使えば簡単に汚れを落とせるため、道具の手入れに手間がかかりません。
水性塗料を使用するデメリット
水性塗料を使用する場合、以下のようなデメリットが生じます。
- 乾燥しにくい
- ツヤが落ちやすい
- 屋根の下塗りには向いていない
順番にみていきましょう。
乾燥しにくい
水性塗料は、一定の温度に達しないと固まらない性質を持ちます。よって、乾燥時間が天候に左右されやすいため、お住まいの地域によっては工期が長引く可能性があります。
塗装を検討中の方で、特に年間を通して気温が低い寒冷地域にお住まいの方は、晴天が多い春や秋におこなうのが理想です。
また、水性塗料は塗料が完全に固まっていない状態で水に触れると、塗料が剥がれてしまいます。雨量が多い梅雨から夏にかけては、塗装工事を見送りましょう。
ツヤが落ちやすい
有機溶剤を含んでいない水性塗料は、その分、ツヤが出にくく持続性も低いのが欠点です。
ツヤ感を重視したい場合は、基本的に油性塗料を選ぶことを推奨します。
また、水性塗料の代わりに、合成樹脂にアクリルやウレタンを使用するのも1つの方法です。
独特の光沢でおしゃれな印象が演出できる水性塗料ですが、ツヤが保たれる年数は10年未満とされており、定期的な塗装メンテナンスが必要です。
屋根の下塗りに向いていない
水性塗料は、アルミやトタンやステンレスなど金属との相性が悪く、塗装しても密着度が低いため定着しません。
よって、金属板を使用した屋根の下塗り・雨とい・破風板・軒天井などの塗装工事には不向きです。
油性塗料を使用するメリット
油性塗料を使うメリットは、以下の通りです。
- 耐久性に優れる
- 仕上がりが美しい
- 乾燥しやすい
- 使用環境や素材の影響を受けにくい
メリットの内容を一つずつみていきましょう。
耐久性に優れる
油性塗料は、水性塗料に比べて水分量が少なく、揮発性(液体の蒸発しやすい性質)にも優れています。そのため、短い乾燥時間で作業可能です。水にも強いため、気温や湿度などの影響を受けることもほとんどありません。
ただし、雨の日は塗料が流れてしまうリスクがあり、仮に塗装をおこなったとしても本来の耐久性・防汚性は十分に発揮できない可能性があります。せっかくの塗装費用も無駄になってしまう場合があるため、雨の日の塗装は避けるのが無難です。
環境や素材の影響を受けにくい
耐水性や防汚性に優れている油性塗料は、年間の降雨量が多い地域環境であっても大きな影響を受けることはほとんどありません。
また、塗装の材質を問わず、きれいな仕上がりを望める点も魅力と言えます。水性塗料と相性が悪い金属系の素材でも、ムラがなくきれいに発色させることができます。
油性塗料のデメリット
油性塗料を使用した場合のデメリットは、以下の通りです。
- シンナーの強烈な臭いが漂う
- 室内には使用できない
- 引火性が高い
デメリットの内容をくわしくみていきましょう。
シンナーの強烈な臭い
油性塗料で塗装したあとは、シンナー独特の強烈な刺激臭が漂います。近年は臭いが弱い「弱溶剤タイプ」の油性塗料も開発されていますが、水性塗料と比べると体調不良を起こすリスクが高くなります。
また、油性塗料の臭いが原因で、近隣住民からクレームが寄せられる可能性も考えられます。
室内で使用できない
油性塗料は水性塗料と比べて、人体に有害なVOC(揮発性有機化合物の排出量)を非常に多く含みます。室内で使用した場合、シックハウス症候群を引き起こす確率が高まります。
シックハウス症候群とは、お住まいの環境が原因で発生する健康被害の総称です。発症した場合は鼻水、喉の痛み、頭痛、めまい、吐き気などの症状があらわれます。
引火性が高い
シンナーの引火点は、最低温度が−9℃と非常に低いという性質があります。
油性塗料にライターやチャッカマンなど点火源を近づけた場合、酸素の割合によっては高確率で発火する恐れがあります。
水性塗料と油性塗料の選び方
ここでは、水性塗料と油性塗料を使い分けるポイントを解説していきます。
塗装箇所
塗装をおこなう場所によって、適切な塗料を選ぶことが大切です。
屋根の塗装では、耐水性・耐候性・防汚性に優れている油性塗料、外壁の塗装には人体にやさしく引火性も低い水性塗料を選ぶというように、塗装箇所によって塗料の特性を使い分けましょう。
屋根塗装は外壁塗装と比較すると、紫外線や雨風による外的ダメージの影響が受けやすいため、劣化しにくい油性塗料が適していると言えます。
外壁の材質
住宅の外壁材によって、水性塗料と油性塗料を使い分けるのも1つの方法です。
水性塗料は、外壁材によって相性の良し悪しがはっきりしています。
例えば、窯業系サイディングやモルタルを外壁材に使用している場合は、水性塗料がおすすめです。理由としては、どちらの材質も塗料が馴染みやすく、分厚い塗膜を形成できるからです。
一方で、水性塗料は金属系サイディングの塗装には向いていません。
ガルバリウム鋼板やアルミ合金などを外壁材に使っている場合は、金属系の材質と相性のいい油性塗料を使用することをおすすめします。
内装への使用可否
室内の壁や天井などに塗装をするときは、基本的に有害物質の排出が少ない水性塗料しか使用できません。
また、リビングやキッチンなどフローリングの表面を塗装する場合は、油性ニスやフローリング専用塗料を使うのがおすすめです。硬い塗膜を形成することが可能になるため、摩耗や日焼けによる劣化を防げます。
水性・油性を含む塗料を扱う際の注意点
水性塗料と油性塗料を選ぶ前に、「合成樹脂の種類」や「1液型と2液型の違い」についても把握しておくと安心です。
水性・油性問わず、どの合成樹脂を選ぶかによって、施工費用や耐用年数、メンテナンス頻度などが大きく変動します。素材ごとの特徴や単価も事前にチェックしておきましょう。
合成樹脂の主な種類
外壁・屋根塗装に使用される合成樹脂の主な種類は、以下の6つです。
- アクリル
- ウレタン
- シリコン
- ラジカル制御
- フッ素
- 無機塗料
- 光触媒
材質ごとの特徴については、以下の各表にまとめています。
アクリル
特徴 | ・施工しやすい ・カラーの選択肢が多い ・耐久性が低い |
単価(1㎡あたり) | 1,500円 |
耐用年数 | 5~7年 |
ウレタン
特徴 | ・柔軟性や弾力性に優れる ・ひび割れがしにくい ・紫外線に弱い |
単価(1㎡あたり) | 1,500~2,200円 |
耐用年数 | 7~10年 |
シリコン
特徴 | ・コストパフォーマンスに優れる ・耐候性と耐水性に優れる ・施工しやすい |
単価(1㎡あたり) | 2,500~3,500円 |
耐用年数 | 10~15年 |
ラジカル制御
特徴 | ・市場での流通量が増えている ・耐候性に優れる ・コストパフォーマンスに優れる |
単価(1㎡あたり) | 2,400円 |
耐用年数 | 12~16年 |
フッ素
特徴 | ・色あせや劣化がしにくい ・密着性が高い ・屋根塗装に適している |
単価(1㎡あたり) | 3,500~4,500円 |
耐用年数 | 15~20年 |
無機塗料
特徴 | ・経年劣化が発生しにくい ・カビやコケが発生しにくい ・ランニングコストを抑えられる |
単価(1㎡あたり) | 4,500~5,000円 |
耐用年数 | 20~25年 |
光触媒
特徴 | ・セルフクリーニング機能を持つ ・防汚性に優れる ・日当たりのよい住宅に適している |
単価(1㎡あたり) | 5,000~6,000円 |
耐用年数 | 15~20年 |
合成樹脂の材質選びに迷った場合は、コストパフォーマンスの高いシリコン素材を選ぶのがおすすめです。
シリコンは耐水性・耐候性・防汚性に優れており、耐用年数は10〜15年ほどとされています。
市場の流通量も豊富で多くの塗装業者が取り扱っている材質なので、業者の依頼先が限定されることもありません。
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1液型と2液型の違い
塗料は水性・油性に限らず、1型と2液型の2種類に分類されます。
1液型は、希釈剤に水か有機溶剤の主剤のみで、他には何も含まない塗料のことです。
一方、2液型は硬化剤を混ぜたあと、水か有機溶剤で塗料を薄めるタイプの塗料を指します。
硬化剤は耐久性に優れているため、メンテナンスの頻度を減らしたいという方は、2液型の塗料がおすすめです。
2液型には油性塗料の商品が多く、水性塗料はほとんどありません。よって、水性塗料を検討中の方は注意が必要です。
水性塗料と油性塗料に関してよくある質問
水性塗料と油性塗料についての質問と回答をまとめました。
水性塗料と油性塗料では、どちらが耐久性に優れていますか?
油性塗料の方が耐久性に優れている商品が多いと言えます。しかし、最近は水性塗料の商品でも耐久性に優れたものが増えており、以前ほど大きな差がなくなってきています。
また、水性塗料の方が安く購入できる商品が多いため、耐久性の差がさほど気にならない場合は、水性塗料を選びましょう。
水性塗料は雨で落ちますか?
塗料が乾いて塗膜が効果すると、雨に濡れても塗料が流れる心配はありません。ただし、乾燥するまでは水に弱いため注意が必要です。
よって、雨が多い6〜7月の梅雨時期などは塗装作業を避けるのが無難です。
水性塗料と油性塗料の重ね塗りはできますか?
水性塗料を先に塗装していた場合、油性塗料の重ね塗りが可能です。変色やムラの発生を防ぐには、水性塗料が完全に乾いてから重ね塗りを実施することをおすすめします。
油性塗料を先に塗装したケースでは、水性塗料の重ね塗りはできません。油性塗料が水性塗料を弾いてしまうため、塗料同士が十分に密着せず、塗膜剥がれの原因になります。
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