日常生活を送る中で、カラスによるゴミ荒らしや農作物の被害に悩む方は少なくありません。カラスは非常に賢く強い警戒心を持っているため、対策には工夫が必要です。
この記事ではカラスの生態や効果的な撃退方法、駆除を行う際の注意点について詳しく解説します。
日本には主に2種類のカラスが生息している
渡り鳥として飛来する種も合わせると、日本では5種類のカラスが生息しています。日本で繁殖を行い、日常的によく見かけるのはそのうち「ハシブトガラス」と「ハシボソガラス」の2種類です。
都市部に多いのがハシブトガラス、農村や河川敷に多く見られるのがハシボソガラスで、よく似た見た目をしています。しかし、大きさやくちばしの形状、歩き方、鳴き声などで見分けることが可能です。
基本的にカラスは臆病な性格です。しかし、都会に住むカラスは人間の食べ物を奪うなど、大胆な行動をとることもあります。
【ハシブトガラス・ハシボソガラス 特徴】
種類 | ハシブトガラス | ハシボソガラス |
主な生息場所 | 都市部 | 農耕地や河川敷 |
体長 | 約56cm | 約50cm ハシブトガラスより一回り小さい |
体重 | 500g~900g程度 | 400g~700g程度 |
くちばしの形状 | 黒く、太めで湾曲している | 黒で比較的細く、まっすぐ |
食性 | 雑食肉類や脂っぽいものを好む | 雑食果実や稲など植物質のものを好む |
歩き方 | 飛び跳ねるように移動する | 足を交互に出して歩く |
鳴き声 | カァ、カァ 威嚇時はガァガァと鳴くこともある | ガァ、ガァ |
その他 | 都市部でゴミを荒らすことがある 活動は主に樹上 | カラスの中でも特に学習能力が高い 地面に降りての行動が多い傾向がある |
カラスの生態
カラスは非常に賢く、カラス除けの対策をしても効果がないケースも多く見られます。効率よく駆除するためには、カラスの生態や習性を正しく理解することが必要です。
学習能力と記憶力が高い
カラスは鳥類の中では重くて大きい脳を持ち、高い知能を有します。7歳児相当の知能を持つという研究結果もあり、「賢いゆえに単純な駆除対策は効果がない」ともいえるでしょう。
特に学習能力に優れているハシボソガラスは、クルミを車にひかせて殻を割る「自動車利用行動」でも知られています。
カラスにはエサをさまざまな場所に隠しておき、後で食べる「貯食」という習性もあります。どこに何を隠しているかをしっかりと覚えていることからも、記憶力にも優れていることがうかがえるでしょう。
視力と色彩能力が高い
カラスは、優れた視力と色彩能力の持ち主です。カラスの網膜にある視細胞の密度や全体の神経節細胞の数は、人間をはるかに上回るとされます。
人間よりも格段に視力が良いため、遠く離れた食べ物や対象物を鮮明に視認することが可能です。また、人間は、赤・青・緑の3原色で色を認識しています。これに対し、カラスは人間には見えない紫外線領域の光も認識し、4原色で世界を見ているのです。
実際に人間には7色に見える虹が、カラスには14色以上に見えている可能性があることがわかっています。こうしたことから、遠くにあるゴミ袋やその中身を正確に見分けることが可能です。
警戒心が強い
都市部のカラスは人を怖がらないケースもあるものの、基本的にカラスは臆病で警戒心が強い鳥です。そのため天敵であるフクロウやタカなどの鳴き声のする場所には、自ら近付きません。また音に敏感で、大きな音が苦手です。
羽に何かが触れるのも嫌がります。屋根や手すりなどのよく止まる場所にテグスやスパイク、接着剤などを設置しておくと、近寄らなくなるでしょう。
春から秋にかけて攻撃性が高まる
カラスの繁殖期は、3月〜7月頃です。この時期のカラスはヒナを守るために攻撃的で、巣に近付く人間を威嚇したり、襲ったりすることがあります。
特にその傾向が顕著なのが5月、6月です。親ガラスの警戒心がかなり強まっているため、巣には近寄らないようにしましょう。どうしても巣の近くを通る必要がある場合は、攻撃対象になる後頭部がカラスに見えないように傘をさすと襲われにくくなります。
なんでも食べる
都会に多いハシブトガラスは、肉類・揚げ物・卵など人間の食べ物を好む傾向があります。一方のハシボソガラスは、野菜や果物といった農作物や昆虫などを主に食します。
好みの傾向はあるもののいずれのカラスも雑食性で、「なんでも食べる」といっていいでしょう。ただし、鳥類に対して毒性を示すアボカドやチョコレートをカラスが食すと、死にいたる可能性があります。
下表では、カラスが好んで食べるものをまとめました。
カテゴリー | 具体的な食べ物 |
動物性 | 肉類(ネズミなどの小動物、動物の死骸、鳥の卵、昆虫、揚げ物を含む)、魚類、貝類など |
植物性 | 果物(柿、サクランボ、ブドウなど)、種子、穀物、野菜 |
その他 | 残飯などの生ごみ、お菓子など |
強い光が苦手
カラスは視力や色彩感覚に優れている分、強い光が苦手です。夜行性ではなく昼行性であるため、光そのものが苦手というわけではありません。CDのように乱反射するものや鏡の反射光、レーザーポインターの光など、鋭く光るものに対して拒否反応を示します。
カラス被害に悩まされる都市部のごみ置き場や畑、田んぼなどでCDや金銀の輝くテープなどが設置されているのは、このためです。
カラスの撃退対策6選
カラスを撃退するには、習性を踏まえた対策が必要です。ここでは、特に効果的とされる6つの方法をご紹介します。
光や音を使う
強い光や、大きな音を嫌うカラスの習性を利用した撃退法です。以下に、具体的な方法をまとめました。
【光を利用する方法】
反射光を使う対策は比較的簡単に実行でき、高い効果が期待できます。
- CDや防鳥テープを使う:CDや反射板、防鳥テープを、ゴミ置き場や家庭菜園、ベランダなどにつるす
- LEDライトや懐中電灯を使う:マンションなど集合住宅では、置き型のLEDライトや懐中電灯がおすすめ
【音を利用する方法】
大きな音や、カラスなどの鳥類にとって不快な超音波を活用する方法です。
- 超音波発生装置を使用する:カラスだけでなく、他の鳥類や動物にも効果が期待できる
- 天敵の鳴き声を利用する:フクロウやタカといったカラスの天敵の鳴き声を流す
- 爆発音などを発するグッズを活用:果樹園や田園で使用、爆音を発してカラスを脅かす
超音波は人間にも聞こえることがあるため、動くものを検知したときのみ作動する動体検知機能があるものを選ぶといいでしょう。また、有効範囲10m以上、赤外線センサーの検知角度が左右110度以上、上下30度以上のものが効果的です。
「愛農 鳥獣スナイパー」のように超音波・光・音を組み合わせ、複数の方法でカラスを撃退する商品もあります。ソーラー充電式で設置場所を選ばないことに加え、イノシシや野良猫などの被害も軽減できるメリットがあります。
リアルな鳥の置物を置く
カラスの天敵であるフクロウやオオタカ、トンビなどのリアルな置物を設置するのも、カラスの撃退に有効です。カラスは非常に視力が良いため、遠くからでもダミーの姿を確認でき、危険と判断して近寄りません。
よりリアルな首振りタイプもあり、ムクドリやハト、スズメなどほかの鳥にも効果的です。ただし、ずっと同じ場所に置いていると偽物であると見破られることもあるため、できるだけこまめに位置を変えましょう。
また、本物そっくりのカラスの偽物をさかさまにして吊るすと、「死体が吊るされている」と認識し恐怖心で接近を避けるようになります。
テグスやワイヤーなどで止まりにくくする
カラスには、羽にものが触れることを嫌がる習性があります。ベランダの手すりなど止まってほしくない場所に、テグスやワイヤー、接着剤などを設置するのも効果的です。エアコンの室外機などには、スパイクや接着剤がいいでしょう。
比較的コストがかからず設置も楽ですが、効果の範囲が限られるのがデメリットです。ダミーの置物やCDなどの光を反射する方法など、他の撃退法と併用するといいかもしれません。
防鳥ネットを設置する
防鳥ネットは、ベランダに置いたものや農作物の被害に困っている方におすすめの手段です。細かい網目のネットを使うとくちばしが入らないため、ゴミや農作物を荒らされることがなくなります。
ゴミ置き場で使用するのであれば、防鳥ネットを隙間なくかぶせましょう。紫外線カット機能付きのものを選ぶと、カラスにゴミが見えにくくなるためより効果的です。
持ち家の場合はしっかり固定できるよう、支柱や壁にネットを結びつけて使用します。マンションなど賃貸住宅の場合は、結束バンドや両面テープを使って固定するといいでしょう。
ネットでは対処が難しい場合、耐久性が高く、長期間使用できる折りたたみ式ゴミステーションを利用するのもおすすめです。設置の手間が少なく、より確実にカラスによるゴミの食い荒らしを防ぎます。
害鳥駆除用のエアガンを使う
害鳥駆除用のエアガンを使ってカラスを撃退する方法は、特に田畑での農作物被害に悩む方におすすめです。ただし、鳥獣保護管理法により殺傷が禁じられているため、カラスを狙って撃つことはできません。カラスの周囲に向けて撃ち、追い払うのが正しい使用方法です。
カラスは非常に賢いため、エアガンが「危険でない」と認識してしまうと効果はなくなります。効果持続のためには、花火や爆竹など大きな音を発するものを組み合わせるといいでしょう。
参考:e-GOV|鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律
エサ場をなくす
カラスが家・畑・ゴミ置き場などの近くにやってくるのは、食べ物や水があると認識しているためです。生ごみやプラスチックゴミは袋に入れたまま置くのではなく、蓋つきのゴミ箱で保管しましょう。また、家庭菜園や田畑の場合は、防鳥ネットやテグス、ワイヤーを使用して、侵入できない環境を整えることが必要です。
カラスは、ネズミ・イタチ・ハクビシンなどを捕食することもあります。こういった害獣が屋根裏などに住みついていると、カラスを呼び寄せることにもなりかねません。
自力での作業はかなり骨が折れることに加え、健康被害のリスクもあります。専門の業者に依頼して、撃退後の清掃・消毒・除菌なども対応してもらうのがおすすめです。
カラスの駆除対策をするときの注意点
カラスを駆除する際には、いくつかの注意点があります。無許可で駆除すると法律違反となる場合があるため、しっかりと確認してから行動することが大切です。
捕獲や殺傷は鳥獣保護管理法で禁止されている
カラスはほかの鳥類と同じく、鳥獣保護管理法によって保護されており、無許可で捕獲や殺傷することは許されていません。また、巣立ち前の巣の撤去も同様です。
許可なくカラスを含む野生の鳥獣を捕獲や殺した場合違反となり、1年以下の懲役又は1000,000円以下の罰金に処せられます。
ただし、すでにヒナが巣立った後の使用されていない巣の撤去は鳥獣保護管理法違反にはなりません。
参考:e-GOV|鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律
電線や電柱の被害は電力会社に相談する
電線や電柱にカラスが巣作りしている場合は、管轄の電力会社に相談しましょう。巣には木材や針金ハンガーなどが使用されていることもあり、停電や発火の原因となる恐れがあります。
実際にカラスの巣が原因と推察される大規模停電が起こった例もあり、放置は厳禁です。発見し次第、できるだけ速やかに連絡するようにしてください。カササギなど、カラス以外の鳥の巣の場合も同様です。
安全確保のために駆除業者に依頼する
カラスは非常に賢く、自分で対処するのは難しいケースもあります。巣の撤去となると、攻撃される可能性も否定できません。カラスの被害に悩まされているのであれば、プロの駆除業者への依頼を検討してみましょう。
費用はかかりますが、カラスの追い出しから巣撤去後の清掃、その後の侵入対策まですべてに任せられます。専門の駆除業者はプロならではのノウハウや道具を活用することに加え、捕獲の許可を得ているため完全駆除が期待できるでしょう。
業者にカラス駆除を頼む費用相場
専門業者にカラスの駆除を依頼したときの費用相場は、20,000円〜30,000円程度が目安です。しかし、駆除そのものにかかる費用のほかに、出張料・高所作業費用・予防処理料などが別途かかることもあるため、事前に確認しておきましょう。
自治体によっては鳥害対策の一環として、カラス駆除の補助金を出しているケースがあります。巣の撤去費用補助、防鳥ネット購入費用の一部補助など、内容や対象はそれぞれ異なるので一度相談してみるのがおすすめです。
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