文部科学省が2015年12月24日付で公開した、2014年度版「子供の学習費調査」の「家庭教師費等の金額分布」をみると、公立小学校の生徒の家庭の29.7%が年間平均54,000円、公立中学校の生徒の家庭の26.8%が年間平均80,000円を家庭教師費として使っているというデータがあります。
かつて昭和の時代には、家庭教師というと、ガリ勉か金持ちの家の子供が頼むものというイメージがあったかもしれません。いまでは家庭教師サービスは世間に当たり前に普及しているようです。
さて、ここで迷うのは家庭教師の選び方です。けっして安くはない家庭教師費ですから、どうせやるならいい先生に出会いたいし、やはり子供の成績を上げてもらいたいものです。
私の本業は、フリーランスの家庭教師です。この記事では、サービスを提供する側の私だからこそ書ける業界の裏側の話や、家庭教師選びのポイントを紹介していきたいと思います。
1.家庭教師とは
学校の勉強がわからなくてこまったときに、塾の教室ではなく、教師が自宅まで来てマンツーマンで教えてもらえるのが家庭教師のサービスです。家庭教師の業者は、全国規模で展開する大手からフリーランスまでさまざまな形があります。
家庭教師の人物像もさまざまで、すぐに思い浮かぶのは学生さんのアルバイトというイメージではないでしょうか。しかし、なかにはサラリーマンや自営業をしていてWワークの状態の人もいますし、私のような専業の者もいます。
値段の相場もピンからキリまであります。一般に、新人の先生の月謝は安く、経験・実績のある先生は高くなります。また、大手の会社は登録している教師に委託業務として仕事を振って派遣するシステムですので、仲介手数料やマネジメントの人件費がかかり、高くなる傾向があります。
たしかに高い金額をかけたほうが実績もありますしブランド力もあり安心ではありますが、家庭教師は人対人のサービスであり相性の問題もありますので、必ずしも高ければいいと言い切れないところもあります。家庭教師を選ぶポイントについては後述しますが、やはり子供が前向きに頑張れる先生と出会えるかどうかが、重要なポイントになります。
2.家庭教師を使うメリット
自分のペースで勉強できる
家庭教師を使う最大のメリットはこれです。マンツーマンでわかるまでとことん先生がつきあってくれます。
私の生徒さんの中に、ものすごくやる気のある生徒さんがいました。自分が納得のいかない問題はとことん追求します。教室の授業でわからなかった部分は職員室に行って徹底して学校の先生に食い下がります。しかし、この粘り強さはこの生徒さんの長所ではあるのですが、あまりにしつこいために、しばしば先生に怒られるそうです。
いっぽうで家庭教師の私は、この生徒さんに対してたった1つの問題に30分でも1時間でもつきあいました。これは私が人間ができていて立派な大人であったという話ではなく、マンツーマンの立場上、私に逃げ場がなかったというだけの話なのですが、それでもこの生徒さんは学年トップクラスの成績で高校を卒業していきました。
学習塾や予備校は教室で友達と一緒に勉強しますので、競争心をあおられて成績が向上します。しかしながら、講師の先生も立場上、1人の生徒さんにわかるまでとことん付き合えるかというと、時間の限界があります。自分のペースで納得いくまでやりたいという性格の生徒さんには、家庭教師が合っています。
親子喧嘩が減る
家庭教師を利用する親御さんが一様に言われるのがこれです。血のつながった相手に対してなので余計に「こんな簡単なものがどうしてわからないんだ」と感情的に当たってしまい、しまいには喧嘩になってしまう。
怒るほうも怒られるほうも気分が悪いし、結果として学校の成績は悪いままです。
家庭教師の立場としてはお金をいただいて仕事をしているわけですから、理性を保って粛々と指導ができます。親に反抗的な生徒であっても、第三者の家庭教師なら聞く耳を持つというわけです。
人間関係で生理的に受け付けないという場合は、たとえ身内であったとしても、高い可能性で喧嘩に発展します。アウトソーシングで良好な親子関係が築けるのであれば、利用する価値はあるでしょう。
夜でも安心
夜遅い時間に塾に通うとなると、事件や事故に巻き込まれる可能性もゼロではありません。そこで、車で教室まで送迎するとなれば親御さんの負担も増えます。家庭教師ならば自宅に来てくれますから、安心です。
家庭教師の料金のなかには、授業料のほかに交通費という内訳があります。業者にもよりますが1キロ20円ほどで計算して、往復のガソリン代を支払います。
女の子の場合は特にそうですが、夜道を歩く危険を回避したいというのであれば家庭教師が有効な手段の一つになります。
3.家庭教師の使い方
部活や習い事がある子供には
部活や習い事が休みの日や終わった後の平日の夜に利用する家庭が多いです。土日は練習試合や発表会の予定が入るようです。
とくに平日18時~21時は人気の時間帯ですので、業者に確認を取る必要があります。
週に何日くらい来てもらったほうがいいの?
予算と生徒さんのスケジュールで決めます。
予算は週1回90分(月4回)でフリーランスの家庭教師を雇うとして、2万円(交通費込)が相場です。ちなみに大手の業者になりますと仲介手数料やマネジメント費用がかかり、さらに高くなる可能性があります。
週1回のペースの家庭が多いですが、試験前だけ回数を増やしたり、逆に部活が忙しいので月2回に減らしたりという対応は可能です。
全ての教科を教えてもらったほうがいいの?絞ったほうがいいの?
絞ったほうがいいです。
家庭教師の先生にも指導可能科目がありますので、万能ではありません。国数英のほかに小論文までこなすようなオールマイティの家庭教師がまれに存在しますが、数は多くないと思います。
塾や予備校などであればスタッフルームに行って教科専門の先生に聞きに行くということができますが、家庭教師は1人ですから対応できる科目には制限があります。
教えてもらう教科は絞り込む必要があるでしょう。
4.家庭教師を選ぶポイント、選び方6つ
子供との相性
家庭教師を選ぶうえで最も大切なのはこれです。
ほめられて伸びるタイプなのか、厳しく教えられたほうがやる気が出るタイプなのか、子供の性格に合った先生選びが勝負を左右します。
月謝の値段だけではなく、どういう教育方針なのか、またそもそもどういう性格の先生なのか、契約前の相談の段階で人間性を見極める必要があります。
勉強ができることと教え方のうまさは別
学生時代に勉強を理解するのに苦労した先生であればあるほど、教え方がうまいです。
自分が学生のときに知識を噛み砕いて簡単な状態で取り込む必要があったため、おのずと教えるときも噛み砕いた状態で教えてくれます。話をして失敗談の多い先生は、一見して鈍臭いですが、教え方がうまくて面白い先生である可能性があります。
性別はどちらがいいのか
生徒さんとの相性がいいのであれば性別は関係ありません。しかし、同性の先生を希望する生徒さんが多いという傾向はあります。
大手の業者であれば登録している複数の先生の中から派遣してくれますので、性別の希望があるのであれば契約の段階で伝えたほうが良いでしょう。
値段と値段の相場について
大手の業者は値段が高くなると書きましたが、大手だからこそ提供可能なサービスのメリットもあります。
最大のメリットの一つが教師のチェンジが可能だということです。先生と生徒の相性が悪いと思ったら、何度でも交替してもらうことが可能なのは、大手ならではのサービスです。仲介手数料とマネジメント費のために多少月謝が高くなったとしても、本当に相性のいい先生に出会うための必要経費だととらえれば、お金を出す価値はあるかもしれません。
さらに大手のブランド力による安心感、きめの細かいサポート体制も家庭教師を選択する判断基準になり得ます。
実際に利用した人に聞く
塾や予備校であれば利用者も多く口コミやネットの評判などで情報を集めることができますが、家庭教師の情報は集めづらいです。たとえ大手の業者であっても登録教師によって力量や方針のばらつきがあり、同じ業者に依頼したとしても同じ先生が派遣されてくるとは限らないからです。
最も信用できる情報は、実際に利用した人の意見です。いい先生がいるという情報をつかんだ時には、会社の看板だけではなく教師の名前まで確認して指名することが理想です。
ギリギリで駆け込まない
受験直前になって、お金は出しますから何とかしてくださいという家庭も実際にいらっしゃいますが、業者としては対応に困ってしまいます。
受験生からの依頼は部活が落ち着いたあとの7月くらいから増え始めます。人気の先生は夏休み前にはスケジュールが埋まってしまいますので、いい先生に出会うためには早い時期に申し込んだほうが有利です。時間をかけて業者を吟味することも大切ですが、受験生に関しては、早めに相性のいい先生に出会うことが合格の決め手になります。
また、当たり前のことですが、いくら教師の腕が良くとも生徒さん自身が努力しなければ不合格になります。家庭教師が付いていてもいなくても、受験対策は早めにスタートするように心がけましょう。
最後に
サービスを提供する側からの経験や視点も交えながら、家庭教師の選び方のポイントを見てきました。
教育サービスの中には個別教室や集団塾など様々な形態がありますが、その中でも家庭教師を利用される生徒さんは周りにペースを合わせるのは得意ではないけれども、腰を据えてじっくりやれば結果を出せるという性格の持ち主が多い傾向があります。
月謝もピンからキリまでありますが、なぜ高いのかを理解したうえで利用するのであれば、投資するだけのメリットを得ることもできるということもわかっていただけたのではないでしょうか。
これらのポイントを踏まえて最適な家庭教師を選択して、お子様が成績の向上と志望校の合格をされることを願っております。
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