マンションの防音対策で、防音リフォームを考えている方もいるでしょう。部屋リフォームや防音室を作ることで、生活音の音漏れや室内の足音による騒音トラブルを防止できます。
本記事では、防音工事の種類とそれぞれの費用相場、自分でできる防音対策の方法を解説します。マンションで防音工事をする際の注意点も紹介しますので、参考にしてください。
マンションで防音リフォームはできるのか?
分譲マンションは管理規約により、リフォームに関するルールが定められています。基本的に、通路や階段、玄関ドアなどの共用部分はリフォームできませんが、各住戸の専有部分は所有者の持ち物であり、リフォーム可能です。
物件によって専有部分と判断される場所は異なり、ベランダに面する窓ガラスや窓枠は一般的に共用部分とされています。しかし、マンションによってはリフォームを認めている場合もあります。防音リフォームをする際は、事前に管理会社や管理組合に確認するようにしましょう。
一方、賃貸物件の場合は基本的にリフォームができず、防音グッズを活用するなどの工夫が必要です。
【目的別】防音工事の種類と費用相場
マンションの防音工事は、どのような音を防ぎたいかで施工内容が変わります。例えば、室内の生活音であればドアや床、壁の防音が、外部からの騒音対策には窓・壁の防音が必要です。
ここでは、防音工事の種類とリフォーム費用の相場をみていきましょう。
生活音の騒音対策
室内の生活音が気になる場合には、ドアや床、壁の防音リフォームを行います。
工事の種類 | 工事内容 | 費用相場 |
ドア | 部屋やリビングのドアを防音仕様に変更する | 23〜35万円 |
床材 | 床材を防音タイプに変更する・床下に遮音材や防音材を敷く | 防音の対象が「軽量衝撃音」か「重量衝撃音」かで施工方法・相場が異なる |
壁 | 壁の内側に防音材を入れる | 12〜15万円 |
まず、隣室の騒音を防ぎたい場合、ドアのリフォームが適切です。部屋やリビングのドアを防音仕様に変更すると、ドア枠や床との間にある隙間が埋まり、気密性が高まります。そのため、他の部屋への騒音を遮断できる仕組みです。
防音ドアのリフォーム費用は23〜35万円が相場で、より高い遮音性能を求める場合には、さらに金額が上がる可能性があります。
マンションの階下に物音が響くのが心配という場合、「床材を防音タイプに変更する」もしくは「床下に遮音材や防音材を敷く」という方法がおすすめです。
床の防音リフォームは、小さな音の「軽量衝撃音」を防止するか、大きな音の「重量衝撃音」を防ぐかで施工方法が異なります。
【6畳あたりの費用相場】
軽量衝撃音 | フローリングなどをカーペットに張り替える:4.5~12万円 防音フローリング・防音カーペットに交換する:6~23万円 |
重量衝撃音 | 床材の下に吸音性に優れている素材を敷く:30万円~80万円 二重床の下に防音材を敷く:30万円~60万円 |
隣室への音の響きが気になる場合は、壁の内側に防音材を入れる方法があります。防音材は主に次の3つで、目的によって選ぶ材質は異なります。
- 吸音材:音を吸い込んで小さくする
- 遮音材:音を跳ね返す
- 防振材:振動を隣の部屋や階下に伝えない
外からの騒音対策
屋外からの騒音対策は、窓の防音が効果的です。窓の防音工事は、主に次の2種類です。
- 内窓を取り付けて二重窓・二重サッシにする
- 防音ガラス(複層ガラス)に取り替える
既存の窓の内側に内窓を取り付けると、気密性が上がります。外窓と内窓の間に空気層ができてクッションの役割を果たし、防音効果が高まるという仕様です。
内窓の設置により断熱効果や省エネ対策も期待でき、住まいが快適な環境になります。
窓ガラスを防音タイプに交換する方法もあります。内窓の設置とともに窓ガラスを防音ガラスに換えれば、より効果が高まるでしょう。
楽器演奏や映画鑑賞などをする
管楽器やピアノなどの楽器演奏は、近隣に大きな音や振動が響きます。トラブルになりやすく、特別な対策が必要です。また、大音量で映画を楽しみたい場合も同様です。
部屋を防音室や防音設計のホームシアターにするか、組み立て式の防音室を設置することで、騒音問題を解決できます。周囲を気にせず、安心して楽器の演奏や映画鑑賞が楽しめるでしょう。
それぞれの費用相場は、次のとおりです。
- 部屋を防音室にする:230~400万円
- 組み立て式の防音室を設置する:50〜250万円
楽器演奏をする場合には、楽器の大きさや音の性質、音量などによって必要となる防音性能や費用が変わります。
自分でできる防音対策
「リフォームするほどではないが防音対策をしたい」「賃貸マンションで防音リフォームができない」という場合、次のように自分でできる防音対策もあります。
- 防音グッズを活用する
- スリッパを履く
- 日頃から生活騒音に気をつける
それぞれ、詳しく解説します。
防音グッズを活用する
自分でできる防音対策に役立つのが、防音グッズです。主に次のような製品があります。
- 防音マット・カーペット
- 隙間テープ
- 遮音カーテン
防音マット・カーペットは、床の防音対策に役立つグッズです。吸音効果と遮音効果があり、床に敷くだけで足音や家具の音などが階下に響くのを防ぎます。いくつも重ねることで、より高い防音効果が期待できます。
隙間テープは、ドアや窓の隙間を埋めて気密性を高め、音漏れを防止するテープです。剥がすとき、跡がつきにくいことが特徴です。防音マットの隙間を塞いで、防音効果を高めることもできます。
遮音カーテンは、窓の防音性を高めるグッズです。近所の話し声やテレビの音など、窓や外壁などを通じて聞こえてくる空気音を遮るとともに、室内からの音漏れを防ぎます。
スリッパを履く
マンションの床や壁の振動によって発生する音は伝わりやすく、足音や家具を動かす音などが隣室や階下に響きます。これらの振動音を防ぐには、常時スリッパを履くことがおすすめです。
スリッパを履くことで、スリッパ自体が足音を吸収し、階下に届く音を軽減させます。歩く時はかかと歩きではなく、足裏全体を踏むような感じで歩くようにすると、足音が響くのを防げます。
日頃から生活騒音に気をつける
生活の中ではさまざまな音が発生するため、近隣に音が響きやすい集合住宅では日頃から生活騒音に気をつけなければなりません。
特に以下の騒音には注意が必要です。
- 家電の使用
- お風呂やトイレの使用
- 話し声
- ドアの開閉
- ペットの鳴き声・足音
家電の使用では、特に掃除機や洗濯機の使用、エアコンの室外機などが響きます。風呂やトイレなどの給排水音も響きやすく、夜間の使用には注意が必要です。
話し声やドアの開閉なども、無意識に大きな騒音になっている可能性があります。
ペットが許可されているマンションでは、ペットの鳴き声や足音が大きくなりやすいため、防音マットを用意するなどの対策を行いましょう。
マンションの防音工事をする際の注意点
マンションの防音でリフォーム工事をする際は、次の点に注意が必要です。
- 事前にマンションの管理規約を確認する
- 防音する目的を確認する
- 補助金制度がある場合は申請する
- 複数の業者で見積もりをする
ここでは、防音工事で注意したいポイントを解説します。
事前にマンションの管理規約を確認する
分譲マンションで専有部分に防音工事を行いたい場合、リフォーム工事に関する管理規約の規定はマンションごとに異なります。必ず事前に確認しましょう。
特に楽器演奏は近隣のトラブルになりやすく、ほとんどのマンションが禁止しています。管理組合の許可を得てリフォーム・リノベーションをした場合にも、音漏れがして苦情が出れば演奏禁止となるでしょう。
ギターなどの弦楽器やサックス・フルートなどの管楽器、ピアノ、ドラムなど、楽器の種類によって音の性質は変わります。それぞれ、防音工事に求められる工事内容は異なるでしょう。リフォーム会社に相談し、適切に防音できるようにリフォームしてください。
防音する目的を確認する
施工前には防音の目的や、どの程度の防音にするのかを確認することも大切です。目的は、近隣への音漏れ防止のほかに、住居内での騒音対策もあげられます。
例えば、テレワークをしている場合は、隣室からの子どもの声やペットの鳴き声、ドアの開閉などの対策も必要になるでしょう。
目的に応じて、必要な施工は異なります。事前にどのような遮音効果を求めるのかをよく考え、最適なリフォームを行いましょう。
補助金制度がある場合は申請する
防音工事には、高額な費用がかかるケースもあります。補助金(助成金)を活用できる場合には、申請して受給するとよいでしょう。
防音工事で補助金が受給できる事例は、次のとおりです。
- 騒音が激しい地域に住んでいる場合
- こどもエコすまい支援事業で防音工事を行う場合
- 住まいのある自治体が防音工事を対象にした補助金制度を設けている場合
騒音が激しい地域とは、「幹線道路沿い」「自衛隊や在日米軍の飛行場周辺地域」「空港周辺」に住んでいる場合です。
こどもエコすまい支援事業の補助金は、断熱改修もしくはエコ住宅設備の設置が必須工事になり、同時に内窓設置などの防音工事を行う場合が対象です。
このほか、防音工事の補助金を支給している場合があるため、各自治体に確認してみましょう。
複数の業者で見積もりをする
防音工事を依頼する際は、複数の業者に見積もりをとることをおすすめします。1社だけの見積もりでは、価格の相場がわからないためです。
相見積もりで業者を決める際、安さだけで決めるのはおすすめできません。相場よりもだいぶ安い金額を提示する業者には、注意が必要です。追加費用が必要になったり、防音性能が低い工事が行われたりする可能性があります。
適切な金額を提示するとともに、施工事例が多く経験豊富な業者を選ぶようにしましょう。
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