水回りの使い勝手が悪くなってきた時に、移動によって生活しやすくしようと考える事もあるでしょう。移動を伴うリノベーションは、特にマンションの場合さまざまな制約が設けられています。そのため、まずは移動が可能かどうか、条件を確認しておきましょう。
移動できる水回りの設備として、主に挙げられるのは「キッチン」「お風呂」「トイレ」「洗面台」です。この4つを移動するための費用相場について知っておくと、リノベーションがスムーズに進みますよ。この記事では移動のポイントとともに費用相場について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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マンションで水回りを移動するための条件
水回りとは、キッチン・トイレ・お風呂場・洗面所など、水を使用するスペースのことです。マンションで水回りを移動するためには、最低限以下の4つのポイントが重要となります。
- 共用配管スペース「PS」の位置
- 排水勾配
- 床下配管の構造
- マンション管理規約
共用配管スペース「PS」の位置
共用配管とは給水管・排水管・ガス配管・電気配線などが含まれます。これらの配管は通常マンションの上階から下階まで縦管で繋がっており、略称「PS」と呼ばれるパイプスペースという空間に収められています。
全ての階の給排水はこの「PS」内の共用配管に繋がっており、各部屋の専有部分の配管はここから分岐して配管されております。したがって「PS」の位置によっては給排水配管の移動が難しいケースもあります。
「PS」はマンションの中で共有部分にあたり、移動はできません。移動できるのは専有部分である自分の室内の配管のみです。無理に給排水管を繋げようとすると、排水の勾配が取れずに、排水管の詰まりや悪臭、場合によってはオーバーフローによる階下への水漏れを起こしたり、適切な経路で配管出来てない事で、給排水時の大きな音漏れ等、近隣の部屋に迷惑をかけてしまう事も考えられるため、水回りの移動の際には、「PS」の位置に注意して計画しましょう。
排水勾配
排水には勾配が必要です。排水管の種類や配管の大きさにより異なりますが、汚水配管や雑排水管は一般的には1mにつき2cm以上の勾配が必要であり、これよりも緩い勾配だと排水が流れにくくなってしまいます。排水が流れなくなると、汚れがこびりついて、排水管の詰まりや悪臭を引き起こしたり、場合によってはオーバーフローを起こし、階下へ水漏れする可能性もあります。
これは「PS」との距離にも関係しており、離れすぎると十分な勾配を確保できなくなり、適切な排水ができなくなります。例えばキッチンを移動する場合、「PS」とキッチン間の距離が2倍になると、キッチンから「PS」までの傾斜も2倍作らなければなりません。勾配の高低差が4cmだったら、距離を2m取らなければならないのです。
「PS」に無理に繋ごうとすると、多くの場合傾斜は緩くなってしまいます。これによって排水しにくくなり、排水管の詰まりなどが引き起こされるのです。
床下配管の構造
マンションで水回りを移動するためには、床下の配管構造も重要なポイントです。
床下の配管構造としては、主に2種類のタイプがあります。
【床スラブ上配管】
床スラブ上配管の場合は、排水管が構造躯体コンクリートである床スラブの上を通ってPS内の共有排水管に繋がっています。排水管がスラブと床の間を通っているため、床を剥がせば交換可能です。現在のマンションのほとんどは、床スラブ上配管構造を取り入れています。
【床スラブ下配管】
一方、床スラブ下配管の場合は、排水管が共有部分である構造躯体コンクリート(床スラブ)を貫通しているため、個人の希望だけでは交換ができません。床スラブ下配管では、排水管は下の階の天井裏を通ってPS内の共有排水管に繋がっています。1970年代ごろのマンションでは、床スラブ下配管を採用している場合があります。この場合、下階の天井裏から交換作業を行う必要があるなど、基本的には配管の位置変更は難しく、リフォームでの制約が多いです。
マンション管理規約
システムキッチンやシステムバスなどの設備機器、室内に取り込んでいる給排水管は個人の所有物である「専有部分」です。しかし、「PS」のような給排水を取り込む大もとになる部分は「共有部分」となります。
水回りを移動する時も、専有部分を撤去したり交換したりする事はできますが、共有部分に手を加える事はできません。
水回りに手を加える事自体に、厳しい制約を設けているマンションもあるため、リノベーションする前には必ず管理規約の内容を確認し、許可を得ておきましょう。
ケース別費用相場と難易度
水回りのリノベーションは、既存の位置のままで新しい設備に変更するリフォームと比較して、費用が高くなる傾向にあります。場合によって難易度も異なるため、あらかじめ確認しておくと安心して施工を依頼できるでしょう。
場所別に一般的な費用相場と、リノベーションの際の難易度について解説します。
【移動工事費用相場】
項目 | 費用相場(円) |
キッチン | 約500,000円〜1,000,000円 |
お風呂 | 約300,000円〜800,000円 |
トイレ・洗面台 | 約150,000円〜400,000円 |
浴室 | 約300,000円〜800,000円 |
キッチンの移動
キッチンの移動には、 電気・ガス・排気ダクトの工事が必要になり、工事費のみで約50万円~70万円が相場になります。キッチン本体の入れ替えも同時にする場合は、低価格帯の商品を選んでも100万円以上になることが多いです。
移動距離に比例して費用は高くなり、階をまたぐ場合はさらに高額になる傾向にあります。
既存のキッチンの移動であれば、約30万円~70万円が費用相場です。従来の壁付きキッチン(I型キッチン)を対面型キッチンに移動する場合は、約150万円~250万円を相場と見ておきましょう。
また、壁付きキッチン(I型キッチン)をアイランド型キッチンに移動する場合はさらに費用が高くなり、約200万円~300万円かかります。
1階から2階へ移動する時には、約100万円~約250万円かかると考えておきましょう。ケースによっては、250万円以上かかる事もあります。
「壁向きに配置されているキッチンを、対面にしたい」などの向きの変更は、それほど難しくはありません。対面キッチンなら腰壁に排水溝を通すことができ、移動も最小限で済むため、比較的容易な工事となります。
またアイランドキッチンの場合は、配水管を通す壁がないため、床下に排水勾配を確保しなければなりません。キッチンの床の高さを上げる必要も出てくるため、段差ができる可能性があります。フラットな床を希望する場合は、キッチンと壁を繋げた配置にするのがおすすめです。
お風呂の移動
お風呂の移動は工事費だけでもかなり高額になり、既存の浴室を移動する場合でも約70万円〜110万円程度が相場となります。ユニットバスなどの設備ごと入れ替える場合は、約120万円~250万円が相場です。また、ユニットバス本体は約45万円のものから約130万円のものまでグレードが幅広いため、移動以外にも費用が必要になります。
ユニットバスの入れ替えのみと比較して、移動をする場合は約2倍程度の費用がかかるケースが多いと見ておきましょう。
加えて、在来工法の場合や配管の勾配が足りない場合などは、費用がさらに高くなる傾向にあります。
浴室の移動は住居の他の部分への影響も大きく、大幅な間取り変更が必要になるため、大規模な工事になる可能性が高いです。よって難易度が高いリノベーションとなるでしょう。
低コストでの位置変更を希望なら、既存の位置で浴槽の入れ替えや向きの変更がおすすめです。 十分にコストがかけられる場合は、浴室自体の移動も含め位置変更の検討をしましょう。
トイレ・洗面台の移動
トイレの移動は、水道・電気工事と本体価格も含め約30万円〜60万円が相場になります。移動に加えて棚や手洗い場の設置もする場合は、プラス約15万円〜25万円かかってきます。手洗い場は約4万円~25万円で取り付けられ、床の内装のリフォームには約2万円~8万円かかるでしょう。
一般的にトイレの近くに汚水用配管のスペースがあるため、トイレの位置を変更することはあまり推奨できません。移動する事で詰まりが起きるなど、それなりのリスクも生じます。
トイレが狭くて使いにくい場合、便器の向き・建具や壁の位置を変更して、上手にスペースを確保するとよいでしょう。何らかの理由でどうしても移動が必要な場合は、なるべく移動距離が短い位置に移動する事をおすすめします。
また、洗面台の移動もトイレ同様、水道・電気の工事が必要になり、費用相場は約20万円〜40万円です。移動によって解体や修復工事も行うため、その分費用は高くなります。また間取りの変更がある場合は、ドアや壁の撤去作業も必要になり、さらに費用はかかると言えるでしょう。
洗面所の移動は比較的自由度が高いため、工事の難易度も低くなります。脱衣所に洗面台があり、洗濯機が設置されていることが一般的です。間取りの関係上、洗面所のスペースが狭いと感じている場合、思い切って洗面所を独立させてしまうのも、選択肢として視野に入れましょう。玄関ホールや寝室に設置している事例もあります。
洗面所の移動もキッチンと同様に、排水勾配を確保するため床の高さを上げる必要があるケースがあるので、注意が必要です。
戸建てで水回りを移動する費用相場
マンションと戸建てでは、大きく費用相場が変わる場所とあまり変化がない場所がはっきりと分かれます。
- キッチンの移動
- お風呂の移動
- トイレの移動
- 洗面台の移動
【移動工事費用相場】
項目 | 費用相場(円) |
キッチン | 約400,000円〜2,100,000円 |
お風呂 | 約1,000,000円以上 |
トイレ | 約300,000円〜600,000円 |
洗面台 | 約200,000円~350,000円 |
キッチンの移動
戸建のキッチン移動費用相場は、マンションよりも高額になる場合がほとんどです。戸建てではキッチンを新しいものに買い替えて移動すると、約40万円~210万円かかります。
キッチン本体は約50万円~100万円で購入できますが、施工費用がかかり大規模な工事となるため費用相場が高くなるのです。
お風呂の移動
戸建てのお風呂の移動費用相場も、マンションよりも高額になります。戸建てではお風呂場を移動するだけでも100万円以上の費用がかかります。またユニットバスなどの設備も入替の場合は、200万円以上かかる事も珍しくありません。
トイレの移動
戸建てのトイレの移動費用相場は、約30万円~60万円です。ただし、洋式から和式に交換する場合は70万円を超える事もあります。
トイレを新しいものに交換する際も、タンクレストイレは約10万円~20万円、手洗い付きトイレは約10万円~15万円とかかる費用が異なるため吟味が必要です。
洗面台の移動
戸建ての洗面台の移動費用相場は、1階へ動かす場合は約20万円~30万円、2階へ動かす場合は約25万円~35万円です。
洗面台のサイズによりますが、本体価格は600mmサイズであれば約5万円~10万円、750mmサイズであれば約7万円~15万円が費用相場だと言えます。
水回りを移動させる際の注意点
水回りの移動を伴うリフォームをする際は、、次の4つに注意するようにしましょう。
- 家事動線などリノベーションの目的を明確にする
- 移動が可能かを確認する
- 水道や電気の工事も必要になる
- 設備のサイズや移動後の間取りをよく確認する
1.家事動線などリノベーションの目的を明確にする
リノベーションを行う時は、まず目的を明確にする事が重要です。目的の明確化によって、具体的なイメージが湧きやすくなり、理想の住まいに近づけられます。
理想の住まいや将来の暮らしについて、家族で話し合うのも絆を深めるためにはよい機会です。家族全員の意見を取り入れることで、より暮らしやすい自宅にする事ができます。リノベーションの目的を明確にする事は、現状の修復だけでなく、将来の暮らしに付加価値をつける事にも繋がるのです。
2.移動が可能かを確認する
水回りを移動させるリノベーションを検討する時は、移動の可否を確認する必要があります。一戸建て住宅であれば、配管の移動もしやすいため、希望通りの間取りに移動できる可能性が高いです。
マンションなどの集合住宅では、リノベーションを行う際は、管理規約の確認を忘れずに行いましょう。マンションの本人所有場所は、専有部分のみであるため、リノベーションできる部分も専有部分のみが対象となります。
ただし 専有部分であっても規約によっては工事を行えない場合もあります。まずはマンションの管理組合に事前確認を行いましょう。
3.水道だけでなく電気・ガス工事も必要になる
水回りの移動をする際は、給排水管の工事も同時にしなければなりません。特に排水管は、水の詰まりや漏れを防ぐため勾配をつけなければならず、そのため床下にはある程度の高さが必要になります。
また、水回り設備は水道だけでなく、電気も必要です。またキッチンではガスも使用しているため、お風呂・キッチン・洗面台などのリフォームには電気・ガス工事も必須です。
4.設備のサイズや移動後の間取りをよく確認する
水回りの移動では、移動先のスペースに適したサイズの設備を選ぶ事が大切です。カタログで写真や大きさを見ても、正確にサイズ感を捉えるのは中々難しいでしょう。そのため必ずショールームで実物を確認するようにしてください。
また、設備を移動した後の空間もイメージしながら、間取りや配置場所を決めることもポイントです。「家具を配置したら、思ったより狭くなってしまった」などということがないように、施工前の打ち合わせでしっかり確認しておく必要があります。
水回りの移動は専門業者に任せよう
水回りの移動で重要なのは、いかに信頼できる優良業者に依頼するかという事です。大掛かりな工事となる事が大半ですから、しっかりと相談に乗ってくれる業者を選ぶようにしましょう。
業者選びに役立つ方法のひとつとして、相見積りをとるという事が挙げられます。相見積りとは、一度に複数の業者から見積りをとる方法です。1社ずつ見積りを取り寄せるのは手間も時間もかかりますが、費用面だけでなく、アフターフォローや施工後のメンテナンス、保証などについても一括で比較できるため、非常に便利だと言えるでしょう。ぜひ相見積もりを活用してください。
ゼヒトモで水回りのリノベーションのプロを探す
毎日使用するキッチン・お風呂・トイレなどの水回りは、使用しづらい場所にあると不便を感じてしまいます。このような場合は、水回り自体を移動させることがおすすめです。ただ水回りの移動を依頼するリフォーム業者をどのように選べばいいか分からない方も多いでしょう。
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監修プロのコメント
新築や建て替えより費用を抑えることができるリノベーション。その中でも重要なポイントのひとつとなるのが水まわりです。
お風呂やキッチンなどの設備機器を、
- 機能性
- 清掃性
- デザイン性
などの良い、最新の機器に取り替えるだけではなく、
- 給水
- 給湯
- 排水
などのライフラインの更新を合わせて行うことで、住まいの寿命を長くすることができ、資産価値の向上にも繋がります。
また、水まわりの移動をする際、他の部屋のレイアウトなども考慮して、使い勝手や動線効率の良い配置にすることも重要です。
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