日本らしい趣のある土壁は、調湿性や断熱性に優れているだけではなく、防火性にも優れています。近年増えているサイディングとは異なり、職人さんの腕によって仕上げが大きく変わる点も魅力ですよね。そのため、土壁が気になっている方や、中にはDIYで仕上げたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、土壁を検討している方に向けて、必要な情報を詳しく紹介しています。土壁の特徴やリフォーム費用の相場、業者に依頼する手順、DIYの方法なども説明しているので、ぜひチェックしてみてください。
土壁とは
土壁とは、壁全体が土で作られた壁、もしくは外側のみが土で仕上げられた塗り壁のことです。土に藁(わら)などの自然素材を混ぜ込み、左官職人が手作業で塗って仕上げていきます。
土壁は外壁や塀などにも用いられますが、和室の内壁にも用いられます。土独特の色や風合いを活かしたさまざまな種類があること、調湿性や耐火性に優れていることなども、土壁の特徴です。
よく比較される、砂壁との違い
砂壁とは、色のついた砂を糊、水と混ぜ合わせ、壁の土台に上塗りして仕上げた壁です。土壁とは異なり、土台からすべて同じ素材でできているということはありません。なお、砂壁の土台には石膏ボードや土壁、モルタルなどが一般的です。
色のついた砂は、人工的に着色することもありますが、天然砂や砕石を焼いたものや、金属の粉、貝殻の粉などが混ぜ込まれていることもあります。そのため、土壁と比べるとカラーバリエーションが豊富で、選択肢が豊富です。
砂壁は一度剥がれてしまうと、その部分から剥がれが広がってしまうので、こまめにメンテナンスをする必要があります。ぶつかったときや古くなったときなどに剥がれやすくなることが多いです。
また、剥がれやすいため、屋外の壁よりは和室などの内壁に使われる傾向にあります。砂壁は調湿性に優れているという特徴がありますが、剥がれてしまうと特性を活かせないので、すぐに塗り直すことが必要です。
土壁の特徴
土壁は外壁にも内壁にも使うことが可能です。まずは特徴について理解しておきましょう。
- 調湿性や断熱性に優れている
- 左官仕上げの風合いを楽しめる
- 防火性が高く、消臭効果がある
- シックハウス対策になる
- 工期が長い場合がある
- リフォーム費用が高くなる場合がある
それぞれのポイントについて解説します。
調湿性や断熱性に優れている
土壁は高温多湿な日本の気候に合う壁材です。調湿性に優れているため、内壁として利用すれば室内を一定の湿度に保ちやすくなります。
特に湿度が高くなりがちな梅雨時期や夏場も除湿機能が働くので、部屋にカビやダニが発生しにくくなります。また、冬場は室内が乾燥しすぎないように調整してくれるため、風邪や皮膚の乾燥を予防する効果も期待できるでしょう。
断熱性に優れている点も土壁の特徴です。外気の暑さ・寒さの影響を受けにくいので、冬は温かく、夏は涼しく過ごすことができます。また、室内の熱を逃がさないので、空調の効きが良くなる点もメリットです。
左官仕上げの風合いを楽しめる
サイディングボードを張って仕上げるサイディングは、シーリング(サイディングボードの継ぎ目などをシーリング材で埋めること)の技術によって差が出ることはあります。しかし、基本的にはサイディングボードを張るだけなので、職人さんによって見た目が大きく変わるということはありません。
一方、土壁は左官職人さんが手間をかけて塗って仕上げる塗り壁です。職人さんの腕次第で仕上げのクオリティが変わるだけでなく、見た目も大きな差が生じます。手作業ならではの風合いを楽しむことができるのも、土壁の魅力といえるでしょう。
防火性が高く、消臭効果がある
土壁の主な原材料である土や砂は、いずれも不燃性の無機質です。そのため、防火性に優れ、火事になっても延焼を防ぐ効果を期待できます。また、耐火性にも優れ、万が一のときでも崩れにくいのも土壁の魅力です。
また、土壁は多孔質の素材のため、消臭効果も期待できます。室内にいやな臭いがこもりがちなときは、土壁も検討できるでしょう。
なお、同じ塗り壁である砂壁も、防火性・耐火性が高く消臭効果のある素材です。メンテナンスのしやすさやカラーバリエーションの豊富さなども考慮に入れ、適した壁材を選びましょう。
シックハウス対策になる
シックハウス症候群とは、壁などにホルムアルデヒドやアンモニアなどの有害物質が含まれているときに起こる症状です。近年は住宅が高断熱化・高気密化しているため、空中に飛散した有害物質が室内に蓄積され、体内に入り込んで呼吸器などにアレルギー反応が見られるようになります。
土壁にはシックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒドなどが含まれていないだけでなく、有害物質を吸収し、室内の空気を浄化する作用があります。シックハウス対策やアレルギー対策にも、土壁を検討できるでしょう。
工期が長い場合がある
土壁は手間ひまをかけて職人さんが塗って仕上げる壁です。例えば、和室1室だけを土壁にする場合でも、2~4日程度の工事期間がかかります。外壁全体を土壁にすると、さらに工期が長くなるでしょう。
とはいえ、早く仕上げてくれる職人さんが良い職人さんとはいえません。技術力のある職人さんは作業も丁寧に行うため、工事期間が長引くこともあります。
リフォーム費用が高くなる場合がある
土壁は職人さんに手間と時間をかけて塗って仕上げる壁のため、比較的リフォーム費用が高くなる傾向にあります。
依頼する業者や職人さんにもよりますが、8畳間で20万円程度が目安です。壁紙を張って仕上げる場合であれば8畳間で10万円程度が目安となるため、費用が高めと感じるかもしれません。
また、技術力が高い職人さんに工事を依頼すると、さらにコストがかさむこともあります。とはいえ技術力の差は仕上がりの差、耐用力の差となって表れるので、費用だけでなく実績なども調べてから依頼する業者や職人さんを決めるようにしましょう。
メンテナンスが必要
土壁は比較的劣化しにくい壁材ですが、損傷を受けるとその部分から崩れることもあるため、定期的に状態をチェックしてメンテナンスすることが必要です。
また、土壁は臭いや有害物質などを吸収する効果がありますが、汚れも吸着しやすい点に注意しましょう。壁紙やタイルなどの壁材と比べると汚れが落ちにくく、場合によっては塗り直すことも必要になることがあります。常に美しい状態を保つためにも、こまめに状態チェックとメンテナンスを実施しましょう。
土壁をリフォームするタイミングとは
土壁は10年ほど経つと、剥がれや崩れが生じやすくなります。見た目ですぐに劣化が分かるので、ほころびが出てきたときは時期を逃さずすぐにリフォームするようにしましょう。
また、内壁として土壁を採用している場合であれば、床に土が落ちているのを見かけるようになったときがリフォームのタイミングです。土壁は部分的に修復するのが難しいという特徴があるため、土が剥がれ始めたら全体を塗り直すことが必要になるでしょう。
リフォームにかかる期間
8畳間の和室であれば、土壁のリフォームに2~4日ほどの期間がかかります。塗り直しは1日程度で終わりますが、乾燥させるのに1日以上かかるため、塗装や壁紙の張り替えと比べると時間がかかることが多いです。
土壁の土台部分が崩れている場合には、さらに時間が長引くこともあります。また、職人さんのスケジュールが空いていないときには、すぐにリフォームをしてもらえないこともあります。土壁の状態が良くないときは、余裕を持って早めに業者に相談するようにしましょう。
土壁のリフォーム方法
土壁のリフォームといえば、壁の塗り直しが一般的です。しかし、コストと時間がかかるので、リフォームを機に土壁とは異なる種類の壁材に変える方法もあります。リフォーム時に検討したい方法と特徴を以下にまとめました。
土壁のリフォーム方法 | 特徴 |
塗り替え(土壁) | ・工期が長めで費用も高額・土壁を維持できる・独特の風合いがある |
塗り替え(ペンキ) | ・リフォーム費用は壁紙よりも安価なことが多い・メンテナンスが簡単 |
壁紙(クロス) | ・工期が短く、リフォーム費用も比較的安価・メンテナンスが簡単 |
塗り替え(土壁)
土壁は表面に小さな孔が多数あることから、調湿性や脱臭性に優れ、また、湿度や温度を適切に維持できるというメリットがあります。土壁から土壁に塗り替えることで、土壁ならではの風合いを維持することができ、手間ひまをかけた高級感を演出することもできるでしょう。
ただし、塗り壁はすべて職人さんの手作業で仕上げるため、工事期間が長引きがちで、コストも高い傾向にあります。予算とリフォームにかけられる時間も考慮し、塗り替えるべきかどうか判断しましょう。
なお、塗り替えをするときは、素材選びも大切な要素です。土壁の素材としては、漆喰と珪藻土の2つがよく使われます。カビが生えにくいのは漆喰ですが、調湿効果が高いのは珪藻土です。それぞれの特徴について見ていきましょう。
漆喰壁
漆喰壁は、消石灰を主成分とする壁材です。ツヤがあり、すっきりとした印象に仕上がります。色は基本的に白系統で、外壁材としても使われることが多いです。壁全体に凹凸がないことから、模様をつけるとくっきりと浮き上がり、印象的な仕上がりになります。
調湿性に優れてはいますが、珪藻土と比べると少し劣ります。一方、防カビ性は珪藻土よりも高く、珪藻土の土壁で室内にカビが生えた経験のある方は、漆喰壁に塗り替えてみてはいかがでしょうか。
珪藻土壁
珪藻土壁は植物性プランクトンの化石が主原料となった壁材です。ツヤ感はあまりなく、ざらっとして凹凸のある素朴な仕上がりが魅力です。
また、白系の漆喰とは異なり、カラーバリエーションが豊富な点も珪藻土壁の特徴といえます。職人さんが自由に模様をつけることができるのは漆喰と同じですが、元々凹凸があるため、漆喰ほどには模様がくっきりと浮かび上がりません。
珪藻土壁の特徴としては、調湿性の高さが挙げられます。凹凸部分には小さな孔が多数空いているので、湿度や有害物質、不快な臭いなども吸着し、室内を快適な環境に維持することが可能です。しかし、水分を含みすぎることがあるため、防カビ性は漆喰壁に劣ります。
塗り替え(ペンキ)
土壁ではなくペンキで塗り替えるという方法もあります。デザイン性の高い壁に仕上げられること、なおかつ業者に依頼しなくてもDIYで比較的簡単にできることも魅力です。
ペンキとローラーさえあれば簡単に始められるので、工事費用を抑えることもできます。しかし、土壁の風合いが消えてしまうこと、土壁本来の孔をふさぐため調湿性や脱臭性が劣ってしまうことはデメリットです。
壁紙(クロス)
壁紙(クロス)は、内壁の素材としてよく用いられます。糊を塗って張るだけ(クロスの裏に糊がついたタイプもあります)で完成するので、手間がかからず、リフォーム期間も費用も土壁の塗り替えより抑えることが可能です。
また、壁紙はデザインや色の種類が豊富で、イメージに近いものが見つかりやすいというメリットもあります。しかし、土壁を壁紙でふさいでしまうことになるため、土壁本来の調湿性や脱臭性を活かせない点に注意が必要です。
土壁をDIYでリフォームできるの?
土壁をDIYでリフォームすることは可能です。簡単に仕上げたいのであれば、ペンキによる塗り替えが良いでしょう。ペンキとローラーで比較的手間をかけずに塗り替えできます。
壁紙を張る方法も、比較的簡単です。しかし、珪藻土壁のように凹凸がある場合は、しっかりと糊を塗っても剥がれやすくなるので、コストはかかりますが業者に依頼するほうが良いでしょう。
土壁への塗り替えは、腕の良い職人さんにとっても簡単な作業ではありません。十分に時間をかけられ、なおかつ根気よく作業を続けられる場合のみ、DIYに挑戦してみましょう。
DIYリフォーム方法
土壁の塗り替えリフォームは、次の方法でDIYできます。
- ほうきなどで土壁表面の汚れを落とす
- 塗り替えしない部分をマスキングテープで覆う
- 土壁全体にシーラーを2回下塗りする
- 凹凸があればパテで埋める
- 全体的に上塗りする。回数が多いとキレイに仕上がる
- 塗り残しの部分を刷毛で仕上げる
土壁リフォームにかかる費用相場
リフォーム方法別の費用相場と材料は以下の通りです。塗り壁として仕上げる場合でも、ペンキであれば費用を抑えることができます。
土壁のリフォーム方法 | 費用相場(6畳間) | 材料 |
塗り替え(土壁) | 12万~19万円 | シーラー、珪藻土、養生シートなど |
塗り替え(ペンキ) | 6万~10万円 | シーラー、ペンキ、養生シートなど |
壁紙(クロス) | 8万~16万円 | ベニヤ板、クロス、養生シートなど |
[塗り替え(土壁)]費用内訳
土壁への塗り替えリフォームの費用内訳は以下の通りです。
- 養生費:5,000円程度
- 土壁撤去費:30,000円程度
- シーラー塗布:5,000円程度
- 上塗り(材料費込み):90,000円程度
- 足場代:4,000円程度
- 清掃費、その他:20,000円程度
[塗り替え(ペンキ)]費用内訳
ペンキによる塗り替えリフォームの費用内訳は、以下の通りです。
- 養生費:5,000円程度
- 土壁撤去費:30,000円程度
- シーラー塗布:5,000円程度
- ペンキ塗り(材料費込み):30,000円程度
- 足場代:4,000円程度
- 清掃費、その他:15,000円程度
[壁紙(クロス)]費用内訳
壁紙(クロス)による張り替えリフォームの費用内訳は、以下の通りです。
- 養生費:5,000円程度
- ベニヤ板張り(材料費込み):40,000円程度
- クロス張り(材料費込み):40,000円程度
- 足場代:4,000円程度
- 清掃費、その他:17,000円程度
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